冬の賑わいで⑦
スコットさんたちは食料品の買い物は終わらせてくれたらしく、僕とハルカはショッピングセンターの入り口で合流した。
合流前には、ハルカも手を離してくれた。さすがに何か思うところはあったのだろう。
外に出るとすっかり暗くなっていた。
車に乗り、離れていくショッピングセンターはイルミネーションでますます煌めいていた。そのすぐ近くには月が輝いていた。まるでイルミネーションの一部のように寄り添って見えた。
ーーー
プレハブに戻ると、夫人はすぐに料理に取り掛かった。
その間に僕とハルカは寝室に行き、それぞれのベッドで買ってきた包装紙で不恰好にプレゼントを包み、ベッド脇奥に隠した。バレてないはずだ。特にハルカの分。
リビングのテーブルには、手際よく作られた色とりどりな料理たちが並べられていく。
少し不思議な色をしたケーキや、おかずなのか甘味なのかわからない料理もたくさん並んでいた。
と言うか多すぎて絶対に食べきれない。
たぶん明日も食べるんだろうな。
お祈りの時間。
今日は少し特別なのだろうか、薄暗くした部屋の中、キャンドルの光が淡く揺れている。
その中で、スコットさん夫妻が口にしていた。いつもよりも長い。僕はただ黙って手を組んでいた。
今この時、色んな家族が似たようなことをしているのだろうな、とぼんやりと考えていた。
お祈りが終わって、いつもよりも豪勢なご馳走を食べる。
いつも美味しいけれども、今日はより美味しく、温かく感じていた。
ーーー
食後、リビングではのんびりと皆が過ごしていた。
僕がソファの上でくつろいでいると、ハルカが横にやってきて、
「プレゼント、いつ渡すのが正解なの……?」
と小さな声で聞いてきた。それは僕も知りたい。
その様子に気づいたのか、スコットさん夫妻がおもむろに立ち上がった。
隅っこにいつの間にか置かれていたラッピングされた箱をふたつ、僕とハルカそれぞれに渡してきた。
「メリークリスマス」
それだけの、シンプルな言葉。
スコットさん夫妻はいつもの人懐っこいような、穏やかな笑みを浮かべていた。それがとても温かかった。
僕は小さく「ありがとうございます」と伝えて受け取った。
それから中身を開ける前に、僕とハルカは寝室に置いておいたプレゼントを取りに行った。
スコットさん夫妻にプレゼントを渡しながら「メリークリスマス」と言葉を添える。これで良いのだろうか。
プレゼントを受け取ってくれたスコットさん夫妻は、顔を見合わせて嬉しそうにしていた。
それから、ハルカは僕にもプレゼントを渡してきた。
「メリークリスマス、カナタ!」
ハルカからのプレゼントがあるのはもちろん分かりきってたから、受け取った僕はすぐにハルカへのプレゼントを贈り返した。
「ありがとう。メリークリスマス、ハルカ」
プレゼントを差し出したその瞬間、ハルカは一瞬、キョトンとした顔をしていた。
それからすぐに満面の笑顔をたたえ、
「カナタ、ちゃんと準備してくれてたんだね!?ありがとう、嬉しいよ!」
と、ストレートな言葉を並べてきた。なんだか恥ずかしくなってきた。こんなの、単なるイベントのはずなのに…。
それから、スコットさん夫妻は僕たちからのプレゼントのラッピングをビリビリと破き始めた。
本場ではラッピングは本当に破くんだな…と、少し感慨深かった。途中まで丁寧に剥がしていた僕とハルカも、それを真似てビリビリと一気に破いた。
スコットさん夫妻は、僕とハルカが選んだマグカップをそれぞれ手に取り、「こっちは私が使っていいかい?」「あら、じゃあ私はこっちを使おうかしら」と会話をしていた。喜んでくれたみたいで良かった。
スコットさん夫妻からの贈り物も、なんとマグカップだった。
デザインは、大人びたシンプルな白いもの。
ハルカも同じ種類のものをもらっており、色は黒だった。多分、僕のと対なのだろう。オシャレだなと思った。
だけど、今日だけでマグカップが四つも増えてしまった。果たしてキャビネットに収まるのだろうか?
そして、僕とハルカも、お互いのプレゼントを開けた。
ハルカがくれたのは、白いセーターだった。網目で立体的なデザインがされていた。
マグカップの時もそうだけど、なぜ暗い僕に白色を贈るのだろう?自分では白色とかあまり選ばないから、意外だった。
ハルカも、僕からの贈り物である濃い青のマフラーを、すぐに嬉しそうに首に巻いていた。
「これ、あったかいよ。ありがとう、カナタ!大切にするね!」
と言っていた。その姿と言葉が、また僕の胸の奥を優しく掴むような、そんな不思議な感覚を生んでいた。
「ね、カナタもセーター着てみてよ!」
その言葉を受けて、僕は服の上から着てみた。
途中から気づいたけど、どうみても大きい……。
手の先は完全に袖に隠れてしまう。
裾も、太ももの辺りまである。
ガバガバだ。
「……あれ?おかしいな…Lの割に大きすぎない…?カナタって、意外と小さいの?」
「……君よりは背が高いだろ。僕は日本人の平均身長ぐらいだよ。あと、こっちのLは大きいよ」
そう、ハルカはアメリカ人基準のLを選んでしまっていたのだ。
本当はSでも十分だろうに。
「う、そっか……ごめん、着れないよね」
ハルカは申し訳なさそうな顔をしていた。
……服なんて、大きい分には着れるんだから問題ないのに。
「服の上から着るから大丈夫。袖もまくればいい。それよりも温かいから、助かるよ。ありがとう」
そう言うと、ハルカはまた嬉しそうにして、自分の首に巻いたマフラーをギュッと握りしめていた。
贈り物なんてしたことはなかった。だけど、贈ったはずなのに、何かかけがえのないものを贈り返された気分だった。




