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公安機密:事情聴取ファイル  作者: 文月獅狼
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File.2 後半

おかえりなさい。休憩は終わったの?あっ、ありがとう。いやあ~ジュース持ってきてくれる人なんて初めてだよ。警察では水しかもらえなかったもん。じゃあ続きやろっか。

 

6人目を殺した時に、男の人に声をかけられたの。神父だって言ってた。彼はニヤニヤというよりも、ニヤリという顔で私に話しかけてきた。一緒に来ないかって。一緒に来れば、私の望むすべてを与えるって。あの人の顔は不思議と嫌じゃなかった。それに、あの人の言う私の望むものが何なのか知りたかった。私の望むものはお母さん。警察への復讐。女の子に乱暴する男の断罪。神父さんがどれのことを言ってるのか。私はそれが知りたかった。だから私は行くことにした。


しばらく神父さんの後を追って歩いた。夜だったから周りには誰もいなかった。月がきれいだったなぁー。真ん丸なお月様を見ながら歩いてると、神父さんに声をかけられたの。私たちの前には車があって、それに乗りなさいって。私が乗ると続いて神父さんも乗った。運転席には白衣を着た男性が乗ってた。たぶんお医者さんだったと思う。その人と話す前に神父さんに目隠しをするように言われたの。身の危険は感じなかったから素直にやった。それからエンジンのかかる音がして、動き出した。それからまたしばらく車で移動すると、目的地に着いたみたいで、私は目隠しをしたまま神父さんに手を引かれて進んだ。長い階段をゆっくりと降りていった。それからまた少し歩くと止まって、体が浮くような感覚に襲われた。エレベーターに乗ったんだと思う。何階分か降りたところで、扉の開く音がした。そこでやっと目隠しを外すように言われたの。私が目隠しをはずすと、廊下があった。少し先で左に曲がるような構造になってた。私が神父さんのほうを見ると、3つのことを言ってきたの。食事は与えるからこの階から出てはいけないということ。そこの角を曲がったら鉄格子があって、鍵を渡すから内側からかけて、それを見つからないように隠すようにってこと。最後に、私の見覚えのある場所にサプライズを用意してあるってこと。それだけ言うと、神父さんは上の階に上がっていった。何のことだろうと思いながらも私は進んでいった。廊下を歩いて左に曲がると、言われた通り鉄格子があった。でもそれ以上に、私はその先を見て驚いちゃった。そこは私が入院してた病院だったの。


私は鉄格子を開けて中に入ると、もらった鍵を差し込んで回した。ガチャンっていう音を聞くと、もう出られないんだなって思った。それが終わると、次は鍵をどこに隠そうかなって悩んだんだ。なんとなく頭をかいてると、髪の毛が3本抜けちゃった。それを見て思ったの。とりあえずはこの3本の毛を編んで鍵に通して、首にかけてパーカーの中にしまっとこうって。重い斧を使うのに慣れたおかげで手の震えはもうなかったわ。だから今もこうして字が書けるし、三つ編みも簡単にできた。それが終わると私はまた歩き出した。はじめに見たのはあいつがいた部屋だった。扉の両側には警官2人の服がたたんであった。中に入ってみると、案の条あいつの着ていた服もたたんでベッドの上に置いてあった。同じ商品というわけじゃなかった。血がついていたから、あいつがあの時着ていたものだってわかった。部屋を出てまた歩いていると、ナースステーションが見えてきた。小さい頃からよく見てた所。お母さんがいつも働いていた所。お母さんがいつもいた所。


お母さんの座っていたいすや使ってた机もちゃんとあった。机の上にはお母さんの看護服がたたんでおいてあった。確かになつかしい場所だったけど、見覚えのある場所とは違ったの。だから私は進んでいった。また少し歩くと、私のいた病室があった。その先、廊下の突き当りには私が斧を取った消火栓があったの。後であの頃と同じようになってるのか見ようと思いながら私は病室に入った。私の使ってたベッドは4つあるうちの右の窓側のだったんだけど、他のがカーテン開いてる中私のだけきれいに閉まってたの。神父さんの言ってたサプライズってのはこれだろうなって思って、私はカーテンを開けたの。そしたら、きれいに磨かれた柄が私と同じくらいの斧が置いてあったの!私はそれを手に取ったとき、神父さんはこれを使って殺しを続けなさいって言ってるんだと思ったわ。


私は斧を持って病室を出ると、消火栓の所まで行って開けてみたの。そしたら一枚の紙が出てきた。しゃがんで拾って見てみると、男の写真と説明が書いてあった。ニヤニヤとした顔でこっちを見ている男は何人かの女性を襲っては殺していた。私は今すぐにでも殺したくなったけど、もう外に出ることは許されない。私は立ち上がると、消火栓の中を見てみた。そしたら斧の設置してある部分が空いていたの。私は今まで使ってた斧をきれいに拭くと、その空いている所に置いてふたを閉めた。その時、どこかでエレベーターが止まる音がしたの。そこで私は全部理解したわ。神父さんの言ってた私の望むものっていうのは、エサの安定した供給なんだって。私は思わず口角が上がっちゃった。


……このジュースおいしいね。オレンジかな?私オレンジ好きだよ。よく私の好み分かったね。カルテに書いてあったのかな?


