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夏冬のダブルス  作者: 棗いな
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夏冬の出会い

初めまして。なつめと言います。タイトルは夏冬かとうのダブルスと読みます。

初めて小説を投稿するので、誤字脱字、設定のブレなどいろいろ改善点があると思いますが、多めに見ていただけると嬉しいです。キャラの読み方は薙羅榎なぎら えのき榊柊さかき ひいらぎです。

学校名は六花りっか高校と華夏かなつ高校です。

ある夏の日、俺はおまえに出会った。知ってるか、俺のおまえへの最初の印象は最悪だったんだ。おまえは知らないだろうけど。


「俺は部活にも所属してないのでとにかく暇だった。定期テストは終わったばかりだし、勉強なんてテスト直後にしたいわけもない。気づいたら何となく公園に来ていた。でも、公園に来てからすごく後悔した。めっちゃ暑い。そう、今は何せ七月下旬。暑くないわけがないのだ。ほんと日本の夏っておかしいよな。気温が高いだけじゃなくて湿度がめちゃくちゃに高い。汗をかいて服は体にくっ付くし、何より直射日光がきつい。あーほんとに何でこんな所に来ちゃったんだろう。数十分前の自分の行動を恨みたい。しかもこの公園、片道、十分以上かかるんだよな。マジで後悔。とは思いつつもなんだかんだ来てしまったら、何かしておかないと勿体ないと思ってしまうのが人間な訳で。とりあえず俺は噴水?みたいな場所に来ていた。とりあえずそれで涼もうって思ってた。そしたらそしたで小さな子供がたくさん遊んでて、彼女もいない一人の高校生がここで一人で遊んで涼むのはちょっと恥ずかしくなった。そして、アイスでも買って帰ろうって思ってた時に出会ってしまったわけだよ。運命の相手に!なんてはずもなく出会ったのは普通の男子校生だった。まあ、普通って形容するには少し変なやつだったな。で、そいつは俺の自転車の前に立っていたわけ。そいつの髪の毛はモスグリーンだった。信じられるか?モスグリーンだよモスグリーン。まあ俺も髪の毛紫だから大概だけど。綺麗なお姉さんとかならまだしも、制服着た男子高生だよ。髪も結わってたな。俺は何だこいつの格好、ダセエって思った。その時から俺の心の中でのお前のあだ名が濃い綾鷹になった。で、シャボン玉のおもちゃを押し付けてくんの。最初はシャボン玉の液を飲み込んで最悪だった。そしたら、今度は急に俺の手を引っ張ってテニスコートに連れて行くし、連れていったらめちゃくちゃなこと言うし。

「今から、テニスの練習するよ。やったことないでしょ。」

「って、まずお前はどこの高校の誰だよ。テニスの練習するよじゃなくて、話すとしてもまず自己紹介だろ。」

「ああ、忘れてた。ごめんね。俺の名前は薙羅榎。六花高校の生徒だよ。君は?」

「俺のこと何も知らないのにダブルスペアだとか言ってきたのかよ!まあ、いいや。俺の名前は榊柊。華夏校生だ。で、お前は何が目的で俺のことをダブルスペアだとか言ってきたわけ?」

「なんとなく。俺の感。お前と組めばすごいプレーができるって思ったから。」

「はあ、お前正気か。俺は走ることと体力には自信があるけど他は全くできないぞ。それに高校だって部活に入ってないから多分体力も落ちてる。」

「なんだ、体力に自信があるなら大丈夫じゃん。それに素人だってことは予測できてたし。むしろ体力に自信があるなら嬉しい誤算だね。全てのスポーツで一番キツくて、面倒臭くて、難しいことは基礎体力作りだし。技術は体力さえあればどんどん吸収できる。今のを聞いてより一層思ったよ。お前は俺と一緒にテニスをするべきだね。」

