Mission2:逃亡-2
車の窓が下がった。
「た、助け、て」
残る力を振り絞り、車体にしがみつく。
黒い車の窓は特殊加工されていて、外からは中の様子が全くわからなかった。
「助け……」
「レイ様から伺っております。どうぞ中へ」
ドアが開かれ、中の人物が手招きした。
私は助かりたい一心で、知らない車に乗り込んだ。
そのとき、私の運命の歯車は、見えないくらい微妙に、しかし確実に、ずれて動き出した―――――。
「出して」
低い、少し威圧感さえ感じられる声に命じられ、車はゆっくりと前に進み出した。
「あの………さっきの若い男の人、置いていっていいんですか?」
私が怖ず怖ずと話し掛ける。
「そう命令されました。あなたは何も心配せんでよい」
隣に座っていたのは、黒いスーツを纏った初老の男性だった。
「……ありがとうございました」
「命令だから従った。それだけです」
何でこんな年配の人が、あんな年端もいかない人の命令を忠実に守るのだろう。
さっきの人は、それほど力のある人なのか……?
「……今から『本部』に連れていきますので、守秘義務のため目隠しをさせていただきます」
『本部』……?
私、一体どこに連れていかれるんだろう……?
しかし、さっきの恐怖から抜け出れた安堵感から、力が抜けてふいに涙が出てきた。
「……蓮司………」
涙を拭う力ももはや残されておらず、ただひたすら左手に光る指輪を握りしめて涙を流していた。
「……早く泣き止みなさい」
隣にいた初老の男性が、落ち着いた声で言った。
この一時間あまりの出来事から受けたショックから、涙を止めるなんてもはや不可能だった。
うずくまったまま頭を振ると、隣から電話をかける声が聞こえた。
「………もしもし…はい、さきほどの女性ですが……えぇ、目隠しも無理だと……はい………はい、わかりました」
ピッという電話を切る音とともに、こちらへ向き直る衣擦れの音がした。
「レイ様の許可がおりましたので、目隠しは控えます。ただし、許可するまでそのままの姿勢でいてください」
うずくまったまま頷くと、彼は小さく溜息をついて口を閉じた。
私は、これからどうなるんだろう………。




