天は味方した
天は俺に味方した。
パッケージ買いしたVRMMOの【キャラなり!】は、名前から漂う強烈な地雷臭の割にはまともだった。
なにより、ランダムに決められるのがほとんど無いということは評価に値する。
ランダムに決められる系でことごとく主人公っぽいものにされ続けたのだから、この警戒心はあって当たり前だ。
【キャラなり!】は、その名前の通りキャラになりきるVRMMORPGだった。
キャラクター作製画面で所属、種族、名前、性別、外見、職業、ステータス、属性、スキルの順に設定した。
ここでいう【属性】とは、よくある火属性やら水属性などではない。
【オカン属性】、【厨二属性】、【オタク属性】、【妹/弟属性】などのキャラクターの萌え?属性を表している。
属性には様々な職業相性やメリットとデメリットがあるらしい。
例えば、【厨二属性】で例をあげるとすると、【厨二属性】と魔術師の相性は良い。
なんか厨二っぽい痛々しい台詞を考えながら魔術を使わなくてはならないが、その分一撃の威力が他の属性の魔術師と段違いなのだ。
ただしかなり恥ずかしい。
厨二っぽい台詞を自分で考えるという縛りが予想以上に辛いらしい。
仲間に聞かれることにより、パーティの絆が崩壊しただとか、羞恥心に耐えかねてプレイヤーがキャラ削除したりとか。
だが噂の中には最終奥義は永遠氷獄ーエターナルフォースブリザードー(相手は絶対死ぬ)だという噂があるだけ期待できる。
これだけで属性と職業の相性の重要さは解っていただけたと思う。
ちなみに、属性【厨二属性】と一番相性が悪いらしいのは剣士だ。
強いは強いのだが攻撃をする度にカッコいいポーズでの強制ディレイが入るので、囲まれて殴られやすいらしい。
俺は死霊術士として、真っ先に【変態】を選択した。
変態の特性はNPCからの好感度が上がりにくいが一つの技、職業に特化させやすいらしい。
元から魔王軍サイドで死霊術士という職業上人間NPCからの好感度は下がりまくるのは解っていたので気にしない。
変態っぽい行動をとると属性にボーナスが付くので積極的に変態をしていきたい。
今回自分自身の力で戦うつもりは無かった。
というか、そーゆー主人公っぽいことはもうやりあきた。
面倒なのは手下(死霊)に任せてモブ研究とキャラなりに時間を注ぎたいのだ。
最初のスキル構成は【黄泉帰り】【洗脳】【呪術】だ。
残り二個設定できるが実際にプレイしてから設定できるらしいのでまずはこの三つでやってみる。
【黄泉帰り】はそのまま、自分または手下が殺した生き物を自分の死霊として蘇らせる術だ。
レベルが上がると強いキャラやモンスターでもオートで使えるようになるらしい。
手下は基本使い捨てらしいので、これはレベル上げ必須スキルだ。
【洗脳】は【説得】よりも悪役っぽいから決めた。言うことを聞かない手下に使おうと思って取ったスキルだ。
【呪術】は最低限の支援として。デバフ中心のクラスキルだ。そんなに上げるつもりはない。
これら三種は全て魔王軍サイド限定のスキルだ。
同じように、天界軍サイド限定スキルや人間限定スキルも存在する。
これらの所属限定スキルはネットで公開されていなかった。
重要な情報は秘匿されるのはよくあることだ。
全てのキャラメイクを終了すると、スタートを選択する。
そうして俺【ジャキ】は【魔王領、ルシウス高原】に降り立った。
この話はどこに向かっているのか謎