人生の岐路(上
何も考えない…。頭の中は真っ白状態。
これが夜が明けるまで続いた。結局美紀は一日寝れなかった…。
しかし、特に不安が募る一日だった。
木曜日、朝7時半。
美紀とお母さんは車に揺られていた。しゃべることは一切なかった。
珍しく話したがり屋の美紀も話してこなかった。
車の中でラジオのザーっと言う音が響き渡っていた。
今日はクラスメイトにも会えない…。何かありえない現実に立たされていた。
現実の崖っぷちに立たされるということはこんなのだな、と再び実感した。
といっても、これはリアルなのだから逃れることは不可能。
自分が生んだ運命から逃れることはできなかった。
そうこう考えているうちに総合病院が目の前にあった。
お母さんは玄関から一番近い第一駐車場に車を走らせた。朝が早いのか知らないが、随分と車がすいていた。止まっているとしても8,9台。入院患者だろう。
でも、あたしもいつかこのようになるんだろうな…。
でも…そんな…。
「…ちょっと美紀!聞いてるの?」
母が3度も言っていることに気が付かなかった。
「あ…ゴメン。」
「さあ、早く行くわよ。怖がらなくてもいいから。」
母に強引に病院へと連れて行かれた。
玄関を入ると、安河内静が迎えてくれた。
そのまま小会議室へと案内された。
「美紀ちゃん。今日のことは母さんからきいてるよね?」
「うん…」
「では、これを見てください。」
差し出されたのが何枚もの検査表だった。
「では、今から今日のすることを説明します。今日一日で精密検査するのもちょっときついので二日に分けて検査します。その間は入院してもらうことになりますが…了解されますか?」
はい、と美紀と母は言った。たった2文字であたしの人生が変わる…。恐ろしい。
「では、とりあえず今日一日ですね。まずは心電図検診へといってもらいます。そして昼ごはんをはさみますね。その後、レントゲンですね。その後CT検査です。今日としてはこの三つですね。案外時間がかかりますので、できるだけ効率よく行ってください。」
1.心電図検査
2.昼ごはん…
3.レントゲン…。
4.CT検査……………。
20時00分。
全く疲れるわ~。あたしを殺す気か!
という思いで病室へ戻ってきた。
ここで一泊するのかぁ~という思いでベッドに転がった。
昔はあの病気で2.3週間くらいいたな~。とても懐かしい…。
母は家に帰って寝ることになっていた。当たり前だが。
いつもより寂しく感じた。一人の病室、白いベッド、小さなテレビ…。
懐かしいし、よけい寂しい…。…眠たい…。
そのまま美紀は力が抜けた。
・・・・・・・。・・・・。
チッ・チッ・チッ。時計の鳴り響く音が響き渡る朝。美紀はボーッとした。
思い返せば今は病院にいたんだ。それ自体を忘れていた。
「おはよ。」
………へ?ギャアアアア東野君…。
ゲ…あたしのパジャマ姿が…。
「ど、どうしたのよ?学校は…?」
「いや、君が心配だったから来ただけだよ。クラスの代表として。」
…これって…神様~。
その時、横からバサッという布団が落ちる音がした。隆は美紀の隣に腰かけた。
「なぁ、大丈夫か?無理スンナよ…」
「だ、大丈夫よ!あんたになんか言われたくないわ!」
クスッ。隆は小さな笑みを浮かべた。美紀の胸の鼓動が高くなっていく。
「な…何なのよ…。9時に寝たから大丈夫よ!」
「あっそ。もうすぐ母さん来るんじゃない?」
「そうだ…けど?」
「ならおれそろそろ行くわ。」
うん…。この一言が言えなかった。
隆が取っ手に手をかけた…。ヨシ!
「ねぇ、東野君…。もうちょっと居てくれない…かな?」
隆の目が点になった。
「ご、ゴメン。俺今から学校あっから!」
アリャ・・・。
思いっきり駆け出した。それを母はしっかりとこの目で見ていた。
今までにない速さで母が走ってきた。驚き…。
「みきぃ?あの人なんて言うのかなぁ?」
不審げな顔で聞いてきた。
「東野君だけど…。」
「もしかして…彼氏!?」
ゲ…なんでやねん!(殴
「そ、そんなわけないでしょ!」
「ホントに…?」
美紀が何か言おうとしたとき会議室へと先生に呼び出された。
ありがとうございます。
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