運動音痴な勇者と魔王の手下
「勇者は運動音痴です」の続きです。
さて、勇者シェリーと魔法使いシオンと仲間になった俺、レオは次の町を目指していた。森の半ばくらいにさしかかったとき、俺たちはそいつに出会った。
「待ってたぜぇ勇者ぁ!俺は魔王の手下ウォーレン!悪いがここで死んでもらう!!」
牛のような角が二本あたまに生えていて、すぐに人間で無い事は分かる。サッと身構え、様子を伺う。魔王の手下、だからだろうか。殺意はあまり感じない。身構えなくとも余裕だという事か。
「来ねえんならコッチから行くぜ!おらぁっ!!」
「ッ!」
ガキィッ、と激しい音がする。背負っていた斧を、目で追えない程早く引き抜いてこちらへ襲いかかってきたのだ。こいつ、強い...!体制を整えるため、サッと後ろへ引く。倒すより、逃げることを考えないと...!
「や、やめてっっ!」
「あっ、おい!!」
勇者が、シェリーが飛び出す。そして、
ズサッと、派手に転んだ。
そりゃぁもう、なんて言ったらいいか分からないくらい、派手にだ。中途半端に手をついたせいで擦り傷をつくり、顔をガツンと地面にぶつけてしまっている。
それを見て初めに叫んだのは俺でもシオンでも無く、
「ぎゃあぁぁあああ!!?勇者ぁぁ!!」
魔王の手下、ウォーレンである。
「おいてめぇ何転んでやがる!?すぐ立てばい菌が入るからさっさと消毒するぞ!ああああ額まで怪我してんじゃねぇか!!」
俺がポカンとしているのも気づかず、シェリーをサッと立たせ水筒の水(だと思う)で手や膝の土を落とすウォーレン。そして常備しているのだろうか、絆創膏を貼ってそいつは息を吐いた。
そして、後ろからシオンに殴られ、吹っ飛ばされた。
「っっ痛ぇぇ!?」
「おいてめぇ何勇者に怪我させてんだ?あ?」
「駄目だよシオン!あの、ごめんなさい!大丈夫ですか?」
其処からの会話はもう記憶に無い。気づけば俺たちは目指していた町に飛ばされていた。後でシェリーに聞いたところ、どうやらシェリーが怪我をしているからと送ってくれたらしい。あいつ何がしたかったんだ。
ここからは推測だが、あいつから殺意が無かったのは本当に殺す気は無かったからだろう。強さを見せつけ、帰って貰いたかったのだ。実際送って貰わなければ今いる町に着くにはキツイ距離だった。魔王は勇者を手助けする必要は無い。勇者は魔王を倒す事が使命なのだから。しかし、その魔王の手下が勇者を助けた。なんだか混乱してきた。考えるのはやめよう。まさか、まさか魔王の手下が勇者に優しいからって、魔王も優しいなんて馬鹿な事は無いはずだから。
フラグを立てるレオ。