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第37話 惨劇に

お待たせ致しましたー

 駆けつけた時には、そこは後宮には似つかわしくない惨状となっていた。


 血溜まりが廊下に。


 その中には、バラけた肉片が。


 返り血を浴びたらしい、恋花(れんか)らより歳が上の女官が血溜まりの外で引き攣った表情で膝をついていた。


 蘭香(らんか)蘭々(らんらん)はそれを直視したことで、恋花にしがみつくように気を失い。林杏(りんしん)(よう)を抱きしめながら、その場で膝をついた。恋花とて気を失いたいくらい悲惨な光景ではあったが、目を逸らしてはいけないと本能が知らせてきた気がした。己の九十九(つくも)である(りょう)が前に出ていたからだ。



「何が起こった!?」



 後方から、声が聞こえてきた。聞き知っている声である。振り向けば、隻眼の武官である紅狼(こうろう)が己の九十九を顕現させて、こちらへと走ってきたのだ。その焦った表情を見て、恋花は彼が来てくれたことへの安心感を得た。だが、両脇が双子で重いのは変わりないのでゆっくりと彼女らを床に下ろした。九十九らは、気を失った時に内に戻ったのか見当たらない。



「……紅狼、様」



 とにかく今は、この状況を把握せねばならない。見てしまったからには無関係などと言い訳が出来ないからだ。



「恋花!? これは何事だ?」

「……わかり、ません。女官の方の声が聞こえてきたので……私達も駆けつけただけで」

「君も含めて、そこの彼女らもか?」

「……はい。あちらの方は、今私も見ただけで」

「…………既にこうだったのか?」

「……はい」



 同じような返答しか出来ないが、無理もないのだ。そのままを口にするしか、恋花とて人間だから心が頑丈であるわけではない。むしろ、『無し』の生活が長かった分弱い方なのだ。それなのに、自分でも驚くくらい気を失わずに立っていられる。



『……これは、九十九が破壊されたな』



 言葉を紡いだのは、梁ではない。紅狼の九十九である軽装の女性だった。


 浮かんで血溜まりより少し上に立ち、何かを検分しているようだった。



雷綺(らいき)、それは間違いないか?」

『是。これは呪いに近い』

「……九十九に呪いか?」

『是。だからおそらく』



 雷綺と呼ばれた九十九が、気を失っている女官の方に振り向けば……いきなり、女官の身体が膨れ上がっていき、破裂したのだった。


 その瞬間を目にしてしまった時に、恋花の脳裏に何か思い出したような気がしたのだが、すぐに弾けて消えてしまった。


 それよりも、今の出来事に驚愕し過ぎて意識を飛ばさないようにする方が必死だったのだ。



「……九十九と人間が一心同体と言うのは、本当だったのか」



 距離が近かったので、返り血を浴びたのは恋花だけでない。紅狼もそれなりに官服が血だらけになってしまっていた。



『是。この呪い、術師は相当堕ちている者と見受ける』



 宿主に似て、九十九も冷静であった。これが歳を重ねた結果にしても肝が据わっているで片付けられない。何が、彼をここまで冷静にさせているのだろう。


 恋花はその強さを感じて、少しだけ失いかけた正気が……落ち着いた気がしたのだ。



「……皇帝陛下のところに。俺はここを保っておく」

『承知』



 そのやり取りで、雷綺はすぐに飛翔して皇帝がいるらしい玉座の間の方へ向かい……紅狼は手で印を結び、紙の式を幾つか召喚させてあちこちに飛ばしたのだった。



「ひとまず、君らはここから離れた方がいい。……梁、それぞれの九十九に呼びかけて、運ぶように願えるか?」

『……やってみよう』



 言われて、梁もはじめての試みをしてみたのだが、それはなんとかうまくいき。それぞれが九十九に運ばれることになったが、九十九とは言え男性に抱えられるのは初めてだった恋花は……幼い頃の父親を彷彿させる気持ちになったのだ。

次回はまた明日〜

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