表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/104

第41話 あの女官は

お待たせ致しましたー



緑玲(りょくれい)()様!!」



 礼儀作法などを丸無視して、恋花(れんか)は彼女の私室に駆け込んだ。中では、緑玲妃が侍女や女官らを宥めていた。おそらく、あの女官が無残な姿で殺されたことを聞いたのかもしれない。



「……恋花」



 いきなり駆け込んできた恋花の態度を諌めることなく、緑玲妃は弱々しく微笑むだけだった。



「……ご無礼、お許しを」



 (りょう)と共に、最敬礼をし直しても普通なら咎める存在が誰もいない。それだけ、この後宮で惨い事件が起きたからだ。



「……いいのよ。伝え聞いたけど、今日休息だったあなたを含める四人が見たのね?」

「……はい。大きな声が聞こえて、皆で向かいました」

「……そう。陛下方が検分なさっていると、今知らせがあったの。だけど」

「……だけど?」



 聞き返すと、緑玲妃は細く長い息を吐いたのだった。



「殺された女官は、わたくし付きの子だったの」

「!? 本当……ですか?」

「ええ。日の浅いあなたはまだあまり話したことがないでしょうけど、本当よ。わたくし付きの女官を殺したとなれば、これは単純な殺しの問題ではないわ」



 緑玲妃は椅子から立ち上がり、左右で泣き崩れている女官や下女に『大丈夫』と声をかけてから恋花の前に立った。そして、ふわりと抱きしめたのだ。



「! 緑玲……妃様?」

「あなたの方が辛い目に遭ったのに、わたくしを心配して駆けつけてくれたのね。……あなたは、とても優しい子ね」

「……そうでしょうか」

「ええ、そうよ。主人を気遣う義務も動いたでしょうけど、あなたの顔を見ればわかるもの」



 優しいかどうかはわからない。


 ただ、居ても立っても居られないだけだった。この美しく優しい女性に何かあっては、哀しむ以上の感情が溢れそうになっただけで。


 それだから、駆けつけただけなのに……ずっとずっと優しいのは緑玲妃の方だ。自分付きの女官が殺されたと言うことは。


 これは、暗殺計画の一歩手前ではないのだろうかと……恋花でも思い至ることが出来た。だけど、料理以外何も役に立たない恋花が出来ることといえば、麺麭(ぱん)作りしかない。


 恋花は、緑玲妃に断りをひとつ入れてから、点心局に梁と向かった。

次回はまた明日〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