第42話 優しいのか
お待たせ致しましたー
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「恋花!?」
点心局に行けば、崔廉がすぐに駆けつけてくれた。その顔色は真っ青だった。おそらく、例の事件の内容を伝え聞いたのかもしれない。
「点心局長、大丈夫です。私や他の下女は無事です」
だから、自分は大丈夫だと告げたのだが、崔廉も緑玲妃のように、優しく、しかし強く抱きしめてくれた。
「大丈夫じゃないさね! あたしは直接見てないけど、凄い場所を見たんだろう!? 怪我はなくても、部屋で休みな」
気さくだが、どこまでも優しい女性。恋花に九十九がいるからこそ、この対応かもしれないと言うのは今考えるのは止そう。代わりに、本来の目的を告げることにした。
「点心局長、殺された女官は……緑玲妃様付きの方だったと。緑玲妃様もですが、お付きの女官方も気落ちなさっていました。元気付ける麺麭を作りたいのです」
「…………わかった。あんたは良い子だよ」
「……ありがとうございます」
良い子かどうかは、まだ自身でもよくわかっていない。だけど、報いたいと思っているのだ。緑玲妃自身のために。その気持ちが、今の恋花を強く動かしているだけに過ぎない。
とりあえず、材料を梁と共に集めて作ろうと思ったのは。先日、振る舞った『かりぃ麺麭』ではなく、もっと手軽なものを作ろうとしている。
餡。
生地。
さらにきめ細かい砂糖。
砂糖の方は、市井では高価な品だがここでは遠慮なく使えるので、惜しみなく使わせていただこう。
「恋花、今度はなんだい?」
「……はじめて、召し上がっていただいた麺麭を揚げます」
「ふむ。仕上げに粉砂糖をたっぷりまぶすのかい?」
「はい。……かりぃ麺麭と同じようにカリカリした仕上がりになります」
「……師父を見ているようだね?」
「……奶奶ですか?」
「ああ。仕える主人のために、懸命に向かう姿勢……そっくりさ」
「…………」
恋花の知らない、祖母の姿。
何故、封印されたかはまだよくわかってはいないが……今回の事件とは全く違う。今は、封印よりも目の前の仕事に打ち込もう。
恋花は、祖母以外の人間のためにここまで真剣に麺麭作りをしていきたいと思ったのは……初めてかもしれない。少しだけ、今はあの惨状を検分している紅狼のことが頭をよぎったが。あとで、差し入れに行こうかと量を多めに作ることにした。
次回はまた明日〜




