始まり
「けて・・・助けて!」
(この声は・・誰だっけ?たしかボクの大切な人だった気がする。でも・・思い出せない・・)
少年は目を覚ます。
(これは・・・夢・?)
少し考えるが時間の無駄だと考える。
少年は立ち上がり、ダイニングでご飯を食べ、歯を磨いてから外に行く準備をする。
(今日から心曇旅館に一ヶ月間アルバイトをするんだ。頑張らなきゃ!)
この少年は雨原 優斗。3人家族だ。しかし、父と母は事故で他界しており、今は一人暮らしをしている。祖父や祖母の所を訪ねてみたりしてみたが、既に両方他界していた。
優斗は一人で生きていくためにもこのようにアルバイトをして生活費を稼いでいるのだ。
準備も終わり優斗は玄関の扉を開く。
朝の日差しが眩しい。
優斗は‘よしっ’と気合いを入れて歩き出す。
~心曇旅館~
「ここが心曇旅館か。時給がいいからてっきり都心にあるかと思ったらめっちゃ遠いじゃないか!」
なんと心曇旅館は山の中にひっそりと聳え立っていたのだ。
優斗は小言を言いながら心曇旅館の中に入っていく。
「いらっしゃいませ。よくここまでお越し下さいました。」
おそらくこの旅館の女将であろう女性が出てきた。
「あの・・・ボクこの旅館のアルバイトに来たのですが・・。」
「あぁ、君が雨原君か。こっちに来てくれ。準備室に案内する。」
そして少し大きめの部屋に連れてかれた。
「ここが君の個室だ。好きなように使ってくれ。」
「はぁ、ボクが個室使ってもいいのですか?」
「あぁ、ここは無駄に部屋数が多いからな。」
(そういう問題なのか?)
優斗は不安を感じつつむボクのアルバイトは始まったのだった。
どうやらこの旅館は3階建てのようだ。従業員は俺を含めて6人。客は少ないが一応来るようだ。旅館から帰るときには客は皆迷いが晴れた・・・ように見える。何故だろう。
そんな疑問もあったがとりあえず最初の一週間は順調に仕事をこなしていった。
・・・最初の一週間は。
働き始めて二週目の事だった。
仕事が一段落して、旅館内を歩いている時だった。
ある部屋の扉が開いていたのだ。
しかし明かりは点いていなく人の気配もないので、優斗は不思議に思い、その部屋に入る。
と後ろから誰かに押された・・・
(えっ?)
優斗は足を前に出すがそこにはある筈の床が無く下には何故か暗闇が続いていた。
「うわあぁぁぁ!?」
優斗は叫びながら下に下に落ちていった。
・・・・・・・・・
気が付くと優斗はある部屋に倒れていた。
身体を起こそうとするが落ちてきた衝撃のせいか背中が少し痛い。
それでも身体を起こし部屋を見渡すがさっきの場所と何かが違うように感じる。
優斗は不安を感じ、部屋の外に出て周りを見渡すが何か違う。近くに人の気配がないのだ。
優斗はさっきから感じている強烈な違和感をのみこみ、外を進む事にした。
(何がどうなっているんだ?)
そう考えつつ歩いていると前方で話し声が聞こえた。
声のするほうに行ってみるとそこには女将と誰かがいた。
優斗は気付かれないように隠れる。
(違和感は女将と話している人から感じる・・・?あの人は一体・・・?)
こっそりと2人を覗くが顔は暖簾でよく見えない。
下の方を見てみると女将と話している人は、うっすらと消えているように感じる。
(・・・目が疲れているのか?)
そう思って目を擦りもう一度見るがさっきと光景は変わらなかった。
(まさか、そんなことある筈のが無い。ここはゲームやアニメの世界じゃないんだ。ちゃんとしろ、ボク。)
と自分に渇を入れる。
しかし、思い出せばここ一週間あまり休憩もせずに夜遅くまで働いていた。
(少し・・・休むか・・・)
そう思い自分の部屋に行こうとその場から離れようとした時・・・
優斗は気が抜け、ツルッと足を滑らせてしまった。
しかもおもいっきり尻餅をついてしまいドンッと大きい音が響く。
(ヤバイ!女将さんに怒られる!)
と慌てふためく優斗の元に女将がやって来た。
一緒に話していた人は心配そうにこちらを見ている。
女将は怒っている、と言うよりも驚いた表情をしていた。そしてただポツリと言った。
「何故お前がここにいる?」