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鏡の森

作者: 三咲都李

 昔々、とあるところに『鏡の森』という場所があったそうです。

 鏡の森…という名にふさわしい、まさに鏡でできた森。

 昼になれば光が鏡に反射して、とても幻想的で美しい森。

 しかし、夜になれば闇を反射し、深い夜に包まれた危険な森。


 この森には、昔から魔物が住んでいました。

 魔物は、訪れた人間に対していつもこう尋ねました。

『おまえは誰だ? 私は誰だ?』

 魔物の姿はどこにも見えず、声もどこから聞こえてくるのかわかりません。

 入ってきた人間はこう返しました。

「私の名は英雄ザリス。おまえはこの森の魔物だな!?」

 …また、ある者はこう返しました。

「私は…お、おまえこそ誰だ!? どこに居やがる!」

 魔物はそれらの言葉を聞くとむしゃむしゃと人間を食べてしまいました。

 入ると出てこられなくなる森。

 そんな噂が街から街へと伝わりました。

 そうしていつしか、誰もこの森に近づかなくなりました。


 ある時、1人の少女がその森に迷い込んでしまいました。

『おまえは誰だ? 私は誰だ?』

 少女はそれはそれは美しい緑色をした瞳と髪もった、ハーフエルフでした。

 しかし、その体はいくつもの傷が刻まれていました。

 少女は質問にこう答えました。


「私はあなた。あなたは私」


 優しく鏡に手を触れ、少女は目を瞑りました。

 その一言で、鏡の森の魔物は少女を気に入りました。

 人間にも、エルフにも仲間として扱われなかった少女と鏡の森の魔物。

 鏡の森の魔物もまた、1人ぼっちだったから。

 少女をとても愛しく感じました。

 そうして、2人は長い間をともに過ごすしました。

 時には恋人のように、時には姉妹のように、時には友達のように。

 

 …でもある時、それは打ち破られました。

 1人の勇敢な青年がその噂を聞きつけて、鏡の森に入ったのです。

 少女を救出する為に。

 そこでも、また鏡の森の魔物はあの問いが投げかけたのです。

『おまえは誰だ? 私は誰だ?』

 青年の答えは…


「俺は俺だ! おまえは鏡だ!」


 そう。魔物の正体は、鏡の森そのものだったのです。

 青年は少女の手を引いて走り出しました。

 そうして鏡の森を脱け出した後、青年は鏡の森に火を放ちました。


 焼け落ちた森は、粉々に砕け散り魔物は死にました。

 少女は、キラキラと輝く鏡の破片を拾い集めました。

 そして、一枚の面を作りました。

 鏡の面です。


「私はあなた。あなたは私」


 少女はそういい残し、誰の前からも姿を消したといいます…。

11/11/29 アドバイスを元に少し手直ししてみました。

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― 新着の感想 ―
[一言] なんんだか余韻の残るラストでした! 鏡の森の魔物とハーフエルフの少女は、、 どうなっちゃったんだろう。
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