死霊使い(物理)
▼「ごめんね今日は用事があるんだ」
▼「ホンジャマカ祭りに行ってくる」
▼「ついでに相撲の練習もしていこうかな……」
▼「あっモンガン鳥」
▼「くっ、古傷が痛む……」
こうして今日のイベントは終了した。
現実ってまじクソゲー……。
そして今日もまた現実逃避にキャラなり!の世界に逃げ込むのだった。
「……おはようございます」
「よーおそよう。今日も俺様のためにレベルをあげろよ。そろそろ聖戦の時期だしな」
「聖戦?」
ログインすると安定の魔王であった。最近お気に入りのネタ装備オタコス(旧世代の秋葉原オタクをイメージして作られた防御0のネタ装備。なぜか片手にデフォルトでタコスを持っている)を着てソファーに転がっている。
駄目人間の標本のような人だ。
しかし聖戦か……。
「死霊使いには最低でも黄泉帰りレベル5以上から参加義務あるからな。お前レベルじゃあ流れ矢で死ねるだろうけどレベルあげとけよ」
「……はい」
「ちなみに今何レベ?」
「……アバター48、黄泉帰り31、洗脳12、呪術18、詠唱短縮6、棒術46です」
「はっ?!何で棒術そんなあがってんだよ!?」
「……」
本来俺は戦闘は死霊に丸投げで行くつもりだったし、実際途中まではその通りにやってきたのだ。
しかし黄泉帰りがあがってくるにつれて、コボルトレベルなら意志を残したまま黄泉帰らせることができるようになってきた。すると、洗脳の効きが悪くなり段々と反抗してくるようになったのだ。
魔王軍サイドのモンスター(敵対MOB)は天界軍や人間サイドのモンスターか中心になっている。
あちらではコボルトは村を形成し、簡単な補給地点ともなる数少ないNPC扱いなのだ。
そのコボルトがモンスター扱いというのはまぁ、魔王軍サイドが悪役のためだ。人間達からしたら善良な亜人だが魔王軍からしたら狩るべきモンスターとなる。(エルフなどもそうだし高レベルダンジョンだと天使の住処とかモロなところがある)
長くなってしまったが本来魔王軍と敵対意志のあるコボルトは完璧に洗脳せねばすぐに攻撃してくるのだ。
そしてその対処に当初はリボーンエルフを使っていたが黄泉帰りが低レベルだったため腐り落ちてしまった。
棒術などをとらないとガード判定がなかったり変にゲーム的なせいで面倒になったため、ついに棒術を取ってしまったということだ。
「だからってレベルあがりすきだろう……」
「……つい」
元からリアルファイトの類に躊躇いはない。というかそっちのが本領なのだ。武器に拘ったことはないので(主人公といえば基本的に剣だったが)ついついやりやすくて殴りすぎてしまった。
ついでにアバターレベルの適正レベルより上で戦えるようになったので、エルフの森よりは下層だがドワーフの集落で黄泉帰りレベルを上げていたことも要因だろう。
「死霊使いかっこ物理とかお前……」
「……笑わないでください」
本来の目的を思い出してからはちゃんと棒術を優先しないでやった。
ただつい熱中してしまったせいで上げすぎてしまったのだ。
「まぁそれなら安心だ。次の聖戦でも流れ矢くらいなら落とせそうだな死霊使いかっこ物理」
未だに腹を抱えて笑っている魔王に呪術をかけてやりたい……。
レベル15になってから覚えた笑い袋の呪術の的にすべきか……。
「いやー、お前入れて正解だったわ。フェリンともまともに付き合えるみたいだしなにより面白い。魔王軍幹部はやっぱ個性的じゃねーとな」
「……まだまだ下っ端ですけどね…ヒヒッ」
「たなかの目は確かだったようだな!そいや、そろそろたなかも来るし、黄泉帰りだけじゃなくアバターレベルも上げてきたらどうだ?」
たなかか……正直忘れていたな。
決して薄いキャラではないのだが……作業ゲーであればあるだけ熱中してしまう性ですっかり交流や探索がおざなりになっていた。
「おはようございますご主人様っ!」
「おそよー」
「……」
あぁ、懐かしい。
最初に会ったときと同様に緑色のツインテールに、戦闘に全く適さない華美な装備。ゾンビの特徴は死ぬまではネイルにしか見えない爪のみ。歩くトラウマ作製器……。
「……あれ?誰ですか?」
「………………………」
お前が入れたんだろうがっ!!