第66話 仕返しされる
お待たせ致しましたー
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破られた。
それだけではなく、不可解な事態が起きたのだ。あの玉蘭の孫を嬲り殺そうと術を展開したところに。九十九を使ってか、その玉蘭が邪魔をしてきた。
実体ではなく、霊体。何処からこちらの様子を探っているのだろうか。忌々しい女だ。紅狼を手助けしたあの時から、紅狼は皇帝陛下の剣だと約束されたのだ。藹然が常々忌々しいと思っていた紅狼に情けをかけた、女なのに宮廷料理人の地位にいた玉蘭。
藹然の周囲はほとんど出世を叶えられたかった存在ばかりなのに、玉蘭は、紅狼は、それを最も容易く叶えることが出来ていた。
嫉ましく、壊してやりたいと思った。その機会を得るのに位の低い術士風情を装っていたのだが、もう我慢ならなかった。
玉蘭の孫もだが、玉蘭自身も邪魔立てをするのならもう容赦はしない。
もう一度、式を展開させて術を城全体にかけ直そうとしたら。
『見つけた!!』
男の声と同時に、頭に何か柔らかいものが当たったとわかると。そこから煙が立ち始め、藹然の頭から異臭と激痛が起こった。
「あ゛ぁあああ゛!?」
強烈な痛みと鼻を塞ぎたいほどの異臭。
何がおきているのかわからなかった。藹然の身に何が起きたのか。何かを投げつけられたことで、藹然は攻撃と同じくらいの痛みなどを受けている。
あまりの激痛に印を解き、床に倒れて悶えていると入り口からズカズカと複数の存在らが入って来たようだ。退けようにも痛みが酷過ぎて対処が追いつかない。
そして、先程の男と違う声が上から降ってきた。
「お前は……藹然?」
「こ……ろ」
憎き存在である隻眼の武官。
術を展開させていたのが藹然だと今知ったのか、唖然とした表情で藹然を見下ろしていたのだった。そして、傍らには成人したての少女とその九十九がいたと言うことは。
この少女が、先程九十九に命じて何かを藹然に投げて仕打ちをしてきたのか。よく見ると、先程術を展開しかけた時に殺そうとした玉蘭の孫娘。
玉蘭に守られて術を破った程度だと思っていたが、やはり孫娘と言うことで何かしらの異能を持っているのだろう。
ここで朽ちるのであれば、いっそ紅狼ごと滅するまで。
その答えに行き着いた藹然は、痛みに耐えながら印を組みなおして、己の九十九を媒介に術を行使させた。
現れたのは、冥府の牛の頭を持つ屍人。それを相手に生きていられまいと、紅狼が玉蘭の孫娘を庇う様子を見て、痛みに耐えながらもほくそ笑んだ。
「……こ、ろ……せ」
命じたが最後、紅狼ごと死ぬだろうと思ったのだが。
紅狼は呪眼を展開させ、剣を使って結界を張り出した。その呪眼を施したのは藹然であるのに、逆に利用するとはどこまでもしぶとい男だと苛立ちがさらに募る。
次回は18時〜




