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第七章 シャーの神殿

日の光が、王の鼻を照らす。

鼻の奥で、金が光る。


広場には初代王像があり、ここを中心にエルドの街が出来ている。聞いたとおりだ。


同じく巡礼に訪れたであろう多くの人々が行き交っている。露天商の声が重なる。


露店には色とりどりの香詰めがぶら下げられている。風が吹くたびに、匂いが鼻に入り込む。


広場を出て進むと、石造りの階段が見える。ここからだ。

だんだんと露店が減っていく。喧騒が背後に遠ざかる。


階段を上ると、小さな石造りの建物がある。そこには、無地の箱に入った香詰めが整然と並んでいる。

一つ授かり、ゆっくりと箱を開ける。

しばらく見つめ、そっと手に取って右鼻に詰める。

息を吸う。

何かがしみ入った気がした。

やはり公式は違う。


ここを過ぎればいよいよ神殿だ。壮麗な神殿の入り口前に、人だかりが出来ている。

「こちらは、生涯一度も香詰めを外さなかったといわれる無離香の聖人像です。神殿内の原初の聖女像とは対照的に…」


入り口で人とすれ違う。左に黒い香詰めをしていた。

一瞬足を止め、そして中に入る。


石に刻まれた聖句。真っ先に目に入る聖女像。右手に空の器を掲げ、足元には伏せられた盾がある。その鼻には何もない。


奥に進む。緊張感が高まる。

神殿の奥に、大きな神像がある。

異様に大きな鼻に、人に許されぬ両鼻の香詰め。

よく分からないが、偉大なのだろうと思った。


神像の奥には静寂が広がっている。

ここには、原初の聖典が収められている。

古い神代文字で書かれたそれは、誰にも読むことはできない。繰り返される聖句は、神殿の壁や床に刻まれている。


文字列を眺めた。

来てよかった。


神殿を出て、階段を下りる。

振り返り、神殿を見上げた。


雲の切れ目から差す日差しが、ひどくまぶしかった。

何も起こらなかった。


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