さてと。これが火傷と殺人の理由だよ。長くなってごめんなさい。……お腹を裂かれてた理由?大丈夫?また長くなるよ?……まあ、仕事だもんね。じゃあ話すよ?


9人目を殺した時には、私は他にも誰かいるのかが気になってたの。だから神父さんが食事を持ってきたときに、聞いてみることにしたの。そしたら、どうやら他の階にも私みたいな人がいるらしかったのね。ちょっと迷ったけど、私はその人たちのことを神父さんに詳しく知りたいって言ってみたの。あまりいい顔はしなかったけど、次の日の食事の時に資料も持ってきてくれた。


あそこには5人の人間がいて、男性が4人に女性が1人いたの。皆それぞれ理由があるらしかったわ。その中でも、とある人が気になった。彼と私は成り行きも見た目もほとんど一緒で、違うところといったら性別と使ってる武器ぐらいだった。あと火傷した箇所も違ってたな。彼は上半身だけだったけど、私は前進だったもん。でもそれくらいで、あとは本当にほとんど同じだったの。私は彼にとても惹かれたわ。彼についてさらに調べたの。どうやら彼は嘘が大嫌いみたいだった。だから私は彼に会えた時に間違えないように自分の舌を切ったの。だからしゃべれないんだよ?


他にも、彼は幸せな人が絶望を感じるときに快感を感じるらしかったの。だから幸せそうな人を見るとつい殺したくなっちゃうんだって。私も性犯罪者が期待と股間を膨らませて私に襲い掛かってきたのに殺されるとわかって絶望する顔は好きだったよ。きっとお話しできたら楽しいだろうなぁって思って、毎日彼のことを考えながら男たちを殺したわ。まあ私はしゃべれないんだけどね。でも彼は字が読めないみたいだったの。その辺を先に調べとくべきだったなぁ~。


でも現実は、またもや残酷だった。その日も、いつかは彼に会えると信じて13人目を殺したの。もう日数は分からなかったから、数えるのは殺した人間の数だけだった。殺した男の服を取って、たたんで、その人が死んだ場所に置いておく。もともと私が殺した人間の服が置いてあったから、なんとなく同じようにしてたの。あと、いつの間にか首を切って殺すようになってた。たぶんせめてもの慈悲だったんだと思う。その日はもう疲れてたからさっさと寝ようと思って、死体をいつも通り鉄格子の所に持って行こうと思ったんだ。だけど死体を引きずって持って行こうとすると、エレベーターが止まる音がまた聞こえたの。いくら疲れていても楽しいことはやりたかったみたいで、私は急いで持ってった後に様子をうかがったわ。そしたら、そしたらね?夢にまで見た彼がいたの!私たちは自分の階から出ちゃいけないから、現実かどうか疑ったわ。でも別の意味でも現実か疑ったわ。彼は、女の子と一緒にいたの。


それでも私は彼にいろいろと話しかけた。彼と同じ境遇にいたこと。彼といろいろと似ているところがあること。彼にあこがれていること。彼のために舌を切ったこと。紙に書いた文字を女の子が読んで彼に聞かせる。私は彼の反応を待った。女の子が最後まで読み切ったとき、彼は一言だけ言い離ったの。


「気持ち悪ぃな」って。


その時私は目の前が真っ暗になった。テレビのスイッチを切られた、そんな気がした。彼の心にはあの女の子しかいないんだって思った。もう私の入るスキはないとわかってた。でも我慢できなかった。彼の首めがけて斧を振ろうとした。でもその前に、彼の鎌が私のお腹を裂いたの。首にかけてた鍵を奪うと、彼はもう行ってしまった。


私はナースステーションから糸と針、包帯を取って応急手当をしたの。そしてエレベーターに乗って上に向かった。彼に認められない今、もう私がここにいる意味はなかった。私は神父さんに言って外に出たの。


そこからはあなたたちの知ってる通りだよ。倒れた私を発見して病院に連れて行った後、警察に連れて行った。そして今にいたる、と。


長くなって本当にごめんなさい。また会えるのかな?今度はあなたの話を聞かせてよ。


聞き取り終了。


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