「高校からじゃ、遅いよ。」

「そんなことない、とりあえず一回俺とテニスの練習してみてよ、ね。」

優しい口調で言っているが、ノーとは言わせない。そんな圧が榎から滲み出ていた。俺はその圧に負けた。

「わかったよ。でもお前じゃなくて。柊って呼んでくれ。俺もお前のことを榎って呼ぶから。」

「わかった。柊。じゃあとりあえず、ラリーの練習から始めようか。」

この時、僕は知らなかった。まさか、お前とこれから五時間もテニスをすることになるとは。


「よく、こんなに長時間動いてもバテないね。すごいや。高校でテニスやってる人でも、こんなには動けないんじゃないかな。それにその吸収力、やっぱり柊は俺とテニスした方がいいね。ていうか、させるよ。このポテンシャルがあってテニスやらないのは勿体無いよ。」

「いや、バテてるよ。でも、想像以上にテニスって楽しいんだな。」

「でしょ、さらに勝利という快感を味わっちゃったらもう、堪らないよ。」

そう言う榎の目は輝いていた。俺はその瞳に引き込まれ、こいつとテニスをしようと決めてしまった。今思えば一目惚れのようなものだったのかもな。

「わかった、俺はお前のペアになる。それでだけど、どうするの。俺たち高校違うじゃん。それに、お前はテニス部にもう入っているだろ。」

「俺、テニス部には入ってないぞ。それと、テニスする場所なら俺の家に来てよ。そこでテニスできるから。」

「テニスができるって、どんだけ敷地広いんだよ。コートでもあるのか。そんなわけないだろ。」

「いや、コートならあるって。」

「は?お前まじか。」

「マジマジ。マジのマジ。明日、またこの公園に来てよ、そしたらうちに案内するからさ。」


「母さん。俺、テニスがしたい。」

夕飯の時に俺は母に今日の出来事を説明して、テニスがしたいと言うことを伝えた。俺は榎とテニスをするうちに、どんどんテニスの魅力に取り憑かれてしまったのだ。ものすごくテニスが楽しかった。

「そっか。わかったわ。」

「え、いいの。もっと反対とかされるもんだと思ってた。それにお金だってかかるし。」

「実はね、母さん心配だったの。高校に入ってから部活に入らなかったから、友達はできたのか。それに、体を動かさないのはよくないから。あなた高校について何も話してくれないから。でも、そんなあなたをペアにしたいと言ってくれる子がいたんでしょう。それならば、私に反対する理由はありません。そして何より息子がやりたいと言ってることなら応援したいと思うのが母親というものでしょ。」

そう微笑んだ、母さんがいつもよりも眩しく見えた。

「ありがとう。母さん。」


翌日。

「マジか。家でっか。」

正直、家にテニスコートがあるなんて話、嘘だと思ってた。それに、榎の家がこんなにでかいなんて思いもしなかった。なんか家の前にめっちゃ頑丈そうな門があるし。

「お前って、もしかしなくてもいいところの坊ちゃんだったりする?」

「いいところかはわかんないけど、お金はあるね。父さんたちも好きなことやらせてくれるし、まあ坊ちゃんなのは事実だね。」

俺はとんでもない奴に目を付けられた。これ、榎になんかあったら絶対俺に責任回ってくる奴だろ。大丈夫か。

「とりあえず、榎の両親のところに行ったほうがいいのか。コートを借りるわけだし。」

「いや、わざわざ言いにいかなくてもいいよ。もう柊のことは話してあるし。コートを使うことも。ああ、そうだ。昨日柊とテニスするって話したら、父さんが柊の分のテニスセット一式を買ってくれたんだよね。それだけ取りに行こう。」

「いやいやいや、そんなにしてもらう訳にはいかないって。俺ももう母さんに話してラケット買ってもらう話はしちゃったし。」

「まだ買ってないなら大丈夫でしょ。それに、テニスを一緒にやって欲しいって頼んだのは俺な訳だし。柊は俺と会わなかったら、多分テニスはしてなかったでしょ。だからいいの。」

