美化の始まり
どうも、クズでございまぁす!最近、赤毛のおっさんがつきまとってきてうざいです!!
「ふーふふんふー♪」
「…………。」
《ブチ》
「あ!!折角編んだのに!」
「編んだのにって……首吊り縄だよな。コレ。」
「それが?」
「……………はぁー……」
西の森抜けて、数日経ったが俺の邪魔ばかりしてくるライゴウさんだ。今だって、折角拾ってきた蔓で縄編んで首吊り縄作ったのに見た瞬間千切りやがった!馬鹿力めぇ!!!
「ちったー死ぬ事から離れたらどうだいよ。」
「俺は、ゾッコンなの。依存体質だしね。」
「あー…」
「ちょっと、何納得してくれちゃってんの?そこは優しく『クズ君そんなことないよぉ〜でも、私に依存しちゃうクズ君もあり、かな?』って照れる女の子を献上して俺を慰めろよ。苦しゅうない。」
「…めんど。」
「俺のボケを三文字で終わらせやがった。」
しかも、ご丁寧にマジで面倒くさいと思ってる目線まで送ってだ。随分と俺の扱いに慣れてきてる。このまま、俺の自殺も見送ってくれねえかな。
「お前さ、なんでそんな死ぬのに固執してんだよ。」
「…俺も知らね。」
「は…?」
いや、違うな。
「理由は忘れちまった。」
「忘れるもんなのか!?」
「覚えてねえんだもん。でも、俺は死なねえといけないって事だけはっきりと覚えてる。」
「……うわ」
「まぁ、引くよね。」
俺は、この世界じゃない世界の人間だった。何をしていてどうしてこうなったのか。自殺した事は覚えてる。無駄な知識も覚えてる。好きだったのかよく分からない物が多いのは不思議な事だが。俺ってアニメやゲームとか好きだったけ?でも、すげえ大事なもんな気がする。
「気になんねえのか?自分が死にたがる理由とかよ。」
「なんないね。」
「………………。」
「そんな異常者を見る目で俺を…見て!!」
「はぁ…(この馬鹿が魔導師で死にたがりか…キャラ濃くね?)」
眉間を押さえるライゴウさんを余所目に俺はただ、見てのポーズで眼前に迫っているものにワクワクを募らせる。
「!」
「街だね。」
「やっとか…なんか、街見たら安心でドッと疲れが出たぜ。」
「ライゴウさん…苦労してるんだね。うんうん。」
肩に手を置いて労わりの声をかけたら、主にお前の自殺止めるのになって強烈な目線を向けてくるが、俺は華麗にスルーして街へ足を向けた。
「今回は、どんなお宝があるかな。」
「……俺は、ギルドで金稼ぐわ。」
ギルドと言うのは、管轄にある地域の者達の依頼と環境を管理する組織だ。地域の者達からの依頼やギルド側からの現地調査の依頼、増え過ぎて弊害となってしまったモンスターの討伐、管轄地域の住民の生命に関わるモンスターの撃退or討伐etcetc…
それぞれランク別にされており、ギルドにハンター登録をしたハンターと呼ばれる謂わば何でも屋に近い者達が依頼を遂行する。依頼をこなしたら依頼人から依頼に見合った報酬が出る。勿論、ランクが高いほど危険度が増すので依頼料も高い。
「ふーん。ライゴウさん、ハンターだったのか。」
「あ、お前登録してねえの?」
「うん。」
「…え…金どうしてんだよ。」
「俺は魔法使いですぜぇ〜そりゃストリートマジックで稼ぐさ!」
そこまで利益は無いけどね。俺は、食事が嫌いなので食費にお金は使わないし、不眠症もあるので宿取らない時のが多い。服を買ったり乞食にあげて消えてくのがほとんど。
「ハンター登録…」
「しない。」
「…え〜パーティ組もうぜ。」
「……だって、討伐とかしたくねえし。」
「討伐以外のでやればいいだろ。採取や街の人達の手伝い、撃退。」
「…………はぁー…俺が突っ込んで死にに行くとか考えないの?」
「それは、俺がなんとかしてやるって。」
ほぉー頼もしいね!ぶん殴りたい。この笑顔。
うーん、この際やるか。死の選択が増えたと思っとこう。
「わかった。いいよ。」
「っしゃぁ!コレで回復役ゲッチュ!」
なるほど、ソロでずっとやってたから回復役が欲しかったのか。それならそう言えばいいのに。
ライゴウさんの後ろについて、この街のギルドに入る。受け付けのお嬢さんが愛想の良い微笑みをこさえて一礼。
「ようこそ ボウガラ国クモリ市ガイガ街区間のギルド“ヤマダサン”へ。」
