第26話 安堵
お待たせ致しましたー
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こんな出来事があって良いのかと、恋花はまだ自分に自信が持てないでいた。
皇帝、女官、さらには皇妃候補。
彼らが皆、自分の手で作った麺麭が美味であるとはっきりと口にしてくれたのだ。緑玲妃に関しては、おかわりをしていいかと言ってくれるくらい……麺麭を求めてくれたのだ。今まで、祖母に化けていた梁しか口にしていなかったものを、短期間で高貴な存在の方々が口にしてくれたのだ。
形容し難い気持ちが込み上げてきたが、ここで泣いてはいけないと恋花は我慢しながら緑玲妃からの問いかけを答えていく。
「外側のものが、基本的には麺麭と言うものなのかしら?」
「はい。粉を数種類混ぜ合わせ、牛の乳を固めた時に出来る油。砂糖や塩に老麵なども混ぜ合わせます。あとは、回数を分けて膨らませてから餡を包み、また膨らませてから竈門で焼きました」
「そうなのね。本当に美味しいわ。いくらでも食べられそう……」
そう話しながらも、二つ目を食べ終えてくれたのだ。よっぽど、くりぃむの麺麭が気に入ったのだろう。喜んでいただけて、恋花はさらに感情が込み上がってきたが堪えるのを頑張った。
「……麺麭には種類が他にもたくさんあります」
「まあ、そうなの?」
流石に三つ目は我慢しようとしたのか、緑玲妃は侍女が用意していた茶を口に含んだ。くりぃむのお陰で艶やかになった唇が妙に色っぽく見える。
「はい。お菓子向きだけではなく、食事も可能です。お望みでしたら、いくらか時間を必要としますがお作り致します」
「嬉しいわ。けど、わたくしだけで楽しむのもいけないわ。ね、主上にも作ってもらえないかしら?」
「! はい!」
本当に、仲の良い関係でいる。この方が、皇妃となれれば国母としてもだが、唐亜王国がますます栄えていくことだろう。世辞に疎い恋花でも、その将来を考えることが出来た。
先見が無くとも、それが現実となるのであれば。この方々のために、己の能力を活かそう。作っていこう、麺麭を。
緑玲妃の願いを引き受けた恋花は、九十九の梁と一緒に彼女へ改めて最敬礼を取り。
その日から、彼女付きの料理人見習いとして後宮に詰めることとなったのだ。
次回はまた明日〜