「うーん。でもなあ。」

「まだ納得しない?でも、今日は取り敢えずこっちで用意したラケットでもいい?」

「まあ、今日のところはラケット持ってないし。頼むわ。新しいラケットについては母さんともう少し話してみる。」

「うん、じゃあ取りにいこっか。」

この時、俺は榎との金に対する価値観の違いを思い知った。


「すごいな、家の中もすごい豪華だな。こんな家アニメでしか見たことないよ。実際にあるんだなこんな家。」

「大袈裟だって。確かに他の家より豪華ではあるけど、世の中にはもっと、凄い家もいっぱいあるよ。着いた。ここが俺の部屋ね。この部屋の中に柊のテニス道具があるから。取り敢えず今日はラケットだけね。」

「お邪魔します。おお、凄いな。」

榎の部屋に入って俺は驚いた。もちろん、榎の部屋がアニメで見るような部屋だったからなのは言うまでもない。だけど、それ以上に俺は榎の幼少期の写真に驚いた。榎が写っている写真には必ずテニスボールかラケットが写っているのだ。榎はよっぽどテニスが好きだったのだろう。それは、現在も進行形で。おそらく、写真の頃からおそらく十年以上はテニスをやっていると考えられた。そんなにテニスをやっているであろう彼が何故俺とダブルスを組むなんて言い始めたのだろう。本人は感だと言っていたが、そんな奴が公園で見つけたド素人などとダブルスペアになるだろうか。何か他の理由があるようにしか思えない。

「ラケットあった?」

「え、ああ。」

榎の写真に気を取られすぎて気がつかなかったが、目の前にあるラケットはとても美しかった。これ絶対高いやつだろ。黒ベースで、所々にバラの柄が入っているラケットはとてつもない、存在感を放っていた。

「どう、このラケット。綺麗でしょ。」

榎が輝いた目でそう言った。また、この目だ。テニスの話をしている時の榎はキラキラしている。

「でも、ごめんね。このラケットを作るのに、時間がなかったからこれは俺のラケットの色違いなんだ。デザイン案がなくてね。でも使い勝手は保証するよ」

「色違いか、榎。お前のラケットも見てもいいか。」

「俺の?全然構わないよ。むしろこっちから頼みたいくらい。」

俺のラケットとは対照的に榎のラケットは白を基調として、緑色の色のバラの柄が入っているラケットだった。「綺麗でしょ。それにそのラケットは俺が柄をつけたから。」

「榎がこの柄をデザインしたのか。」

榎って美的センス高いんだなと、思ってると早速このラケットを使ってみたくなった。

「なあ榎、俺このラケットを早く使いたい。」

「うん、じゃあコートにいこっか。」

コートに向かっている途中俺は榎のお兄さんとお父さんに会った。こんな家を持っているから、堅苦しい人なのかと思っていたが、想像以上にほんわかした人たちで驚いた。その後には榎のお母さんに会ったがお母さんものほほんとしている人だった。榎も十分のほほんとしているが、それでも多分、この家で一番堅苦しいのは誰だと聞かれたら榎になるだろう。本当にそれぐらい、ほんわかしていた。

「お、着いたよ。ここがコートね。」

俺はまたしても驚いた。コートがあると言っていたが、それはあくまで屋外のコートかと思っていた。だが、実際に目の前にあるコートは完全に建物の中にあった、テニススクールのようなコートだったのだ。しかもコートが一面だけじゃなくて六面もある。いや、まあ、コートが一面だけじゃないのはなんとなく想像ついたけどまさか室内とは。しかも、自販機も設置してあるし。観覧までできるようになっている。コートを見渡すとトレーニングマシーンのようなものもあるし凄いな。どんだけ金かかってんだろう。という言葉が口から出かかったが、その言葉をグッと飲み込んで俺たちはテニスをすることになった。まず初めにサーブの練習をしようということになったが、その前にラケットの握り方から教えてもらった。俺は榎からサーブのフォームについて教えてもらった。

