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第29話 九十九の哀情

お待たせ致しましたー





 *・*・*







 役に立たない。


 本質的にはそうかもしれない。(りょう)は、そう感じていたのだ。恋花(れんか)九十九(つくも)として、正式に戻ってまだ日が浅いのだから。


 まだ全てを告げたわけではないが、恋花に告げた内容には偽りはない。ないのだが、真実を告げていないのもまた事実。


 いつから、彼女の祖母である玉蘭(ぎょくらん)となり切っていたのか……それは本当にわかっていない。『気がついたら』、あの姿になっていた。


 記憶もいくらか受け継ぎ、まるで孫と共に生活する老婆そのものに。それが当たり前だったのだ、あの紅狼(こうろう)と言う武官に見抜かれるまでは。


 あの呪眼の視線を受けた時に、梁はまるで呪縛から解き放たれたように……変幻(へんげ)の皮から己を出すことが出来た。


 あの武官は、玉蘭に用があったと言っていたが……それまでの偽りの記憶の中から、取り戻した記憶通り、玉蘭は家の地下で眠っていた。若い姿を保ったまま。


 その時期から、梁は恋花の九十九から離れていたのだ。


 何故、どうして。


『無し』の生活を虐げていたのは、梁のせいだとも言うのに、恋花はまだ混乱している部分があるので梁を責めない。もしくは、今までの生活のせいで、人間らしい性格を養えていなかったからだろう。優しくとも、芯の強さは残っていても……人間でなく、寄り添うモノの存在がないことが当たり前過ぎて、自分で生きていく事を決めていたからか。


 梁は顕現を成してから、ずっと考えていた。早く、玉蘭を目覚めさせねばと。


 恋花の肉親はもう彼女だけなのだから。変幻越しに見ていた、恋花の表情はいつも淋しい笑顔だったが……それでも『誰か』がいるだけで心が支えられていたのだ。


 それを取り戻してやりたい。そのために、点心局に来て恋花が少しずつ他の人間と九十九が関わってきているこの時間を。


 壊す真似はしたくないのだ。人間らしい生活をさせてあげられる場所になりつつあるから。


 だから、梁は。


 林杏(りんしん)の九十九の能力のように、時を動かせるか試してはみたが……湯を早く沸かす芸当はやはり出来なかった。


 代わりに、これから使う具材の食材を二刀の包丁で細かく刻んでいったのだった……。

次回はまた明日〜

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