始まり2
「ご、ごめんなさい!」
優斗は女将の圧力に思わず謝ってしまう。
「お前・・・まあいい。詳しいことは後で聞かせてもらう。雨原、私について来い。」
「は、はい!」
声が少し震えながらも、すぐに立ち上がる。
それから少し歩いて、話していた人を部屋に送ってからボク達はある部屋に入る。
「さあ、聞かせてもらおう。何故お前がここにいる?」
「何故って言われても・・仕事が一段落したので部屋に戻って休憩する為に旅館内を歩いていたら暗い部屋があって入ってみようとしたら、誰かに押されてここに落ちてきて・・。」
(ヤ、ヤバイ、心臓がめっちゃバクバクいってる。どうしようどうしよう!)
「・・・そういうことか。」
ハァ、と女将はため息をついてから顔をあげる。
「お前にこの旅館の事を教えてやろう。」
「はあ。」
(怒ってないのか?)
優斗は女将が怒ってはいないように見え安堵するが、やはりこの温泉にはなにかがあるという不安にどうしても落ち着くことは出来なかった。
「お前も気付いているだろうがここはお前がいるべき世界ではない。」
(今まで感じていた違和感はそのせいだったのか。)
ボクはフム、と納得する。
「お前に取っちゃ信じられない事だろうが、一度ここに来てしまったらある条件を満たすまでお前の世界には戻れないんだ。」
「えっ?どういうことなんですか!」
「言葉通りの意味だが。」
「いやいやいや!じ、じゃあどうやって元の世界に戻るんですか!」
「それには少しこの場所について話さなければならない。」
「なんでもいいです、話して下さい!」
「まず、この旅館は何らかの理由で死んでしまった人達の心残りを私が晴らすためにある。」
「どうやって晴らしているのですか?」
「現世の人達はお前みたいに何らかのきっかけでここに現れる。」
「何の為に?」
「その死んでしまった人達が現世の人達と会うために呼ぶんだ。」
「ふーん・・」
「あんまり分かってないだろ。」
「だってあまり実感がわかないんです。」
「まあ、それもそうか。」
(それでいいのか?)
と思いつつも優斗は考える。
(現世の人が死んだ人と会う・・・つまり何か心残りでもある、という事か?)
優斗は過去を思い出してみるが心残りはない・・・ように思える。
(・・・何も・・無いよな・・?・・・でも何かあるような・・・)
優斗はまだ気付いてなかった・・大切な事を忘れているという事に・・・。