「取り敢えず、サーブを打つ時は、左手でボールを投げて、その投げたボールが落ちてくるタイミングを見計らってスウィートスポットに当てると、鋭いサーブが打てるよ。」

「なるほど、と言いたいところなんだがスウィートスポットってなんだ。」

「ああ、スウィートスポットっていうのは、大まかにいうとテニスラケットに当てる位置のことだよ。テニスラケットのど真ん中にボールを当てるイメージで大丈夫。取り敢えずやってみなよ。」

そう榎に言われて俺はサーブを打ってみた。右手でボールを上げて、左手で打つ。

「あれ、柊って左利きだったの?」

「そうだよ。ああ、ごめんな言い忘れてて。」

「別に構わないよ。それと今のサーブ、すっごいよかった。もうちょっとラケットを振るのを少し早くするともっと速い打球が打てるようになると思うよ。もう一回やってみてよ。」

「ああ、ラケットを振るのを少し早くね。」

これはいい感じじゃないか。さっきと全然違う。

「まじで」

榎がなんか言っている。

「まじで打てちゃうの?今どうやった?どうやって回転なくしたの?どうやって、どうやって?教えて!!」

訂正、榎が凄いスピードで喋ってる。何やら、榎の好奇心に触れてしまったようだ。榎は本当にテニスのこととなるとキラキラ輝いている。

「一回落ち着けって。それに、どうやったって聞かれたって俺もわからないって。」

「ごめん、テニスのこととなると我を忘れちゃうのは俺の悪い癖なんだ。でね、今柊がやったのは何かって言うとフラットサーブ。フラットサーブって言うのは打球にかける回転を少なくすることで真っ直ぐ進んでいくサーブのことなんだ。でもこのフラットサーブは一朝一夕に習得できるもんじゃなくて、それなりに練習をしないと習得できないんだよ。でも、柊はさっきそれをやって見せた。凄い才能だよこれ。これを会得できたら全国でも大きな武器になるよ。」

「全国!?流石に、テニス歴一年未満のやつが無理だろ。」

「柊、最初から無理って決めつけるなよ。出来るかもしれないだろ。まあ、全国の話とかは柊がどこまでテニスをやるかにもよるから、今すぐに決められることじゃないんだけど。テニスの影響で柊の受験に影響出たりしたら流石に嫌だし。」

「いや、全国へ行こう、榎。そして日本一のダブルスペアになろう。」

「本気かお前?まだ俺と二回しか会ったことないんだよ。それに、全力でやるなとは言わないけど全国を目指すとなると必ず勉学に影響が出てくることになる。自由時間を削ってまでテニスに時間を捧げる覚悟があるの?」

「ああ、俺は中学の時に陸上部に走ってるだけだからっていう理由と中途半端な気持ちで練習に臨んできた。後悔してたんだ、真面目にやらなかったこと。高校でもその後悔と向き合わずに楽な道を選んで帰宅部に入った。

でも、榎にあって、テニスを少しだけやってみて、本気でやってみたいと思ったんだ。それにテニスでも必ず必要になる体力と言う点に自信がある。それに、自分で言うのもあれだが俺にはテニスの才能があると思う。榎にも言われたしな。だから、全国へ行ってみたい。」

「そっか、そこまで言うなら断れないよ。目指そう全国。でも、生半可な気持ちでいたら絶対に潰される。もう一度言っておくけどそこの覚悟だけはしておいてね。俺も、そこまで言われたなら手を抜かないよ。」

「わかったけど、それよりも榎の方は大丈夫なのか。勉強とか。」

「ああ、俺は大丈夫。俺は今現在、高校で高二の範囲の授業を受けてるけど、家庭教師とかの影響で大学課程終了レベルの勉強は終わってるから。大丈夫。海外だったら多分もう大学卒業してるね。だから、正直学校の授業受けなくても大丈夫なくらい。」

