田中省三 70歳 筋肉痛に苦しむ
田中正造は翌日目覚めた時に、全身が強張っていた。
「美佐子、美佐子早く来てくれ」
「何なのですか」
「痛いんだけど」
「それがどうかしたんですか、死ぬわけではないでしょう」
「とにかく今日は一日寝ているから、朝ご飯はサンドイッチにしてくれ。」
「筋肉痛は寝ていても治りませんよ。風呂でも入ればいいのではないですか。」
「いやダメだ。おやつは桃の缶詰にしてくれ。キンキンに冷やしてな。俺は病人だから」
「いつから筋肉痛が病気になったのですか。」
しかし昼に目が覚めてしまった。
やはり寝て食べるのは良くない。今日は軽く鍋焼きうどんにしてもらおう。
しかも食事をしている間に布団は仕舞われてしまった。しかも強制的に入浴させられて。
だが、すっきりさわやかなのだよ。
「あなたは勤められるのですか」
「そのつもりだよ、賄いは旨いし」
「賄い飯以外に感想はないのですか」
「いや、仕事は色々大変だったのだが、初日だから仕方がないではないか」
「それは上司が判断することでしょう。もうわかりました、家にいてください」
「いや、俺は行くぞ。飯が旨いし」
「あなたが行きたくても向こうが断ることもあるんですよ」
「だけど飯が旨いのだよ。大人数だし炊き立てだから。美佐子は二日目の飯を出すではないか。やはりご飯は炊き立てでないと」
また美佐子が豹変した。どうして食べ物の話になるとこうなるの。事実を言っているだけではないか。
「二人で住んでいるんですよ。普通の人は三合くらい炊いて冷凍しているのですよ」
「あれは冷凍臭くてダメだ」
「あなたが、毎回一膳しか食べないのなら量がわかるのですよ。だけど先日は私の焼しゃけまで奪って四膳も食べたではありませんか。どうすればいいのですか」
俺もどうすればいいのだろう。