十五話 思案
予想外の襲撃に、落ち着きを取り戻した二人は、再び焚き火を囲んでいた。
「さて、アレを如何するかな」
「そう言えば、殺してないのなら如何したんだ?ナイフでは、傷を負わせるといっても高が知れているだろう」
ハルキの武器はナイフ。動脈や急所を刺せば、十分殺傷能力はあるが、殺さずとなれば話は別だ。
しかも、件の襲撃者が逃げた気配や怪我を負って倒れている様子はない。
「ん?あぁ、これね、刃先に薬が塗ってあって、傷つけたら痺れたり、眠ったりするの。今回は、眠り薬仕様」
腕を振って、袖に仕込んでいたらしいそれを翳し、ハルキが説明する。
「どれくらい持つんだ?」
「解毒飲むか、私より力のある人間が解くまで」
「?力?」
「そっ。私が使う毒とか薬は、魔女のおばあさん直伝。つまり、普通の毒ではない」
「如何違うんだ?」
「魔女は薬を作るとき、自らの力を込める。それによって、薬効が倍になったり持続時間が長くなったりするの。普通に作れば、痺れ薬は2~3日、眠り薬は1日ってとこかな」
「力を解くと言うのは」
「薬効を持続させているのは、私の魔力。それを私が取り除くか、薬に込めた力以上の魔力なら、薬効の効き目を無効に出来る」
「なるほどな。じゃぁ、奴等は気を失っているだけか?」
「まぁね。だから、明日の朝回収ってこと」
戻ってきて直に言っていた“回収”の意味が理解でき、アルフォンは頷く。
「如何する?放っておいてもいいけど」
「いや。あのままにして警備兵に見つかったら不味いな」
かといって意識のない12人もの人間をリディアまで連れて行くけるわけもなく、アルフォンは逡巡する。
「が、連れてもいけないか・・・」
「そうだねぇ~」
黙りこんだ後、アルフォンは炎を見詰る眼光を鋭くする。
「逆手に取るか」
「逆手にって?」
「奴等は俺たちが二人連れだと知っている」
「だろうね、大分距離はあったけど、話し声とかは聞こえてただろうし」
「姿までは見られていないが、このまま警吏に捕まれば、奴等は森で野宿をしていた二人連れを見た事を証言する」
「あ~。つまり、業と目撃証言を作ろうってこと」
話が見えてきたハルキが確認を取ると、アルフォンは薄く笑む。
「そうだ。そのまま、お前だけリディアへ入り、それとなく行き先を誰かに話しておけば、その情報は敵方に伝わる」
「だねぇ。なるほど。OK。じゃ、私たちは明日あいつ等の前に出て行って、きちんと目撃してもらう必要があるね」
「オーケェ?」
「ん?あー、了解って意味」
意味の分からない応答を問えば、ハルキは何でもないと言うように手を振り、言葉の意味を分かる言葉に変える。
「問題は、俺たちがリディアを出るまでに、奴等が口を割れば計画が狂う」
「それは問題ない。こっちで何とかできる」
ハルキが請合い、計画が整った。
「で、何処に向うことにする?」
「真直ぐ帝都へ」
「了解」
明日の段取りが決まり、ハルキは離れて伏せていた紫狼を呼び、眠る体勢に入る。
アルフォンは木に背を預け、未だ何かを思案しているのか、焚き火の炎を見詰ている。
周囲は予め結界を張っているため、夜の番は必要ない。
「おやすみ」
ハルキは一言声をかけ、眠りに就いた。




