ぅゎナルシストっょぃ
現在地はジャキの適性レベルよりかなり上の【エルフの森】だ。
まずアバターのレベルが低すぎるのは問題外なので強引なレベリングと、このフィールドにポップするモンスター【エルフ】の死霊化が目的だ。
フェリンは強かった。
戦い方は特殊そのものだが。
フェリンの戦い方を紹介する前に、バットステータスの【魅了】について説明しなくてはならない。
ゲームによって効果や強さは様々だがキャラなり!の【魅了】は、魅了された対象は(モンスター、プレイヤー問わず)中程度のステータスUPのバフ効果と共に思考能力を術者奪われるという凶悪な効果だ。
凶悪過ぎるために同時に複数の相手にかけることが出来ないが、それでも味方がステータスUPした上で斬りかかってくるというのはかなりキツイ。
その上効果時間は味方にディスペルしてもらうか、術者が倒されるかの二択という凶悪仕様。
しかし凶悪とはいえ弱点ははっきりしており、術者は相手を操っている間自分の身体を操作できないのだ。
その為相手方にアーチャーや魔法使いなど遠距離に対応した敵が居ると的になってしまう。
フェリンはその凶悪だが使いどころが難しい魔法の使い手だ。
【魅了】の話が終わった所でフェリンの戦い方に話を戻す。
フェリンが常に片手に持っている鏡の正式なアイテム名称は【反射鏡】。
その名の通り、掌大とはいえその鏡にあたった魔法は一定の効力以下ならどんな魔法でも反射することができる。
過去の難関ソロダンジョンファーストクリアボーナスらしいアイテムのためフェリン以外は持っていない、正真正銘のユニークアイテムだ。
前置きが長くなったが、フェリンは【魅了】を【反射鏡】で反射させ、自分に掛けて戦う短剣使いなのだ。
「鏡よ鏡よ鏡さん、世界で一番美しいのはこの僕だ!」
「…………転べ転べ転べ転べ転べ転べ転べ転べ転べ転べ」
なかなか酷い詠唱である。
フェリンがうっとりしている内に【足違え】を発動する。
詠唱中もうっとりと鏡を見ているあたり、フェリンのキャラなり度は半端ない。
だが、やけに詠唱が短いような気もするが……。
詠唱が終わり、自分自身に魅了をかけると一気にフェリンの動きがよくなる。
ダークエルフという種族の為元々高い敏捷値が目に見えて上がった。
レトレゲーに例えるなら、二段階UPの積み技を使ったような感じだ。
「僕の美しさは罪だな……」
まさに瞬殺。
敏捷値で圧倒的に勝るフェリンは同じく敏捷値高めの代償に紙防御なエルフをあっさりと薙ぎ倒した。
ちなみにフェリンの中では魅了によりステータスUPしたためフェリンが素早くなったのではなく、フェリンの美しさに棒立ちになってしまったという設定に置き換えられているらしい。
一応戦闘に参加したことになっているので、地面には復活するか問いかけるカーソルが見える。
恥ずかしいが、あの長い呪文を唱えた。
現れた死霊に思わずフェリンが「美しくないな……」と呟く。
激しく同意だ。
「ところでジャキ君」
「……はい?」
「君、もしかしなくても【詠唱短縮】のスキルを取っていないだろう」
「……はい」
そんなスキルあったのか。
目から鱗である。
「君の【呪術】と【黄泉帰り】が10レベルになった時に取得可能になっている筈だ」
あ、ほんとだ。
初期では選択できなかったスキルが出現している。
「詠唱を必要とするスキルを二つ以上持っていて、尚且つ両方レベル10以上になると出現するスキルだ。君なら取っておいて損は無いだろう」
「……フェリンさんも、持ってますよね?」
確認するとあっさり頷いたフェリン。
「詠唱短縮の効果は絶大だからな。お陰でスキルスロットを圧迫されるが十分なリターンがある」
フェリンは魅了は使うが本業は短剣使い。
短剣スキル、魅了、詠唱短縮、詠唱短縮の為のスキルとこれだけでかなりスペースを取っている。
他にも近接スキルも取っているだろうから、なかなかやりくりが難しい構成だ。
レベルUPでスキルスロットが増えるとはいえ、魔王軍でトップに近い位置につけることができるのはひとえにフェリンのプレイヤースキルによるのだろう。
ナルシストだが。
とりあえず、詠唱短縮のスキルを取った。
これであの恥ずかしい詠唱をしなくてすむと思ったがところがどっこい。
初期レベルでは三文字短縮という微妙さだった。
実質転べが一回減っただけである。