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スペースツアー

月に行くためのスペースツアーは、金額が高すぎる上に、時間もかかりすぎるとのことで、応募者はほとんどいないと言われていた。

確かに、僕の資産の大半がなくなるぐらいの金額だった。

だけど、かまわない。僕は申し込みを進めた。

行ってみても何も変わらなかったら、帰ってきて死に場所でも探しに行こう。そう考えていたから。



数日後、スペースツアーの会社から案内の冊子が届いた。

めちゃくちゃ分厚い。


内容を読んで、驚愕した。

なんとほぼ一年、アメリカの訓練センターでプログラムがあるのだという。

それはほとんど即席で宇宙飛行士を作り上げるような過酷なものに見えた。


しまった、全然調べてなかった。

時間がかかるってのはそういうことか。

だから応募者が少ないと言われていたのか。


キャンセルしようかな、とも思った。


でも、夜空に浮かぶひとりぼっちの月を見るたびに、どうしようもなくそれに触れてみたい衝動に駆られた。


悩んだけど、結局、参加することにした。

どうしても無理だったら、あきらめよう。

そう決めて、アメリカ行きの飛行機に乗った。


ーーー


アメリカの訓練センターは、広大な敷地にあった。

太陽光がじりじりと僕を照りつけ、汗で額に髪の毛が張り付いた。


訓練用だろうか、航空機のタービンの音が聞こえて、風が吹くと灯油のような匂いが鼻についた。

見渡すと巨大な建物と、プラネタリウムよりも大きなドーム状の建物、打ち上げロケットのようなものが何台もあった。

あれは訓練用なのだろうか。それとも、本当に飛び立つのだろうか。



僕が目的の建物に着くと、すぐに講義室に通され、扉が閉じられた。

僕が最後だったらしい。


部屋の中には長机に椅子が四つあった。


一番奥には、年若い女性が座っていた。

その横にはお年を召した女性と男性が並んでいた。夫婦だろうか。

彼らはちらりと僕を見たら、またすぐに手元の資料に視線を戻していた。


僕が男性の横に座ると、程なくして前方の扉から、ムキムキのジムトレーナーのような人が陽気な笑顔を添えて現れた。

どうやら、この人が今回の教官であり、パイロットも務めるらしい。


教官の説明内容は事前案内に書いてあるのとほぼ同じだった。

ただ一つ違ったのは、今ここにいる四人でこれから共同生活を送る、ということだった。


聞いてないぞ。もう、本当に帰りたい。


老夫婦は目を見開いて驚いたような顔をしていたけど、男性はすぐに人懐っこい笑顔でこっちを見てきた。

「これからよろしくな」と、そう言っているような表情だった。

年若い女性は目をキラキラさせて説明を聞いていた。


勘弁してくれ……。

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