金魚と桜/冬のこども
【金魚と桜】
ひらり 揺れるは紅い扇
やわらかに のびやかに 透明の世界をたゆたう
ひやり 冷えた空間の中に
鮮烈な金魚が 一尾
ひらり 揺れるは淡い杯
あでやかに たおやかに 春色の世界を流れる
ふわり 香る空間の中に
桜の花弁が ひとひら
とぷり 揺れるは冷たい水面
ゆるやかに じんわりと 閉ざされた世界を揺らす
ぷかり 浮かぶは淡い花弁
ぶわり 生温い風が吹き
こまやかに たのしげに 波打つ水面
ゆらり つるり 杯は流れる
ひらり 靡いた扇の先に
水面の杯が 触れた
【冬のこども】
黒く澄んだ丸い瞳に 白く儚いモノが映る
興味深げに伸ばされた ぷくぷくとした柔らかな手に
舞い降りた白いモノが 触れた
白いモノはひやりと冷たく
熱い手に触れたが最後
呆気なく じわりと融けて 消えてしまった
黒い瞳はおどろいたように 幾度もまばたきをくり返し
手に残ったわずかな滴を ただ茫然とみつめていた
静かに凍った 空の下でひとり
舞い踊る雪に 包まれたこどもは
その日はじめて 「さびしい」を知った