「…くひっ」
「?…ハンター登録一人と俺は依頼を受けたい。」
「承りました。ハンターライセンスをご提示頂けますか?」
「ん。」
「はい。ランクAのライゴウ=クレナイ様ですね。あちらの掲示板より依頼をお選び下さい。」
「ありがとよ。」
へぇーランクAってすげえじゃん。ランクはEからSまでの6つのランクが存在して、Sの下がA。
「ライゴウ様のお連れ様は、ハンター登録ですね。少々お待ち下さい。」
何かを用意する受け付けのお嬢さんをぽけーっと眺めながら、待つ。出されたのは、書類とカード。
「こちらの書類にサインをお願いします。こちらのカードには項目にチェックをお願いします。」
「はい。」
この世界の文字でサインして、カードの項目を確認してチェックを入れていく。まぁ、職業とかそんなん。書いたら、受け付けのお嬢さんに渡して…登録料を払って登録完了。次にランクを決めるものを渡された。
「こちらに魔法使いのお方は生命エネルギーをお注ぎください。」
「あ、はい。」
力量を計るのか。随分と自由にやらせてもらってるけど目視出来るようにしたらどんな感じになるんだろう。体温計の様な形の測定器に生命エネルギーを注ぐ。
生命エネルギーとは文字通り生命体の生命活動を行う力のこと。魔法使いは魔法を発動させるのにその生命エネルギーを消費する。難度の高い魔法ほど、生命エネルギーの消費が激しい。勿論、生命エネルギーを消費すれば体と心臓に負担がかかり、死に至るケースは非常に多い。
説明はこんぐらいでいいかな?
「………………。」
「………………。」
「………………。」
「………………。」
遅い。
「あ、出ました。」
「ありがとございま……す…」
「?」
いきなり、受け付けのお嬢さんが石化したように固まってしまった。
「?」
「しょ、少々お待ち下さい!」
落ち着いていたお嬢さんが突然慌てだし、奥に引っ込んでしまった。やだぁ〜変な結果だったりしてぇ〜。
「あれ?クズ、受け付けの嬢ちゃんは?」
「なんか、奥に引っ込んでちゃった。」
「ああ?」
なんでって聞かれても、俺も分からん。
そんな会話をしてたら受け付けの奥の扉が開いた。先程のお嬢さんが元どおりの微笑みを携えて戻ってきた。一人引き連れて。俺だけに見えてる幽霊とかじゃないよね。なんか顔色悪いよ。
「クズ様、お待たせいたしました。」
「君ですね。測定器で計測不能を出したのは。」
「計測不能だってよ。お前何したんだよ。鬱度?」
「それ自信あるけど、多分魔法使いの力量。」
「あー…」
「話してもいいですか?」
「ぁすみません。どうぞ。」
話によれば、測定器の色で魔法使いの力量をランク付けするらしいが、俺の色は黒だったらしい。測定不能の色ということだ。今まで、出た事がない事故に受け付けのお嬢さんは焦ったんだろうね。ごめんね。
「それで、測定不能ではランク付けが出来ないので実際に実力を人の目で見極める方法に移行させて頂きますが、よろしいでしょうか?」
「ぁはい」
「ランク付けをさせていただく私、ギルド・ヤマダサンの筆頭魔導師ベーレゼール=エンテ=ゴルレバでございます。」
「筆頭魔導師…」
「ギルドで魔法に一番精通しているのが私なのです。」
「同じ魔法使いか。」
薄紫のワカメみたいにうねる髪を持つギルド構成員。顔色はやはり、悪い。しっかり、食べてるんだろうか。ベーレゼールさんについていくと、ギルドの演習場みたいなとこに出た。
「……あれ?ライゴウさんなんで居るの?」
「保護者として。」
「オレ オマエ タニン 。 クソ ワロタ 。」
「見るっていうけど、何見んの?」
スルーですか。街に入る前に華麗にスルーした俺への仕返しか?
でも、確かに気になるな。何見んの?ベーレゼールさんが、タレ目がちの目をニコッと歪めて楽しそうに説明してくれた。
「今出来る範囲で最大の魔法を見せてください。」
「被害が出ないもので?」
「勿論。攻撃特化の魔法でもキープ可能であるのなら構いませんがね。」
「おおー!なんかワクワクするなぁ!」
俺は、今何処まで出来るんだろうな。あんまり考えてなかったし。
《ブオン》
「!…おお……美しいロッドですねぇ。」
別に使わなくても出来るけど、かっこいいでしょ?
