第39話 凄惨たる光景
お待たせ致しましたー
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凄惨したくなるほど、惨い光景だ。
血溜まりだけでなく、砕けたり千切れた肉片や骨の散らばり様は見ていて気持ちのいいものではない。
女官が目の前で膨れて弾けたのだ。
紅狼自身の九十九の雷綺が検分した通り、九十九が先に砕けたとなれば……宿主である人間もただでは済まない事態になると。その通りとなった。
それを目撃したのは、自分だけではない。後宮にと連れて来た少女の恋花もだが、同室らしい他の下女らもいたのだ。他者との関わり合いが自身でも心配だったらしいが、縋り付くくらいには信用されているようだ。ともかく、彼女らの前で悲惨な光景が起こってしまったのだ。
心の傷を負わせる結果になったが、起きたものはどうしようもない。それよりも、各部署に飛ばした式らの連絡で人が多くやって来るだろう。この場を正しく保つことが、紅狼のすべき事だ。
恋花らは、彼女たちの九十九により運ばれたので安心は出来る。寄り添う者としての役割を成すことが出来ているのだ。『無し』だった恋花はまだ戸惑う様子が見れたが、直に慣れるだろう。そう思うしかない。
「紅!」
一番手に来たのは、武官を引き連れた皇帝の斗亜だった。雷綺が先導して前に浮かんでいたので、ある意味助かった。下手に隠し立てするよりずっと良い。
だが、斗亜自身は惨状を見て皇帝よりも幼馴染みの顔で、その場を見ては紅狼を呼んだ。
「……陛下」
「今はいい。雷綺には聞いたが、九十九と宿主が弾けたと?」
「……呪としかわかっていない」
「……目撃したのは?」
「俺以外……恋花と何人かの下女が」
「……これ以上見せないように、帰らせたのか?」
「勝手な判断だが」
「いや、いい。俺とてそうするだろう。……それはすべて返り血か?」
「……ああ」
疑うことがない。疑う必要はない。斗亜は紅狼の隻眼とその様子を見て、信用したのだろう。しかし、呪眼を駆使しても、九十九が弾けた原因が探れなかったのが……紅狼は悔しかった。
残された刻限の中で、斗亜の役に立てることは全力で取り組みたいのに。剣の意味が全く発揮出来ていない。
だからこそ、斗亜のために生き延びようと思い始めたのは……かつての、恩人である玉蘭を頼りたい気持ちからだった。
久方ぶりに訪れたら、孫が居て、孫の九十九が玉蘭に化けていただけでなく……初老の姿で封印されていた。あの玉蘭を目覚めさせねば、封印が解けて……きちんと意思のある玉蘭でなければ。
紅狼自身に蝕んでいる呪という呪いが消えないのだ。命に関わる……厄災のようなものらを。
だが、今目の前で斗亜が武官らに指示を出して九十九などを使い検分させてる惨状も……おそらく、同等の呪かもしれない。
紅狼は胸の辺りを掴んでからすぐに、自分もその中に加わって雷綺と改めて検分を始めた。
次回はまた明日〜




