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第61話 後悔が

お待たせ致しましたー





 *・*・*








 紅狼(こうろう)は、己の九十九(つくも)雷綺(らいき)と迫ってきている黒い靄を対処しようとしていた。


 皇帝の斗亜(とあ)が、九十九の焔華(えんげ)の羽をばら撒くことで何かを引きずり出そうという魂胆なのはわかったが。その直後に、後宮や城のあちこちに黒い靄が生じて人間に触れると九十九ごと破裂して死に至る厄介極まりない事態が起きた。


 紅狼は武官として、文官らに決して触れるな、逃げろなどと声がけをしてから斗亜を探すのに急いだ。斗亜に何かがあってはいけない。彼の弟妹などはいなくないが、彼以上の皇帝にふさわしい器量の存在はいないのだ。


 唐亜(とうあ)国を統べ、他国の進軍を抑え切れるのは彼しかいない。呪いだらけの紅狼の替えなど、人材が育てれば有り余るほどいるけれど……皇帝の存在はそうもいかない。


 後宮に行くと今朝言っていたから、愛妃である緑玲(りょくれい)のところに行って、守っているかもしれないが。靄が邪魔で進路が絶たれて、うまく進めない。


 雷綺と術で試したりはしたが、うまくいかないとわかったのならと、紅狼は己の呪眼を使うことにした。命を削ることになっても、この場を乗り切るためには躊躇う暇はないと決意して。


 眼帯を外して、赤い瞳に力を注いだ。



【剥がれよ】



 言霊を乗せ、雷綺にも力をまとわせて靄に風撃を飛ばせば……一時的だが、靄が晴れた。その隙を狙い、紅狼らは後宮の中へと進んでいく。廊下は無惨な光景になっていたが、斗亜の姿はなかった。


 それに安心はしたが、ひとつ思い出すことがあった。自分が連れてきた少女、恋花(れんか)のことだ。彼女には今の九十九が居ても、対処は出来ているだろうか。無事でいるだろうか、と今更心配の情が湧いて出てくると同時に。


 斗亜の事以上に、恋花への思慕の情がこれまで以上に湧き上がってきた。死んでほしくない、自分よりも、下手をすれば斗亜よりも。


 その一瞬の気の緩みが術に影響を出してしまったのか、霧散させた靄が眼前まで迫ってきていたのに気づくのが遅れてしまった。



『紅狼!?』



 間に合わない。


 このような場で死を迎えてしまうのか。


 呪を解き、斗亜の横で剣として生きていく道を途絶えることよりも。あの儚い笑顔をする少女の横に、己でない誰かが立つのが酷く悔しいと思った。まだ出会って日の浅い付き合いだけだが、初めて口にした麺麭(ぱん)を美味いと言った時のあの反応から。


 既に、気にかけていただけではなかったのだろう。玉蘭(ぎょくらん)の封印を解く鍵でしかないと思った自分の愚かさを恥じた。


 せめて、今朝方の時に伝えておけば……と酷く後悔して目を閉じたが。


 終わりは来なかった。



「紅狼様ぁ!!」



 代わりに起きたのは、風と一緒に愛しい少女の力強い声が聞こえてきた。


 ゆっくり目を開ければ、少し離れたところに(りょう)とこちらに駆け寄って来てくれる恋花の姿がはっきりと見えた。


 彼女は紅狼の前に来ると、感極まったのか大泣きしながら胸にしがみついてきたのだった。



「……恋花?」

「よかった……よかった、ですぅ」

「……な、ぜ」

「私……の麺麭、が。靄に効くとわかったので」

『適当に投げるぞ』



 と、梁がそう言って奥からやってくる靄に麺麭らしいものを投げれば、滑稽に見えたが本当に消えたのだ。



「……君の麺麭は、宝具か何かか?」

「わ、かりません……。ですが、お役に立てそうです」

「充分過ぎる。ひとまず、あちこち投げながら斗亜(とあ)を探そう」



 靄に紛れていた九十九の羽は既に消えている。効力は一時的なものしかなかったようだが、恋花の麺麭の方がそれを上回っていた。消えた靄は再び生じたりしない。ならば、と梁に麺麭を投げてもらいながら恋花も一緒に探すことにした。

次回は18時〜

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