表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東海道の弓取たち  作者: 双鶴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/20

第六話 三国同盟の影

天文二十一年── 一五五二年。

駿府の空は、春の霞をまといながら、どこか落ち着かぬ気配を漂わせていた。


その日、城中は朝から慌ただしかった。

今川・北条・武田──

三つの大国が手を結ぶという知らせが、

駿府の空気をわずかに震わせていた。


甲相駿三国同盟。

戦国の均衡を変える大きな結び目である。


だが、裏庭に集まった三人の少年は、

その喧騒から遠く離れた静けさの中にいた。


氏真が、庭の石に腰を下ろし、

遠くの空を見つめた。


「父上たちは、国のために同盟を結ぶ。

 それは、きっと正しいことなのだろう」


竹千代は、静かに頷いた。


「三国が争わなければ、民も兵も救われます。

 ……ですが」


言葉を濁した竹千代の横で、氏規が小さく息を吐いた。


「ですが、我らの同盟とは違う」


三人の視線が、自然と重なった。


氏真が、ゆっくりと口を開いた。


「父たちの同盟は、国のため。

 だが──

 我らの同盟は、心のためだ」


竹千代は、その言葉に深く頷いた。


「家がどう変わろうとも、

 国がどう動こうとも、

 我らの誓いは揺らがない」


氏規は、少しだけ目を伏せた。


「……でも、いつか、

 この同盟が試される日が来るのでしょうか」


その問いは、幼いながらも鋭かった。

三人の胸に、静かな影を落とす。


氏真は、氏規の肩にそっと手を置いた。


「来るだろう。

 だが、その時こそ、我らの誓いが力を持つ」


竹千代が、二人の前に立った。


「父たちの同盟がどうあれ、

 我らは我らの同盟を守る。

 ……それが、三人で交わした誓いだ」


氏規は、ゆっくりと顔を上げた。


「はい。

 私は、二人を裏切りません」


氏真は、微笑んだ。


「私もだ。

 たとえ国が争おうとも、

 我らは争わぬ」


三人は、庭の中央に立ち、

そっと手を重ねた。


春の風が吹き、

木々の葉がざわりと揺れた。


その音は、

父たちの大きな同盟とは別に、

三人だけの小さな誓いを包み込むようだった。


──甲相駿三国同盟の影の下で、

三人の“秘密の同盟”は、

むしろ静かに強さを増していった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