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あの世RPG 阿部晴明、神に背く。  作者: 佐藤 雨音
1/1

始まり

 「それがあなたの人びとへの考えと、とる道ですか。私は人々がどんなに愚かでも、信じて守りたいと思います」 阿部晴明あべのせいめいは神を見据えて真直ぐに答えた。

 

 「愚かよのう晴明、それが一体何になるというのだ。邪悪な魂は全て我が浄化するのだぞ。我に歯向かう事など到底かなわぬのに、この世は我の一部にすぎない、お前とてだぞ。我に歯向かう者は誰であろうと容赦なく消滅させ浄化するだけだぞ」


 晴明は初めて神をにらんだ。「私は、私のやれる事を命がけでやるだけです・・・・・・・・」




 K県A市のとある住宅街、街灯もまばらの薄暗い道で、一人わめいている少年がいた。「てめぇいつまで憑いて来るだ迷惑なんだよ。いい加減向こうに逝きやがれ」

 

 周りにいる人は気持ち悪がり腫れ物でも見るような目をして通り過ぎる。

 

 少年が口を閉じ、静かになった次の瞬間一気にその場の空気が凍りつく程寒くなった。「てめぇどういうつもだぁああっ」少年が叫んだ後薄暗い中にぼやっと影が浮かび上がってきた。


 周りの人には何が起こっているのか理解できず、おののき戸惑っている。サラリーマン風の男の足がすくんで動けなくなった瞬間、「お前だぁー」何処ともなく低い声が聞こえたと同時に影はサラリーマン風の男へと重なっていった。

 

 男の顔からみるみると生気がなくなり、目から光が喪われた。「やっぱり肉体は良いなぁ、力がみなぎってくるぅ。それに、壊れても乗りかえればいいし。けっけっけ。どういうもこういうも無いね、キミを殺しに来たのさ、さあ死んでくれるかい」


 少年の顔が険しくなった。いや、哀れんでいるのだ。「お前かわいそうだな、死してもなお人を憎んで、傷つけてるなんて。あっちに逝ったら楽になれるのに。俺が手伝ってやるよ」少年がそう言葉を発した直後男の形相はみるみる険しくなった。「てぇめぇごときがぁっ俺様を成仏させよってぇかぁあああっ。俺がてめぇを成仏させにきてやったのによぉ」

 

 「なんで俺がてめーに殺されなきゃなんねーんだよ」少年は怒りをあらわにした。

 

 「お前が阿部晴明あべのせいめいの生まれかわりだからよ、あの方の邪魔にならない様、始末しに来たのさ。」少年は何を言われているのか分からない表情で、「てめぇ何言ってんだ、俺は阿部だがよ、はるあきってんだ。人違いだな、分かったらとっとと成仏しやがれよ」

 

 男は底の見えない暗闇の眼を少年に向けにたぁっと笑って言った。「そうかぁお前まだ目覚めてないのかぁひひひなら俺一人で簡単に殺れるなぁ、じゃあ目覚める前にさっさと殺っちまうか」そう言うと同時に男は手をかざした。

 

 晴明はるあきは2m程跳ばされブロックベイに叩きつけられた。「うがぁっ」大きな声が漏れた。一瞬意識を失いかけたが、なんとか保つことができた。晴明は男を睨み付けた。男は一瞬怯んでおののいた。《流石晴明の生まれ替わりだけあるぜ、目覚めてなくても霊力ははんぱねぇ睨まれだけで身体に(霊体)激震が走りやがった》更に男は手の平に力を込めると、晴明はブロックベイに押さえつけられ、後頭部のブロックベイからひびが走り出した。


 晴明の顔がみるみる蒼くなり、目は充血し鼻血が流れだした。「てめぇなめんなよ、別に指で印を組まなくったって、お前らを浄化さられるんだぜ、だがよその前に一つ答えろ」男はめんどくさそうに 「何だ、そろそろ限界だろ早く頭潰れろよ」少年は意識を保ちながら「なんでその男に憑依したんだ。そのまま姿隠して俺を殺っちまっても良かったろ」


