あーるじゅうはちじー
黄泉帰りを使って呼び出したコボルトは【見せられないよ!】といった見た目だった。
モンスターの名前がコボルトからコボルトゾンビに変わっている。
自分が黄泉出したモンスターは準パーティー扱いになりステータスなどを閲覧できる。
ステータスを見てみると、コボルトの正確なステータスを知らないためはっきり断言は出来ないがかなり下がっている気がする。
特に速度が1というのは露骨だ。
説明を読むと……
【コボルトゾンビ】
未熟な死霊使いに呼び出された未熟な死霊。
未熟なため、本来の能力よりも弱くなっている。
壁が精々。
これは酷い。
未熟と連呼されることもムカつくが、最後の壁が精々が一番酷い。
幸い攻撃力はさほど下がっていないが、あの速度では一方的にサンドバッグにされるだけだろう。
手下は使い捨て、という情報が納得できた。
いつまでも嘆いていても仕方ないのでコボルトゾンビを連れたまま歩き出す。
これは、本当に黄泉帰りのスキル上げをしなくては。
コボルトゾンビを壁にコボルトに足違えをかけ二人がかりでタコ殴り、そうするとコボルトゾンビのHPは半分くらいになっている。
そして二人がかりで倒したコボルトを黄泉帰り。
今度は三人がかりで以下略。
レベルも多少上がったが、どうやら自分の死霊にも経験値が分配されるらしいため上がりが遅い。
使い捨ての死霊に経験値を吸われるのは痛いな。
まぁ、それくらいのペナルティが無ければ強すぎるから仕方がないだろう。
スキルは黄泉帰りがレベル5、呪術がレベル7、洗脳がレベル1となっている。
コボルトゾンビに思考回路など備わっていないため洗脳を使うタイミングが無い。
黄泉帰りもレベルが上がったため最初のコボルトゾンビに比べてましなステータスになってきた。
ルーチンワークを終えて、黄泉帰りを唱えようとしたらカーソルが二つ見えた。
1つは今までどおりコボルトの【黄泉帰り】で、もう1つは【黄泉帰らせますか?】というもの。
死霊使いが黄泉帰らせることが出来るのは自分か自分の死霊が倒したモンスターだけだった筈なのだが。
興味がわいてきたので試しに【黄泉帰らせますか?】の方を選択しながらあの計画性の無い呪文を唱えてみた。
「ああがががあああ……!」
「……」
やはりモンスターではなかったらしい。
溶けかけの身体を地中から引き上げながら何事か言っている。
モンスターではないので説明が読めない。
じっと見ていると何事か声を上げ(全部あああがががになっていたため解読不能)メニューウィンドウを出した。
「メニューウィンドウ?」
のろのろと、見てる方がもどかしくなってくる動きで操作をしていると、目の前に文字が出てきた。
高年齢層が好んで使うチャットだ。
そこには【蘇生チョリーッス!】と書いてあった。
もしかして、プレイヤー?
「…………チョリーッス」
【いやー、助かりましたぁ!wwゾンビって死ぬとそこに埋まっちゃうんでジャキさんに蘇生してもらえなきゃあと一時間でデスペナ食らってましたよwwデスペナが無いって聞いてゾンビにしたのに地中に三時間埋まってるとデスペナとかねww詐欺かとwwところでなんか知らないんですが声が出ないんですが原因とか分かりますか?ww】
ウゼェ。
間違いなくこいつの属性は【チャラ男】だ、と思ったらまさかの【ドM】。
今一つリアクションに困る属性だ。
「多分ですけどねぇ、私の黄泉帰りのレベルが低いのでぐちゃぐちゃなんだと思いますヒッヒ。」
これが精一杯の変態ロールだ。
無表情なのは仕方がない。
俺の発言をどう受け取ったのか、ゾンビの ナこ☆ナょ☆カ` ――なんと読むか解らないのでナことする――ナこはにこにこと(恐らく)笑いながら打ち込んだ。
【マジっすか、もしかして初心者サン?だったら超ラッキーですねwwよかったら最初の町までお伴しますよww貴重な変態死霊使いですからねww】
悪意があるのか無いのか判断しづらい。
とりあえず変態死霊使いという言い方はスルーしてうなずいた。
パーティー申請が来たので許可を押す。
【よろしくおねがいしまっすwwゾンビのたなかって言いますww状態異常が得意な前衛の壁ですwwガンガン死ぬんで蘇生お願いしますww】
どう読んだらたなかになんだよ。
思わず素で突っ込みそうになった。
ふと思ったけど、死霊のステータスは下がるけどプレイヤーのステータスはどうなるんだ?