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第二章 私は佐伯有紗。
ここに来た最初の夜のことを、今はもう思い出せない。
泣き声がしていた。
ネアが抱いて、揺らしていた。
ぐらついている。私は手を伸ばした。
ネアが息をついてミナと呼んだ。
翌朝、草を集めた。
草は定期的に取り替えた。その間、獣皮を干す。
ネアが持ってくる水は毎日違った。
煮沸して、冷めるまで待つ。
そっと口に含ませる。
その後に、私も飲む。
ネアが同じ水を持ってくるようになった。
水は澄んでいる。
ミナはよく飲むようになった。
水が冷めるまでの間、
ネアが言葉を教えてくれた。
いくつか覚えた。
私も名前を教えた。
ネアは最初はうまく呼べなかった。
気がついたらアリサと呼ばれていた。
だんだんと、似た音があちこちで聞こえだした。
同じ人がいつも私を見ていた。
木片に何か黒いものをしきりに押しつけている。書いていた。
しばらくして、私にも分けてもらった。




