邪気眼乙wwと、笑いたかった……
俺は主人公体質だった。
これだけだと頭の可笑しな奴、としか思えないだろうが純然たる事実なのだから仕方がない。
まず境遇がダメだ。
普通に暮らすには要らないオプションが付きに付いているため、何をしても視線を集める。
他人がやると一笑に伏される行動が本気にされてしまうのだ。
まるで漫画やアニメの主人公のように。
早い段階で悟った。
現在は駄目だと。
普通の人のようにくだらないことをしたかった。
だから他人に自分を偽れるVRMMORPGをした。
……はずだった。
しかし、VRMMORPGでも主人公体質は邪魔をしまくった。
最初にやった容姿、スキルランダムのVRMMORPGはとんでもない美形にレアなスキル構成という壮大な出オチから始まった。
気が付いたら攻略組と呼ばれる面子の中心人物に祭り上げられ、逃げるに逃げられなくなった。
このVRMMORPGは最初に公表されていたストーリーが粗方解明されたあたりで辞めた。
「もう俺の役割は終わった」とか意味深なこと言って逃走した。
辞めてから二年経ったころに検索してみたら、ネットでのネームバリューは薄れるどころか神格化してきていて怖い。
もう三年もログインしていないから大丈夫
、と思いたかった。
次にやったVRMMORPGでも大コケした。
以前の経験を踏まえ、顔が見えなくなるアサシンマスクというアイテムの存在を聞いて職業アサシンとして始めた。
以前は正統派RPGみたいなキャラで大失敗したのでその反省も踏まえていた。
そのVRMMORPGはPKも公認されていたので、いっそ嫌われる限界まで嫌われようと思い、PK特化になった。
が、それもまた主人公体質に邪魔された。
PKした、と思ったらPKされた奴が何かしら悪事に加担してたりして気が付いたらダークヒーロー状態。
痛々しい二つ名がついたあたりで嫌になったので、二代目として後継者を育成してから辞めた。
なにやら未だに必殺仕事人システムは生きているらしく、こちらでもむだに英雄視されていた。
三番目にやったVRMMORPGは今までで一番酷かった。
顔もスキルも自分で選べるVRMMORPGが出たと聞いて飛び付いてみたら、なんと始まるデスゲーム。
無駄にリアルの顔にされて、渾身の力作だったキモオタ(46歳)のアバターがパァになった。
そんなん聞いてないんですけどー、と思いつつも明日の糧を稼ぐために努力していたらいつの間にか仕事をしてた主人公体質。
フツーねーよ、ってタイミングで女の子(何故かみんな美少女)のピンチにかち合ったり、うっかり言った言葉を深読みされまくって身に覚えのない悲壮な過去持ちということになったり。
一回目のVRMMORPGのキャラバレして昔の仲間と再開したあたりから宗教らしきものが生まれていた。
ログインしっぱなしということで、仲間と連帯感のような物が生まれてきてテンション上がりまくった挙げ句、臭いセリフ吐きながらラスボスを倒したり。
今思うと、文化祭的な魔力が働いていたとしか思えない。
今までの経験から絶対ろくでもない扱いを受けているだろうからネットで検索すらしなかった。
学んだことといえば、宗教コワイ。それだけ。
そして、今のVRMMORPGが四度目の正直だ。
おどろおどろしいゾンビやモンスターと対立する天使や人間の描かれたパッケージを見てピンときた。
これだ、と。
速攻で購入し、セット。
容姿は不細工過ぎない程度に不細工にする。
所属先は魔王軍。
こうして俺の、死霊術士のジャキの人生が始まった。
完全に方向性を誤っていることに気付いてない。