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私の執筆物語

作者: てと

サラッとお読みください!


会社の飲み会で酔っ払い、そのまま入浴した所までは覚えている。だが目が覚めたらなんだ、この状況。手が子供の手だ。足も、身長も五歳くらいの子供で孤児院のミーヤという名前の女の子になっていたのだ。


しばらくミーヤとして生活しているうちに、ミーヤの記憶を思い出す様になった。この世界には物語がない。歴史を記した本があっても、物語が存在しないのだ。最初は異世界特有の物語があると思い、シスターに物語をせがんだ。だがシスターは首を傾げ、物語とは何なのかと聞いてきた。周りの大人達に聞いても物語を知らないと言うのだ。


そこで思いついたのは私が物語を語ればいいのだと!!無いのなら作れば良い。私は孤児院で皆んなを集め、『不思議の国のアリス』を語り聞かせた。毎日良い所まで聞かせ、また明日と約束をする。私が語る物語に子供達だけではなく大人達も夢中になった。


そのうち私の物語を聞きつけた貴族が私を引き取りたいとやってきた。貴族の男の人は何度も私の物語を密かに聞きに来ていたらしい。


「ミーヤ、君のお話はとても面白い。是非、私達の家族にならないかい?」


「じょ、条件があります」


「なんだね?」


「……私の語る物語を本にして世界に広めて欲しいのです」


「ふむ、、、良い条件だ。必ず君の物語を世界に広めよう」


それからあっという間にこの貴族の家族となった。この男の人はマーク・リンベルというらしい。奥様はアンネ・リンベル、、、今日から私のお父さんとお母さんだ。アンネ様は子供が出来ない体質で、養子になった私を可愛がってくれる。



私はお母様やお父様、使用人にも物語を語る。シンデレラ、美女と野獣、雪の女王、眠れる森の美女、様々な物語を私が語り、執筆専用の人間がその物語を執筆する。


それが全部世界中で大ヒットしたものだから、お金が使いきれない程お父様から渡される。私の語った物語だから、私のお金だと言って。


ウハウハな人生だなと思っていたら、王宮に呼ばれてしまった。あれだ、悪役令嬢の物語も良いなと軽くぽやぽやとお父様の横で考えていたら、いつの間にか王様と謁見していた。


「ミーヤ嬢、其方は色々な物語を語るという。何か一つ私達に語ってくれないか」


王様の横には王妃様が目をキラキラとさせ、王太子のラルク様が無表情で私を見ていた。ラルク様の周りは王妃様の目よりキラキラしてる。王族だからか非常に顔が整っている。艶のある黒髪に赤い瞳が特徴的だ。


「分かりました。今から語るのは、悲しい人魚姫の話で御座います」


人魚姫を語り終わると王妃様やメイド達が涙を流しているのにギョッとした。やはり人魚姫は女の人の受けが良いからなあ。ラルク様は眉に皺を寄せ質問してきた。


「惚れた女を間違うなんて馬鹿な男だ。人魚姫もそんな屑を刺してさっさと海へ帰れば良いものを。何故泡になる選択をしたのだ?」


やっぱり人魚姫の良さは男の人には分からんだろうなあ。


「殺そうとしたのですが、愛した人を殺せなかったのです。ならば泡になり消えてしまいたかったのでしょう」


「もっと面白い物語はないのか」


私は男の子受けの良い物語をチョイスする。男の子……騎士、英雄……よし、これにしよう。


「これは平凡で臆病者の男の子が英雄になるまでの物語です」


「ほう?」


私が語たる物語に皆んなが聞き入り始めた。この物語は面白いと思ったら最後。次が知りたくて知りたくてどうしようもなくなる物語だ。そして良い所で話を区切る。するとラルク様は前のめりになり、次はどうなるのかと目をギラギラさせて聞いてくるが、流石につかれた。私まだ七歳よ。


「陛下、ミーヤも流石に疲れてしまった様です。今日の所はこの辺りで」


「うむ、そうだな。小さい子供に無理をさせた、すまぬ。ミーヤ嬢、もし何か困った事があったら私に頼るといい」


「有難うございます、勿体ないお言葉であります」


不恰好なカテーシーをとり、続きが聞けなくて不機嫌ラルク様にもカテーシーをとる。するとラルク様は私の前まで来て、私を見下ろしてきた。


「明日も王宮に来い。さっきの物語の続きを聞きたい」


お父様を見上げると優しい笑みを浮かべながら頷く。


「分かりました、約束です」


そう言って私はラルク様に小指を差し出した。ラルク様は少し考えた後、同じく小指を絡ませてきた。これは私が物語で広めた指切りげんまんだ。ラルク様は私の本を一応読んでいるみたいだ。


そして私達の長く続く関係が始まった。




ーーーーーーーーーー



「主人公が優しすぎる。こんな甘いやり方じゃいつ敵が反旗を起こすか分からない。徹底して殺すべきだ」


「良いじゃ無いですか、優しい主人公。恵まれた環境であつらえ向きの才能をもって、望んだ場所にいける人間には分からない、ラルク様とは正反対ですね」


「ミーヤ、お前も言う様になったな。俺を誰だと思ってる」


「え?自分の立場まで忘れちゃったんですかラルク王太子殿下」


ラルク様が溜息をつき、紅茶を一気に飲み干す。あれから十年、ラルク様や陛下、王妃様に様々な物語を王宮で語った。本の売れ行きもかなり上々で多分一生グータラ生活が出来る。


私はグータラ生活を所望する。だが、この鬼畜王太子殿下に目をつけられた私は、今日も今日もて王宮で執筆しながら物語を語る。もう一度言う、私はグータラ生活を所望する。


「婚約破棄にしようかなあ……浮気する婚約者なんて捨てて……。」


「お前、婚約したのか!?いつの間に……相手は誰だ!!浮気をする男など碌でもない!!今すぐ婚約破棄をしろ!!」


「してない、してない。物語の中の話」


「……そうか」


「何ほっとしてるんですか。私もそろそろ何処かへ嫁がなきゃいけないんですよ。もしかしたら物語の様になるかもしれないのに」


「……ならば、俺で良いではないか」


「嫌ですよ。私はグータラ生活を求めてるのです。妃になったらグータラ出来ないじゃないですか」


「出来るだけお前の仕事は減らす。だからいい加減俺の求婚を受け入れろ」


「嫌ですよ〜。上から目線での求婚なんて。さて、そろそろ帰る時間なので、お暇します」


何度も言う。グータラ生活で私は物語を執筆するのが好きなのだ。今後、私はラルク様の気持ちを受け入れるかどうか……私の物語は続く。



お読みくださり有難う御座います!

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― 新着の感想 ―
[一言] いや、ミーヤ嬢はラルクの嫁になるのではなく 心地よくぐーたらさせてくれる嫁をもらうべきでしょう!
[一言] 本の売上あるから、嫁がなくても良いのでは!嫁がなくても十分お家に貢献してる(๑•̀ㅂ•́)و✧ 面倒くさいしがらみいっぱいの王太子妃、元孤児を理由に嫌味祭りがあり得る王妃なんて苦労しそうな物…
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