「うん?今、榎高二って言った?」

「そうだけど。」

「俺今、高一なんだけど先輩ってこと?」

「柊って高一だったんだ。驚いた。じゃあ先輩ってことだね。」

「ずっと、タメ語ですみませんでした。」

「ええっ、どうしたの柊。」

「いや、俺、中学時代陸上部と話したじゃないですか。それで、上下関係は大切にされてきたので、先輩には敬語を使わなきゃ気が済まないんですよ。」

「ごめん、柊、気持ち悪いからタメ語に戻してくれない?ちょっと鳥肌立ってきた。ほらほら、みてみて。」

そう言って榎が腕を見せてきた。本当に鳥肌が立っている。

「わかったよ。それと一つ頼みがあるんだけど。」

「なになに?家の全資産渡してくれとかそう言う系統以外のものだったらできる限り答えるよ。ていうか、タメ語でも話せるんだ。」

「流石に、家の資産渡してはないって。そうじゃなくって、俺に勉強を教えてほしい。俺の勉強できない訳じゃないんだけど、学校の先取りしておきたいし、なんなら大学範囲の勉強も教えてほしい。」

「いいんだけど、流石に大学範囲になると少し難しくなるよ。」

「大丈夫、多分理解できると思う。それに高三の途中くらいまでなら、もう勉強終わってる。なんなら、大学共通テストもけっこう解けた。」

「そういえば、柊は華夏高校だもんね。そりゃ賢いわ。」

「俺はそこの首席。そう言う榎こそ六花高校だろ。」

「でもなんとなくそこ入ったからな。俺も学年首席だけど。」

「道理で、話がスムーズだと思った。」

「ちょっと待って。柊。俺天才的なことに気づいちゃった。俺たちって似たもの同士じゃね。」

「今更かよ。でも確かに共通点多いな。」

「俺たち、ダブルスペアとしては最適かもしれない。特に賢さが近いって言う点が。」

「あー。賢さが近いと考えてることが言わなくても伝わるからってことか。」

「って、ちょっと喋りすぎちゃったね。練習を再開しようか。次はラリーね。」

こうして、俺たちの初日の練習は終わった。

一週間後

俺は結局先週の日曜日から毎日、榎の家に行って、テニスの練習をした。そしてここ一週間で新たな発見をした。なんと、裏道を使うと俺と榎の家までは五分もかからないのだ。これは本当に朗報だった。割と遅くまでテニスと勉強をした後に家まで五分以内で帰れる、これは本当に嬉しい。あと、テニスの練習の後に二人で毎日勉強をすることも決めた。しかも、ほぼほぼなんでも教えられる榎先生付き。これは、一応ある程度の範囲まで勉強が終わっているとはいえ、テニスをすることで、学業が疎かになったら、テニスをやめろと両親から言われる可能性があるからだ。まあ、あまりないと思うが。おかげで、テニスと勉強の両立をしながら、文武両道をまっとうすることができている。それと、驚くべきことがもう一つ。榎が髪を切った。

「あれ、髪切った?」

「邪魔だと思ってね。」

まあ、切ったと言っても長髪がウルフカットになっただけだが。榎の雰囲気と、ウルフカットの大人びた雰囲気は、とてもあっていた。まあ、榎の顔立ちは整っているので、長髪の時点でも視線を集めていたが。

「ていうか、前から思ってたんだけど榎はずっと長髪だったけど、校則とかうるさくないの?」

「うちの高校、特殊でさ。学校の成績に基づいて成績上位者は校則免除の特権があるんだよ。なんか、その特権欲しさに勉強が頑張る奴が増えるからとかそんな理由で。」

「まじか、羨ましいわ。」

「まあ、俺からしてみればあんまり効果ないようにしか思えないんだけどね。そんなことよりさ、今日の練習は何にする?」

「俺、あれをやってみたい。スマッシュ。やっぱネット競技の醍醐味といえばスマッシュだろ。」

「スマッシュか。確かにやってみるのもいいかもね。でも、スマッシュもほぼほぼサーブと同じ原理で打つから、この間教えられることはほとんど教えちゃったんだよね。もう少し教えるべきこともあるかもしれないけど、柊ならこれ以上教えなくてももうスマッシュ打てちゃうと思うんだよね。とりあえず一回試してみる?」

