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第12話 寝れないんですけど!?

 緊急事態が発生した。


 現在、夜の12時ごろ、事件は起きた。


 海利がギャルっぽい双子の妹の紫水にビンタされた後、俺は部屋に入り疲れを癒していた。


 そのあとは、夕食を食べたり風呂に入ったりと、なんだかんだ満喫をしていた。

 美女と生活するというのは、緊張感が常にあるが悪くはないもんだ。


 夜は双子の紫水と同じ部屋で寝ることになるのだが、一緒と言っても2段ベッドでしっかりと区切られていた。

 ちなみに下が俺で、上が紫水だ。


 真上に美少女がいるということで、ずっと気が気ではなかった。

 けれども、今日の疲れがあったので、意外とすぐに眠りにつけそうだった。


 しかし、そこで状況は一変する。


「おじゃましまーす」


 真夜中、心火の部屋に訪問者がやってきた。

 その人物は、隣の家に住んでいるという菜乃川春乃だった。


「お、春乃じゃん。おひさー」


「紫水、久しぶり~」


 紫水と春乃は割と仲が良いみたいで、楽しく談笑していた。

 俺は紫水がここに招き入れたのかと思った。


「春乃、どうしてここに?」


「どうしてって、今日言ったでしょ」


 彼女の言っていることが俺にはさっぱり理解できなかった。


「え、なんだっけ?」


「もう、一緒に寝てあげるって言ったの覚えてない?」


 な、あれ本気だったのか。

 俺がこの世界にやってきた時、不審な動きから心火が寝不足という結論になっていた。


 その時に彼女が「隣で子守唄歌いながら、一緒に寝てあげようか?」っと言っていたことを思い出した。


 適当にあしらった気がするけど、どうやら彼女は本気にしたようだ。


 それから彼女は当然のように、ここの家の風呂に入って寝巻に着替えていった。

 詳しくは聞けないが、何度もこの家には泊まりに来ている様子。


「じゃ、紫水おやすみなさーい」


「ん、おやー」


 そして春乃の眠る準備が整うと、部屋の電気が消え俺と春乃は同じベッドに寝ることとなった。


 いやいや、まずいって!

 彼女は虎頭心火だからこんな行動を起こしているだけで、中身は初対面の男なんだぞ?

 今それに気がつかれたら、殺されかねないな。


「……ん、すー」


 彼女の寝息が、俺の数センチ隣から直で聞こえてくる。


 心火を寝かせるつもりだったようだが、彼女は俺よりも先に熟睡してしまった。

 健康的だ。


「……しんかぁ~」


 寝ぼけながら彼女は俺に抱き着いてきた。


 っう!

 耐えろ、俺の理性。


 パジャマに着替えているので、おそらくノーブラだ。

 だから、生々しい彼女の肉感が、俺の体に迫ってきている。


 女子高生とは思えないナイスバディだ。

 けしからん。


 彼女の睡眠が深くなるにつれ、密着度もあがってくる。

 すぐそこに柔らかそうな唇が目の前にあった。


 冷静になれ、田中尊よ。

 心火と春乃は交際をしていないのだ。

 つまり、キスをする仲ではない。


 それに、俺は彼女とは他人も他人だ。

 誘惑に負けるんじゃない。


 そうだ。

 真里菜のことを思い出せ。


 俺には今でも大切に思っている人がいるんだ。


 おー、そうだ。

 いい感じだぞ。


 彼女はただ横に寝ているだけ。

 そう、俺は抱き枕だ。


 何にもいやらしいことはない。

 俺はちょっとリアルな人形型の抱き枕なんだ。


 俺は、自分自身に暗示をかけるかのように、必死で自分をセーブした。


 最初はこの状況に圧倒され、誘惑に負けそうだった。

 けれど、亡くなった彼女のことを思い返すと、他の女性に触られて喜んでいる場合ではないと感じてきた。


 俺が理性と本能の狭間でもがき苦しんでいると、上で寝ていた紫水がのろのろと階段を下りてきたのだ。


 完全に目が覚めている様子はなく、そのまま部屋を出ていった。

 おそらくトイレだろう。


 俺も出来るなら立ち上がって部屋を出たいが、こうもぎゅっと掴まれていてはそれも叶わない。

 こうもすやすやと寝られては、起こすのも悪い気がするし。


 しかし、この状態では上手く眠れそうになかったので、スマホを触って眠気が来るのを待つことにした。


 俺はチャットアプリを開いて、じっくりと情報を集めることにした。

 これにあるトーク履歴をみれば、心火と皆の関係性や喋り方を研究することができる。


 俺は会話履歴を上から眺めていると、さっそく情報を得ることができた。

 といっても些細なことだけど。


 連絡を取っている人の中に、鬼龍といういかつすぎる名前をみつけた。

 俺はその人のアイコンの写真を見て少し驚いた。


 これって、沙理弥じゃんか。

 

