君のことが、好きでした。
君のことを知ったのは、中学校の入学式で君が新入生代表として壇上に上がった時だった。
美人でおしとやかで黒髪も綺麗で、八方美人という言葉がよく似合うなと、その時はそう思っただけだと言ったら君は怒るだろうか。
でも、同じクラスで席も隣同士だと知った瞬間、僕は君に恋したんだ。
それも、初恋。
だけど当然の如く君はモテたし、自慢じゃないけど僕自身もそれなりにモテていた。
だからなのかは知らないが、隣同士だったのに、全然話すことが出来なかったよね。
でも、その日々はうんざりとしていて。
もっと君と、関わりたくて。
そんな時に流れた噂は、僕の心をこれでもかって程に抉ったんだ。
君が別の男と付き合っている。
君も相手の男も、嘘だって言っていたからすぐに無くなったけど。
でも、僕の心を抉り、自信を無くさせるには十分すぎた。
それだけならまだしも、僕は人を信じることすら容易ではなくなってしまった。
そんな時に君から言われた言葉。
『好きです』
単純だけど、好きな相手から言われたら嬉しすぎる愛の告白。
噂が流れる前に言われていたら、きっとはにかみながら同意の言葉を返していただろう。
だけど、この時は君すらも信じられなくなってしまっていて。
『ごめん』
気がつけば、そう返していた。
いつもと同じだ、好きでもない子からの告白を断っているだけだ。
そう思い込もうとした。
でも、君が泣きそうになるのを堪えて、下手くそな笑みを浮かべているのに気づいてしまって。
断った側なはずの僕は、何故か心の痛みを必死に我慢していた。
その翌日、学校に来ても君はいなくて。
不思議に思っている時に担任が口にした、君の転校報告。
目の前が真っ暗になって、正直そのまま気を失いたくなった。
もし、あの告白に同意の言葉を返していたら。
君を信じて、自分の気持ちに素直になっていたら。
君が転校することは、なかったのだろうか。
いくら考えても答えは出ないし、何よりその張本人である君はこの世界のどこかに行ってしまった。
傷つけて、ごめんね。
素直に『好き』と言えなくて、ごめんね。
ばいばい、僕の最初で最後の初恋さん。
もし、また君に出会うことが出来たら、その時は――――
――――これは、弱虫な王子様と人気者なお姫様の恋物語。