表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/17

第10話 若すぎませんか??

「行きますか」


「ああ」


 俺は変な汗をかきながら玄関扉のドアノブに手をかける。


 扉に鍵はかけられていなく、そのまま中に入ることができた。


「ただ……いま~」


 見知らぬ人の家にお邪魔するのに、ただいまというのは変な話である。

 誰かの体に入ってしまっているということが、異様なことだということを改めて感じた。


「おじゃましまーす!」


 続いて上がり込んだ海利が、俺よりも大きな声を出した。

 2人で喋っているときと声のトーンが違いすぎる。


「おかえりなさ~い」


 玄関の先から優しそうな声が聞こえてくる。

 母親だろうか。


 玄関には女性ものの靴がいくつも並べられている。

 綺麗に整頓されていたので、俺と海利もそれを真似して、靴を脱いでならべた。


 外見からでも伝わってきてはいたが、物凄く広々とした一軒家だ。

 きちんと掃除されており、埃一つない。


 全貌は分からないが、部屋数がかなりありそうだ。

 まぁ、5人で住むようだろうしこれぐらいは必要か。


 廊下は長く、玄関の近くに2階へ続く階段があった。

 俺が玄関に突っ立って、人の家をまじまじと見ていると、リビングと思われる場所から1人の女性がやってきた。


「あら、海利君。こんにちは」


 優しそうな声の持ち主は、見た目もほんわかとしていた。


 程よい肉付きをしており、例外なく美人で巨乳だ。

 胸がエプロンを突き出しており、こちらを誘惑しているのではないかと勘違いしてしまう。


 茶髪に近いロングヘアーで唇の右下にホクロがあり、色気が体中から溢れ出ていた。


「どうも、おばさん。少ししたら帰りますんで」


「そうなの? ゆっくりしていけばいいのに……。お茶ぐらい出すわよ?」


「いえ、ほんとおかまいなく」


 海利は友人の母親だというのに、率先して話してくれた。

 隣で俺が固まってしまっているからだろう。


 ある程度身構えていたはずなのに、虎頭心火の母親を見て俺は絶句した。


 若いのだ。若すぎるのだ。


 普通に考えれば、高校生の心火を生んでいて姉もいるということなので、40代ぐらいなのだろう。

 しかし目の前にいるのは、20代後半にしか見えない。


 体つきや声色から母親らしさはあるのだが、この人を姉と間違えてもおかしくない。

 やっぱり海利がいてくれてよかった。


「心くんどうしたの、ボーとして」


 あなたに見とれていたとはとても言えない。


「あー、なんかこいつ今日寝不足でずっとこの調子なんです。だから気にしないでください」


 すかさず海利がフォローをしてくれた。

 俺、こいつがいなかったらとっくに正体がバレていたのでは?


「も~うダメじゃない」


 ゆったりとした喋り方をした心火の母親は、心配そうに俺に顔を近づけた。

 そして、俺の目の下の部分を両手の人差し指で軽く触れた。


 じょ、女性に触れられてしまった。

 真里菜と交際していた以来だったので、一気に心臓の鼓動が速くなった。


「そう言われればクマがひどいような」


 彼女は俺の顔をまじまじと見る。瞼の下を抑えられて目を閉じることができず、数秒間彼女と目が合いっぱなしになった。


 っくそ、これで人妻とか卑怯だろ!


「ちゃんと今日は寝るのよ」


「は、はい」


 俺の返事を聞いた母親は、ニコッと笑ってリビングに戻っていった。


「はぁ、はぁ」


 俺はここで、自分が息を止めていたことに気がつく。

 全身が硬直してしまっていたのだろうか。


「だ、大丈夫か?」


「ああ、まだやれる」


 俺は息を整え、邪念を消し去った。

 彼女は虎頭心火の母親なのだ。

 俺には息子として接しただけ、それだけだ。


 しかし母親でこれだと、姉妹のハードルが上がってしまう。

 持つのか、俺。

 これからここで、彼女たちと一緒に住むんだぞ?


「お、友達くんじゃん」


 今度は階段から女性の声がしてきた。

 軽快な口調だ。


「ちょっと華蓮(かれん)さん、海利ですって。何回か会ってるでしょ」


「いい男の名前しか覚えないから」


「きっついな~。ていうか、今日休みっすか?」


「そ、大学生は平日も休めるのだ~」


 サバサバと答える彼女に、俺はあまり胸が高まらなかった。

 もちろん、彼女も美人だった。

 髪色が茶色のセミロングで、どことなく母親に似ていた。彼女よりも少し目が鋭い感じだな。


 緊張しない理由は、彼女の喋り方と恰好だろう。

 おそらく心火の姉である彼女は、赤色のジャージを着こんでおり髪がボサボサだった。


 色気が凄かった母親を見たせいか、その落差で高揚はあまりしなかった。

 息もできるし。


 それと、海利はいい男だ。


「あ、心火おかえり~」


「ただいま~」


 そんな感じで軽く挨拶をして、彼女はリビングへ向かった。

 男がいるのに尻をボリボリと掻いており、品性のかけらもない感じだった。

 母親とは、中身がまるで違うな。


 まぁ、こんな感じの方が親しみやすくて俺としてはありがたい。


「彼女は華蓮さん。確か大学4年っていってたな。あ、尊と同じぐらいじゃねぇか?」


 家族に聞かれないよう、こっそりと海利は話してくれた。

 俺は3年なので1つ上だが、この世界に来てから会った人で1番歳が近かった。


「そうだな。話しやすそうな人でよかったよ」


 学校では当然だがほとんど年下としか接しない。

 そのせいか。

 彼女の大学生っぽい感じがどこか懐かしくて、親近感が湧いたのかもしれない。


「じゃあ、2階行くぞ。人の家を俺が案内するのも変な話だが」


「苦労かけます」


 俺は色々と世話をしてくれている海利に謝りながら、あとに続いて階段を上った。


 分かっている事 〈追加〉


 その⑪

 若くて優しく、さらに色気が凄すぎる母親がいる。


 その⑫

 ズボラそうで飾り気のない、虎頭華蓮という大学生の姉がいる。

 ちなみに彼女は、俺と歳が近い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