 あいつ、あんな可愛い顔して本名、鬼龍沙理弥っていうのか。

 でも、彼女のたまに見せる冷酷な感じにはピッタリか。


 続いて、判明していなかった2人の人物の名前を知ることができた。

 それは心火の両親だ。


 母親が霧歌(きりか)で、父親が(かたり)という名前らしい。

 父親も若くてかっこよく、髪色が銀色だった。紫水は父親似なのか?


 分かっている事  〈追加〉〈更新〉


 その⑥

 沙理弥の苗字は鬼龍といういかついものだった


 その⑪

 若くて優しく、さらに色気が凄すぎる母親は虎頭霧歌という名前だった。


 その⑭

 単身赴任で家にいない、虎頭語という父親がいる。


 

 俺が情報収集にいそしんでいると、部屋を出ていた紫水が帰ってきてベッドに戻ろうとした。

 が、またそこで大問題が起きた。


「はぁ~、ねむー」


 朦朧とした意識で、紫水が心火のベッドに入ってきたのだ。

 つまり、俺の横だ。


 春乃とは逆サイドに彼女は寝転がってきた。


「……んー」


 紫水もまた、同じように俺に抱き着く。

 彼女は春乃と違い、強くは抱きしめないのだが、代わりに足を絡めてきた。


 まずいまずいまずいまずい。


 1人なら何とか堪え切れる気がした。

 しかし、絶世の美少女2人に囲まれては理性もはずれかける。


 両手に花すぎるだろ、この状況。


 男の本能が暴走し、今すぐにでも彼女たちを襲ってもおかしくはない状況だ。

 今はまだ抑え込めても、これが朝まで続くとなるとどうなるかは分からない。


 だが、俺はあることに気がついた。


 体が動かないのだ。


 それもそうだ。

 1人用のベッドに3人で川の字で寝ていて、さらに抱きしめられている状態だ。

 これでは、自由に身動きが取れない。


 それはつまり、俺がどうやっても彼女たちに襲い掛かることはできないということだ。

 もし乱暴にほどこうとすれば、さすがにどちらかは目を覚ますはずだ。


 紫水が来たことにより、まさかの事態は好転したのだ。


「さっきは、強く当たってごめーん」


 紫水が割とはっきりとした寝言を言った。

 さっきって、思い当たるとしたら、下着姿を見てしまった時か。

 もしかしたらこれ、海利に謝ってる?


 やんちゃそうなイメージだったけど、心の底では謝れる子なんだな。

 春乃と同じで素直じゃないんだから。


「……しんかー」


 今度は春乃が喋りかけてきた。

 二人とも寝言がひどいな。

 女子ってこんなに話すのか。


「…す…き」


 い、今なんて言った!?

 告白したよな、今。


 おいおい、寝てると感情が全部表に出てしまうのかこの2人は。


 春乃が心火にゾッコンなのは、嫌でも伝わってきていた。

 しかし、本人の口から言われるとこっちが恥ずかしくなってしまう。

 恋愛ドラマを見ているみたいだ。


 こんなに春乃は分かりやすいのに、虎頭心火の野郎は気持ちに気がついていないのか。


 体を借りている身であまり悪くは言いたくないけど、鈍感すぎの虎頭心火に少し腹が立った。

 お前ら、早く付き合ってしまえ!


 それから2人は、ちょこちょこ声を漏らしてはいたが、比較的静かに寝ていた。


 紫水の奴は間違って人のベッドで眠っている事に気がつくことなく、ずっと俺の傍で寝続けた。


 いやー、でもこれでようやく俺も眠りにつける。

 

 今日の疲れは、肉体的ってよりも精神的なものだ。

 特に事件が次々起きたせいで、脳が披露している。


 体はどうせ動かせないんだし、大人しく寝るかー。


 俺は美少女二人に挟まれながら、ゆっくりと目を瞑った。


 10分後。


「………………」


 って、寝れるわけないだろ!!


 俺は関西人顔負けのノリツッコミを、心の中で言い放った。

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