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冬の賑わいで⑥

「そろそろスコットさんたちのところに戻らないとね」


ハルカはそう言っていたけど、僕にはまだやらなければいけないことがあった。

そのために、ひとりで動きたかった。

さてどうしたものか。


「先に戻ってていいよ。僕はもう少し見ていきたいのがあるんだ」

「そうなの?じゃあ私も行く!」


やっぱりダメか。

このまま目当ての店に行けば、聡いハルカは、僕が誰に何を買おうとしているのか気づくだろう。


そう、僕はハルカにもプレゼントを買う必要があるのだ。

別に必須ではない。だけど買わないと後が面倒そうだから買うだけだ。だから仕方ないのだ。


「あ、そうだ!私、カナタの分もプレゼント買いたいなあ。少し付き合ってよ」


え?一緒に?


「え?一緒に?」


つい、心の声が表に出てしまった。


「ダメ?」

「ダメじゃないけど……こう言うのって、本人には知らせないものなんじゃ……」

「……あ。まあまあ、細かいことはいいじゃん」


たぶん、ハルカは何も考えないで言ったな。

それとも、本人に知られずに選ぼうと思った僕の考えが古いのだろうか……

まあ、こうなったら僕も同じ流れで選ぶことができる。


「いいよ。じゃあ行こうか。どこに行く?」

「えっとね、スコットさんが教えてくれたところに行ってみたいんだけど……」


ハルカが行きたがった店は、僕が立ち寄ろうと思っていたところと同じだった。

そこは、スコットさんが僕たちに

『恋人へのプレゼント選びなら、このお店を見るといい』

と教えてくれた店だ。


ちなみに別に恋人だからとか、意識したわけじゃない。そもそもそう言う関係じゃない。他にどこに行けばいいか分からないからだ。だから仕方ないのだ。


ーーー


店の雰囲気はなんだかキラキラしていて、オシャレな服やアクセサリー、鼻にまとわりつく甘い香水のような匂いで満ちていた。

店内は年若いカップルらしき人から、落ち着いた夫婦のような人たちで溢れていた。

僕が入れる類のお店じゃなかった。

帰りたい……。


「カナタ、どうしたの?」


僕らは、外から店を眺めていた。と言うか引っ張るハルカに対抗するかのように、僕が足を止めていた。

だけど、リードを引っ張って抵抗する犬のような気分になり、急に恥ずかしくなってきた。

観念するしかなかった。


「……いや、なんでもない。入ろう。」


ハルカはなんで平気なんだ……。


店に入り、カップルに混じって商品を見て回った。

贈り物に良さそうな品々が、思ったよりも手頃な値段で売られていた。なるほど、確かにここなら誰にでもおすすめ出来るわけだ。


ハルカはアクセサリーを色々と手に取り、

「カナタ、こういうのつけなさそうだよね……」

と呟いて、すぐに元の棚に戻していた。

せめて聞いてほしい。その時は堂々と「つけないよ」と答えるのに。


僕へのプレゼントを堂々と選ぶハルカをよそに、僕も店内に視線を巡らせた。

アクセサリーは…ハルカもつけない気がする。多分。

香水。詳しくない。好みもわからない。

ポーチや財布、小さなバッグ。この辺りは良さそうだ。使ってくれるかはわからないけど。

ベージュ色のポーチを手に取り、開けやすさや使い勝手をチェックしていた時だった。

椅子に座ったマネキンが視界に入った。モデルのように足を組んだポーズで、体のラインが強調された格好をしている。

ちなみに僕は服装を見たわけじゃない。

その首元に巻かれたマフラーが気になった。黄昏の空のような、濃い青。


ふと、ハルカを傷つけてしまった、あの日の夜を思い出した。思い出したくないのに。

あの時、プレハブの外で並んで宙を見上げていた時、白い息を吐いたハルカは少し寒そうにしていた。防寒着は必要最低限のものしか持ってなさそうだ。


これにしよう。


そう決めて、同じマフラーが並んだ棚に手を伸ばした瞬間、ハルカが「買ってくるね!見ちゃダメだよ」と明るく声をかけてきた。

何を買うのかは隠していた。どうやらそこは秘密らしい。

「行ってらっしゃい。終わったら店の外で合流しよう」

と僕が言うと、ハルカは頷いて、僕に見えないように何かを腕に抱えて会計へと向かっていた。


それを見送って、僕もすぐにマフラーを手に取り、ハルカとは別の会計に向かった。

ハルカに見られないで会計を済ませたかった。

レジの人が笑顔で「恋人への贈り物ですか?」と聞いてきたので、「はい」と答えた。

「いいえ」と答えると、梱包が適当になりそうだからだ。

だから仕方ないのだ。


会計を済ませ、手持ちのバッグに詰め込んだ。

僕のバッグは大きくないので、中はぎゅうぎゅうになってしまった。それから、店の外へと向かった。


ハルカはすでに店の外にいて、僕を探しているのかキョロキョロと見渡していた。

僕を見つけると、「あ、いた!」と駆け寄ってきた。

手には、僕へのプレゼントが入っているであろうショッピングバッグが増えていた。

その存在が、僕の胸の内を優しくくすぐった。


「そうだ、カナタが行きたかった店も行こうよ」

「いや、それはもういいんだ。そろそろ戻らないとスコットさん達を待たせるかもしれない」


僕がそう言うと、ハルカは「ふーん、それならいいけど」と言って、また僕の手を掴んだ。

僕が何かを買っていたの、バレてないのだろうか。

だけど、バレていてもいい。

今は、誰かのために準備したこの重みが心地良く感じた。

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