Mission1:罪-3
自分の手についた赤黒い液体をみて、それが蓮司の血であり、自分が持っているのは包丁であることを、瞬時に悟った。
「うそ…………蓮司………」
包丁を持つ手が柄から離れ、蓮司は床にゆっくり倒れた。
「蓮司!……私、何てこと………」
パニックになって泣きじゃくる私の頬にそっと触れながら、蓮司は微笑んだ。
「………ビビらせて…ごめんな。………俺、美月を殺そうなんて、思ってなかった…」
「だったら、なおさら私のせいで……っ」
「泣くな…………俺、銃の密輸をやってたんだ………。《D》っていう組織と組んでた……」
息も絶え絶えになりながら必死で話そうとする蓮司。
もうしゃべらないで、という私の言葉も無視し、私の手を握りしめながら話し続ける。
「………けど、今日《D》のところに行ったら、俺を口封じで消すって、話してるの聞いちまって…………。俺といたら、美月まで狙われるにちがいない。…………そう思って………」
「けど、美月見てると、俺からはどうしても別れを切り出せなかった…………。だからこういう風にすれば、美月も………別れてくれるかなって………」
衝撃のあまり口のきけない私は必死で、そんなことない、と首を振り続けた。
そんな私の涙を、蓮司は震える指でそっとすくった。
「逃げろ……美月………。《D》には、絶対に関わるな………。俺のことを聞かれても、知らないフリをしろ…………」
外では雨が、激しく窓にうちつけていた。
「いや…私もここに残る!それがダメなら自首する!」
「ダメだ。…………これだけは、言っとく。…………俺は、お前に刺されたのは全く恨んでない。………《D》に殺されるより、マシだ………」
私の目から落ちた大粒の涙を笑って拭いた。
「………こんな奴で、ごめんな。…………愛してる、美月…。………鞄に、箱が入ってる…。貰ってくれ………」
鞄を開けると、白い箱があった。それを開くと、ダイヤの指輪が入っていた。
「………蓮司…」
「………早く行け…」
「蓮司…」
「早く!!」
蓮司の指輪を嵌めると、蓮司の唇にそっとキスをし、涙が流れるままに部屋をあとにした。
愛しい恋人の後ろ姿を、この上ない優しい表情で見送った蓮司は、静かに包丁を握りしめ、自らの体を貫いた―――――。