 男は呆れた顔で晴明を視た。......「はぁっ本当にまだなんにも知らねんだな。いいだろ、冥土の土産のに教えてやる。まあ冥土なんてないけどな」男は少し力を抑えた。晴明の身体が少し楽になった。「早く教えろ。成仏させちまうぞ。」


 男は晴明を睨み付け「ちっ」と舌打ちし、「俺たち悪霊自体そんなに力があるわけじゃねえ、せいぜい耳元で囁くぐらいが関の山さしかし、悪意のある人間はパワーの源さ、憑依することで俺達の霊力は10倍にも100倍にもなる。それはあいつや、あの方だって例外じゃねえ。」


 晴明は少し男を見上げた「あいつやあの方ってだれだあ」男の表情は険しくなり「おっと、お喋りが過ぎた。もう良いだろ死ねええええ」男が手に力を込めようとした瞬間、男の顔が一気にひきつりその場に倒れ込んだ。「くそっ、なんだこの感覚は」


 晴明はブロックベイから離れて後頭部を押さえていた。「おおっいてぇ」晴明は倒れ込んでいる男に近付きながら「話に気をそらせられたお陰でパワーが弱くなって、念が送りやすくなったぜ、あのままだったら、ほんとに逝っちまうとこだったぜ」少し安堵の表情を浮かべた。


 男は頭を上げ睨み付た。「てめぇ騙しやがったな、気を反らさせるためどうでも良い質問しやがったなあ」

 晴明は男の側でしゃがみ込み、男の顔を覗き込んだ。「力を弱めさせる意図はあったがよ、別にどうでも良い質問って分けじゃねえぜ。さっき言った、あいつとあの方ってのはだれだ。」


 男は晴明を見て応えた「そんな事はどうでも良いさ、どうせ直ぐに次の刺客がお前を殺しに来る。素直に殺された方が身のためだ。いずれ自分自身と葛藤することになるぜ。けけけけけ」


 「てめえ何言ってんだ。聞かれた・・・・」


 男の身体から影が抜け宙に表れた。晴明は影に向かって、「成仏しろよ」と念を送った。影は最後の力を振り絞って叫んだ。「嫌だーあいつの元へ逝きたくねぇーたすけ・・・・」影は消滅した。


 晴明は思った。《本当に成仏出来たのだろうか》しかし、他の物の心配してる状態でもなかった。後頭部から血液が大量に流れ出していた。



 少し離れたところで二つの影が様子をうかがっていた。「あの野郎一人で抜け駆けして、あっさり消滅させられやがって、やっぱり馬鹿は弱いな。次のは俺が殺ろう。大分弱ってるし楽勝だろう」


 もう一つの影は首を振り制した。「やめておけ朱雀、我ら四獣士で闘えば勝機もあっただろうが、覚醒していないといえ陰陽師の安倍晴明に一人ずつでは歯が立たん。先程の白虎とて我らと同等、並の人間なら百人、千人ならたやすく殺せただろう。」そう諭され朱雀はぐっと堪えた。


 「しかし玄武よ、何であのお方は今覚醒もしていない晴明を気にされているのだ。所詮は人間七、八十年ほっとけば勝手に死ぬだろう」

 「朱雀よ、お前はマヤ暦を知っておるか。」

 「ああ、2012年にマヤ暦が終わり、世界の終焉を向かえるとか言ってたやつだろう。くだらねぇな、それがどうした」

 「それをマヤ人に広めたのがあのお方だ」

 「なに、どう言うことだ。」

 

 「あのお方は色々な文明に知恵を授けおられる。知識は直ぐ邪悪に染まるからな、あの暦の2012年は終わりではなく、新しい周期の始まりを意味する。新しい時代への。そして時代が動きだした。悪と善との最終決戦が、晴明以外にも数名が輪廻転生を遂げている。その者達が敵となるか味方となるか見極めなければならない。」


 朱雀は玄武をみた。「なるほど、敵になるなら殺せと言う訳だな」


 「そうだ、しかし覚醒を遂げてなければ意味がない、出直すぞすぞ朱雀」そう言って玄武はその場から消えた。朱雀も晴明を睨み付け「待ってろよ安倍晴明、殺しに来てやるからな」と言い残しその場をあとにした。

 

 一人の少年が大きな戦いの渦へと巻き込まれていく。















 




 


 


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