第19話 何の香り
お待たせ致しましたー
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芳しい、とても良い香りがするような気がした。
ふんわりと、甘くて香ばしい……けれども、包子ではなかった。あの独特な甘ったるいような香りではない。微かだが、香の匂いでもないのだが、どこからするのだろうか。
気にしてしまうと、どうしても知りたかった。そう思っていると、侍女を無意識に呼んでしまった。
「……およびでしょうか」
侍女は、この香りに気づいていないのか平素の表情でいた。
「お前は気づいていなくて?」
「……香りでしょうか?」
「そう……この香り」
少しずつ、ほんの少しずつだが強くなってくるのだ。それが自身の空腹を刺激してきてたまらない。この正体を知りたかった。だから、彼女に頼むことにした。
「承知致しました。すぐに調べて参ります」
「お願いね」
自分で行くことが出来ればいいのだが、今は自由に動くことが出来ない立場な為に叶わない。代わりに、お願いを出来る存在がいる。九十九もいるが、己の分身とも言える存在ゆえか、自分からはあまり離れられないのだと言う。その理由はひとつ思い当たるが、まだ確定ではない。
だから、夫である皇帝には言えないのだ。
「では、行って参ります。緑玲妃様」
「ええ」
皇妃候補の最有力候補だと、後宮では囁かれている存在。
先ほど、皇帝が訪れるほどの寵愛を受けている女性なのだが、当人はまだその自信を持てていなかった。
次回はまた明日〜