「…ふぅ……行くよー」
「どうぞ。」
俺は、結構軽いノリで披露した。そう…友人に拾った綺麗な石を見せる感覚で。いつものようにロッドで無駄な動きを入れて、天に向けて掲げる。これも全部無駄な動き。別に動く必要も掲げる必要も無い。ただ俺のノリ。
「“ゲリラ豪雨”」
「…あ」
《ポツリ…ポツポツ、ポツリ》
《ザァーァー》
「「………。」」
演習場にピンポイントでゲリラ豪雨を降らす。まだまだ行くよ。雨粒を飛ばしてロッドを一振るい。
「“一時停止”」
《ピタッ!》
「!?…コレは」
「なんだ?」
「…時が…凍結されたようだ……」
空から落ちてきていた水滴全てをその場で停滞させる。まるで時間が止まった様にだ。
「“巻き戻し”」
《スゥ…ピチャ》
空中に停滞する雨粒も地に水溜りを作った雨粒も全てを空の雲に逆再生の如く戻していく。
「“散れ”」
水を戻した雲を散らして消せば、俺の心臓は膨大な再生エネルギーの消費による負担で一時停止するも動き出す。止まればいいものを…。ロッドを空間に収納して溜め息を漏らす。
《パチパチ》
「!」
背後から力強い拍手の音が聞こえた。振り返るとベーレゼールさんが興奮した表情で俺を見つめていた。いやん、そんな見ないで!
「素晴らしい!あれほどの魔法を顔色一つ変えずに、しかも無詠唱!!私は今、世紀に残る奇跡を目撃したに違いない!!」
「大袈裟だなぁ…ね、ライゴウさん。」
「俺は、魔法については一般的な知識しかねえけど、お前は異常だってのは今回でよくわかった。」
なんか、遠い目をしている気がする。現実逃避ってやつか?お疲れ〜。
「クズさん!」
「はい。」
「何処で誰に魔法を教わったのですか!?」
「…魔法の基礎は……亡くなった祖父に」
「そうですか…」
「後は、独学です。」
「独学!?」
そこまで、驚かんでも!この人好奇心旺盛だなぁ。生命エネルギー滾らせてるのこの好奇心なんじゃないの?
「クズさん!!」
《ガシ》
「うへっ!?」
いきなり跪いたと思ったら俺の手を握ってきた。ライゴウさんも突然のことで驚いたようで、俺の後ろからなんだなんだと覗き込んでく。
「弟子にしてください!」
「え?」
あ、そうくる?そんで、なんでライゴウさんが驚いてんだよ?
「御断りします。」
「え?」
「何故です!」
「俺は、旅人です。しかも、今からハンターになります。命をいつ落とすかわからないのに、無責任に弟子を取って中途半端にしたくないんです。」
「おお……その若さでそこまで考えて…」
「………………。」
ライゴウさんが何か言いたげだが、スルーで。
「では、一つだけ教えてください!貴方は何故魔法を極めたのですか?どうしてそこまで生命エネルギーを高めれたのですか?」
一つじゃねえな。でも、今までもこういう人いたからな。
「魔法ってのは、何事も楽しむもんですよ。金のある人生より夢のある人生の方が楽しいでしょ?」
「…楽しむ」
「はい。義務ではなく気楽に考えたら出来ますよ。楽しいとやる気でるでしょ?」
「…………………。」
言い慣れた使い回しのセリフを言い終えてふぅーっと一息つたら、スッとベーレゼールさんが立ち上がり、俺に一礼した後に俺にランクを告げた。
「貴方をハンターランクAである事をここに告げます。」
「…Aですか?」
「Sでも足りないくらいなのですが、Sには大きな実績と経験が必要なのです。」
苦虫噛み潰した様な顔で告げるベーレゼールさん。
「俺は、楽しめればいいです。ランクに執着してませんから。」
「!…そうですか。」
いきなりAはびっくりだけどね。
ホクホクした顔色の良くなったベーレゼールさんに続いて受け付けに戻った。
ゴマダレ~!クズは ハンターライセンスを 手に入れた。結構登録に手間取ってしまたな。
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『探究に必要なのは好奇心と遊び心』
後のベストセラーとなった魔法入門書である。現在でも複製され、著者のユニークな魔法の活用法と子どもの様な好奇心を持ち人生楽しんでる感が人々を引き込んだ。そして、本のあとがきには魔法の研究に明け暮れ苦悩する著者のターニングポイントになった出来事が記されている。そこが、美化に美化を重ねられる伝説の発端であった。
著:ベーレゼール=エンテ=ゴルレバ
来週も見て下さいね~!じゃん けん ぽん!デュフフフフフフ!