Mission3:出逢い-1
建物の中は、薄暗いオフィスのようだった。
明るい社内、が売りの、今勤めている会社とは全く違っていた。
………会社………どうなるんだろう………。
私、自首しなくていいのかな……?
蓮司を刺しておいて、自分だけ助かりたいなんてムシのいい話、あるわけない。
むしろ自首したいくらいだ。
「レイ様がお戻りになるまで、こちらでお待ちください。今お茶をお入れします」
「あの……っ」
思わず声をあげてしまった。
「……はい?」
「あの、私、自首しなくていいんですか?!ひ、人を刺したのに……」
自分で言いながら、自分がやった事実があまりに恐ろしくて、目が潤んできた。
そんな私にも彼は表情を変えることなく、
「レイ様にお話しください。そういった話は私の一存では何ともできませんので」
そう言うと、彼はティーカップを置いて部屋を出ていった。
何も口に入れる気になれず、ひたすら部屋を見回していた。
目を閉じると、蓮司を刺したときの感触や光景が体に蘇ってくるから………
1時間ほどして、部屋の扉を開ける音がした。
身構える体力も精神力もなく、ただ顔を音のした方向に向けただけだった。
入ってきたのは、さっき路地で見た男だった。
黒いスーツにストライプのシャツ。
ネクタイのない彼の恰好は、歌舞伎町にいるホストと言われても納得してしまうようなものだった。
黒い髪に……寂しげな、だけどキレイな瞳。
私を一瞥した彼は、その端正な顔を崩すことなく、窓辺へ寄って外の風景を眺めた。
何も言わずに煙草をはさみ、火をつけた。
その少し伏し目がちの目に前髪がかかり、なんだか妖艶で危険な香りを放っていた。
あんまり黙ったままだったのでいたたまれなくなって、私は口を開いた。
「あの……」
「名前は」
私の声に被せられた声はやっぱり妖しい響きをもっていて、戸惑った。
「は……」
「名前は何だ」
「……茅島美月ですけど………」
そう口にした瞬間、その男の顔は驚愕の表情に変化した。
慌てて煙草を灰皿に揉み消し、こちらにゆっくり歩み寄ってくる。
「何といった……?」
じりじり近づいてくる彼とは逆に、少しずつ後ずさる私。
「茅島美月です……けど………」
「"カヤシマミツキ"?!お前、今そう言ったのか!?」
彼のキレイな瞳に、私が映る。
「それがなんなんですか…っ」
わけもわからず壁まで詰め寄られる。
彼も彼で、わけがわからないというような顔をしている。
一体なんなの??




