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第30話 魅惑の香辛料

お待たせ致しましたー





 *・*・*







「……なにを作るんすか? 恋花(れんか)

「食事向きの麺麭(ぱん)だよ」



 林杏(りんしん)に説明しながら、恋花は香辛料の瓶の蓋を開け、匙で慎重にすり鉢の中へ入れていく。そしてすべて入れ終わってから、すりこぎでゴリゴリとすっていくのだ。途中で林杏と交代してから、肉を二刀の包丁で叩いている(りょう)へ出来上がったか確認をしにいく。



『だいたい出来たと思う』

「……うん。大丈夫だね、炒めてくれる?」

『是』



 先に刻んだ玉ねぎなどの野菜も、順番に入れてしっかりと炒めてもらう。林杏のところに戻れば、ちょうどよくすりつぶしが終わっていた。



「……これ味付けに使うんすか?」

「そう。生地の中に包む具材の味付けに」

「ふーん? いい匂いっすね」

「疲れたでしょう? 休む?」

「そうさせてもらうっす。手が痺れたっす!」



 その返答は予想していたので別に責める気はしない。次に恋花は、梁に先に出してもらっていた固くて古い麺麭を砕いて粉にする作業をしていく。林杏に尋ねられたが、恋花は『美味しいもの』だときちんと答えた。



「大丈夫。絶対美味しいから」

「……なんに使うんすか?」

「んー。生地にまとわせる部分って言えばいいかな?」

「わかんないっす」

「あと、蒸したり焼くんじゃなくて『揚げる』の」

「あげる?」

「油の中で火を通すこと」

「えぇえ?」



 ほとんど料理をしてこなかったからか、調理法をそこまで知らないのだろう。普段の下女の仕事でも、茶を淹れることはあっても火をそこまで扱わないのか。彼女の九十九(つくも)の能力は、扱い方によっては重宝されるだろうに……力が少し弱いからなのか、林杏は自信がないようだった。


 砕く作業が終わり、具材の方も混ぜた香辛料で味付けを加えていくと……厨房中にいい匂いが充満していった。



「な、なんだ?」

「嗅いだことのない匂い……」

「変わってるけど、いい匂いだなあ?」

「誰だ。この作業してんの」



 男らがワイワイ騒いでいると、少し奥の扉が勢いよく開き……中に崔廉(さいれん)が入って来たのだが。



「騒がしいね!? 仕事は進んでんのかい!? さっさと支度しな!!」



 その一喝により、手を止めていた料理人らは彼女に謝罪してから、作業を再開させた。崔廉はいつものことなのか、あまり気にせずに恋花らの方に気づくと……途端に興味津々な表情に変わり、恋花の隣に立った。



「お、おはようございます」

「おはようさん。なんなんだい、この香りは!」

「……今日の麺麭に入れる具材のものです」

「へぇ? 嗅いだことのないもんだねぇ? ところで、下女の子がなんでいるんだい?」

「す、すみませんっす! 恋花の……昨日みたいなあの食べ物作っているとこ見たくて」

「はは。怒ってないさ。……同室かい?」

「……はい」



 正直に言うと、崔廉はそうかと頷いてくれた。気前の良い性格なのか、仕事の邪魔でなければ怒らないのだろう。逆に、中断していたら別なのかもしれない。



「んで、これを麺麭の中に入れたら昨日のように焼くのかい?」

「それもいいですが、今日は揚げます」

「ほーぉ? 点心の揚げ饅頭のようにかい?」

「種類としては、似てます」



 甘くはないので、厳密に同じではないのだが。


 冷める工程を梁に頼んてから、それを昨日のくりぃむのように生地の中へ包んでいく。崔廉もやってみるかと聞いたが、仕事の指示を飛ばすからと断られた。代わりに、最後の揚げる時には呼ぶように頼まれた。


次回はまた明日〜

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