「っと。あ、打てた。」

「マジか。いやまあ、できるかな〜とは思ってたよ。思ってたけどさ、にしてもだよ。本当に柊はテニスの才能があるんだね。まさかここまでとは思わなかったよ。」

感心半分、ため息半分といった感じに榎が呟いた。そう、簡単にスマッシュをやってのけてしまったのだ。

「柊、ちょっと話があるんだけどさ。今日は柊が簡単にスマッシュを習得できるってことがわかったし、今日は練習をやめない?」

「話って何の」

「いや、大したことじゃないけど一旦テニスの基本ルールの確認をしようと思って。」

そう言って、俺たちは榎の部屋に向かった。

「とりあえずだけど、柊はどのくらいテニスについて知ってる?特にダブルスについて。」

「うーん。そういえばあんまり知らないな。技術を磨くことを意識しすぎて、技術の磨き方は調べたことあったけど、一番大事なルールを調べ忘れてた。」

「そうだと思って、ルール確認と言う時間を設けたわけだけど、最初から全部教えたほうが手っ取り早そうだね。」

そう言ってから、榎大先生のテニスのルール解説が小一時間をかけて行われたのだった。それと同時に俺が前衛、榎が後衛ということも決まった。

「じゃあ、また明日ね。」

帰り際に榎の家を振り返ると榎がベランダで、シャボン玉を吹いていた。初めて会った時もシャボン玉を吹いてたよなと思いつつ、明日榎に聞いてみようと思うのだった。


「なあ、榎ってさ。よくシャボン玉吹いてるけどなんで?」

翌日の練習中、俺は榎に質問をしてみた。

「うーん。特に理由はないけどシャボン玉見てるとなんか、儚さが感じられるから好きなんだよね。」

「儚さ?」

「うん。シャボン玉ってさ、小さな衝撃で簡単に散っちゃうじゃん。それが儚いよねって思って。」

「ごめん、あんまりよくわかんないわ。」

「いいんだよ。人の感性なんてそれぞれなんだから。それに僕もこの話をして共感されたことないしね。」

シャボン玉が儚いか…結局その日はシャボン玉について考えながら練習をした。

その日の練習終わりに榎が

「柊、再来週に他のペアと練習試合をしよう。」

と言ってきた。

「いいよ。ちょうど俺の実力も試してみたかったしな。」

「じゃあ、決まりね。再来週に地域のテニス大会に申し込みしておくから、それまでに、ダブルスとしての実力をつける練習をしようね。」

その日から、俺たちの練習は技術よりもダブルスとしてのチームワークを高めていく練習がメインになった。

そして、あっという間に試合の日。俺は緊張と興奮に包まれながら会場についた。これからどんな奴らと戦えるのだろう。そう思いながら、俺はアップを始めたのだった。


いかがだったでしょうか。楽しんでいただけたら幸いです。

今回は榎と柊の会話を中心に描写してきたつもりなのですが、次回は試合の躍動感を中心に秒車していけるようにしてみたいと思います。(もしかしたら、また会話中心になるかもしれませんが)

話は変わりますが、私がテニスをしていたのがもう七年も前なので試合をうまく描写できるかが不安です。とりあえず頑張ってみます。高校テニスの試合を見ることから始めてみたいと思います。

まだまだ続編の投稿時期も未定ですが、この作品を気に入っていただけたら、続きを読んでもらえると嬉しいです。

ここまで読んでいただき本当にありがとうございました。

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