2 エリヤ
「ここより先に行くと地獄です。これ以上行ったらもう、戻ってこれないので注意してください」
という、警告のある看板を賢者を読み上げて、そして僕は地獄の橋を渡った。賢者が先を案内して、僕が着いていくという、順番だった。僕は看板にある「後ろを見てはなりません。塩の柱になります」という、警告を決して忘れなかった。旧約聖書にも書かれてあることだからだ。地獄の橋は死者がおびただしいまでに地獄の番犬――ケルベロスに喰いちぎられていた。僕はすごい臭いのする中進んでいった。橋の途中でケルベロスが賢者に噛み付きそうになったのを、賢者は魔法でケルベロスを眠らせた。
「さあ、急ぎましょう。まだ、あなたは死んでいないのだから」
「僕は死ななきゃならないの?」
「ええ」
「なんで? 何か理由でもあるの?」
「復活の日を祝うためですよ」
そして賢者はケルベロスの後ろで透明のローブを被り、そして起き上がったケルベロスが僕を噛み付いて、僕、死んだ、と感じるのをもう誰に言われるまでもなく、わかっていた。
起き上がったとき、油を注がれたもの、と一目でわかる人が僕の前で涙を流していた。あなたはキリストですか? と僕が問いかけるまでもなく、油を注がれたものは賢者のいないその天国で天使たちが天堂の歌を歌っていた。僕は起き上がった。キリストが何か口を開けて口を動かした。
「復活を、エリヤ!」
その瞬間、赤の血液が空から降り注いだ。僕はもう、息が出来なくなっていた。油を注がれたものは魔法を掛けようとすることもなかった。だから僕は死ぬ瞬間を待つだけだった。もう、何もしたくなかった。ああ、メシア!




