表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/98

第5話 九十九の隠し事

お待たせ致しましたー

 (りょう)に案内されたのは玉蘭(ぎょくらん)の部屋だった。彼女に化けていた梁が寝ていた敷布はそのままで、梁はそれを無造作にどかしたと思えば……床の板を簡単に外した。その箇所には、何故か階段があったのだ。



「……地下か?」



 紅狼(こうろう)が尋ねると、梁は一度頷いてから恋花(れんか)の手をそっと握ってきた。思った以上に冷たい手に驚いてしまったが、人間とは違う生きている存在だと言われているのだから、温かさなどもないのかもしれない。


 それに、意思の強い金の瞳で見つめられると、この先にあるものは恐ろしいものではない、と主張しているのだろう。少しばかり不安はあるが、後ろには出会ったばかりだが紅狼もいる。彼の事も信じて、恋花は小さく頷いた。



「……連れてって」



 握られた手を、少しだけ力を込めて握り返した。顔はどうなっているのか鏡を見ていないからわからないが、梁が頷いてくれたので泣いてはいないのだろう。


 彼がふっと息を吹いて、術で灯りをつけた。暗い階段の下まで幾つか灯していき……下へ下へと、ゆっくりと恋花のを導いて梁は降りていく。後ろから紅狼も付いてきてくれたので、お互い(くつ)を履いているから土で作られた階段に当たると鈍い音が響いた。


 どこまで続くかと思っていたが、意外と終わりは早く。


 地面に足がつくと、奥の方が暗闇の中なのに青白く光っているように見えた。



『……あそこを見てくれ』



 梁がまた手を引いて、その場所へ連れてってくれると。光の中に女性が浮かんでいるのが見えた。誰だろうと覗き込むと、初老の女性が浮かんでいた。記憶の彼方にある母に似ているが、もう少し年を重ねた女性。


 そう、それはまるで。



「玉蘭殿!?」



 恋花が言いそうになった時に、紅狼が声を上げた。


 その言葉に、恋花はもう一度玉蘭らしい女性を確認してみたのだが、今日まで玉蘭だと思っていた梁の化けた年頃よりも随分と若い。だから、本当に祖母なのか信じ難かった。



「……奶奶(ナイナイ)?」



 声を掛けても、寝ている彼女は返答もない。と言うよりも、聞こえていないのか起き上がりも何もしないのだ。ただ寝ているだけの、今までの玉蘭の趣味とは全然違うくらいは恋花でも分かる。



『……これは、封印だ。恋花』



 梁は恋花の手をようやく離し、玉蘭が浮かんでいる箇所に触れても玉蘭は起き上がらなかった。



「……何者かに、施されたのか?」



 紅狼が問いかけると、梁はまたひとつ頷いた。



『……いつからか。我が玉蘭に変幻(へんげ)していたかも定かではない。……だが、恋花をひとりにしないためにも、今日(こんにち)までの偽りの生活をしていた。恋花には異能(いのう)があるゆえに』


「異能?」



 梁の説明の後に、紅狼が恋花の方に振り返る。真剣な(まなこ)をからの視線に、恋花はやはり美丈夫から見られてしまうことで胸が少しずつ高鳴っていく。だが、最初に顔を合わせた時よりも短く終わった。



呪眼(じゅがん)で見えただろう?』

「……ああ。先見か」

『ただの先見ではない。異国の先見が出来る』



 梁には何もかもお見通しのようだが、紅狼には呪眼がある事で全て知られた。だが、不思議とこの男性には蔑む扱いをされなかったので、安堵に似た感情を覚えたのだ。

次回はまた明日〜

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