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冬の賑わいで④

それから僕とハルカは、良さそうなものが無いか探しながら歩いた。いろんな店先を覗きながら、ハルカは次々と候補を出してくれたけど、個性的なものが多かった。


「帽子とかどうかな。カウボーイハットみたいなの」

「悪くないけど、さすがに使い道が限られすぎだろう」

「うーん、じゃあカバンとか」

「……少しチョイスが重い気がする。好みもあるだろうし。もっと、シンプルなものでいいんじゃないかな?」

「あ、じゃあこのロウソクみたいなの?」


そう言ってハルカはショッピングバッグの中にある、サンタがしがみついた煙突型のロウソクを顔の前に掲げた。


「……僕にはそのセンスを測る基準を持ってないからわからない……」

「……可愛いと思うんだけどな、これ」


そんなことを話している間に、先ほどクリスマスソングの合唱が行われていた広場の近くに辿り着いた。

今度は有名なアーティストが訪れているらしく、通路を埋め尽くすほどの人だかりが出来ていた。


スピーカーから流れる大音量と歌声を背中に受け、人をかき分けて歩くが、なかなか先に進めなかった。

ふと後ろを見ると、ハルカの姿が見えなかった。

しまった、進むのに必死で気づかなかった。

いつはぐれてしまったんだろう。

進んだ道をまた戻っている途中で、人だかりの外側から、演奏の音量に紛れてかすかに「カナターーどこーー」と呼ぶ声が聞こえた。

声がする方に行くと、ハルカが通路のすみっこで背伸びしながら見渡していた。

僕を探してくれているのだろう。

ハルカの視界に僕が入った時、パッと笑顔になった。

それだけのことに、僕は一瞬目を奪われた。


「ごめん、先に行きすぎた」

「ううん、私もついていけなくてごめん……それにしてもすごい人だね……みんな背が高いから、壁みたいで……」


そうか、僕より小柄なハルカには、僕以上に進みにくいのか。どうしたものか。この先に行くのは諦めるか。

そんなことを考えていたら、急に僕の右手に柔らかい感触が伝わってきて、心臓が跳ねた気がした。


「カナタ、今度は置いていかないでよ」


また背中から顔にかけて、熱が駆け抜けていく。

ハルカが手を繋いできていた。

……仕方ない。これは仕方ない。


「……わかった、行こう」


言葉も少なく、僕たちはまた人混みの中に入っていった。先に立った僕が人をかき分けていく。握った右手には、僕の手よりも一回り小さなハルカの手がしっかりと握りかえしてくる感触があった。

ああ、僕の手汗、気持ち悪くないかな。

最後に手を洗ったのは何分前だっけ。

そんなことを考えながら、人だかりを抜けた。

なんだかあっという間に感じた。


「ふー、今度ははぐれなかったね。ありがとう」

「どういたしまして……で、手はいつ離すん……いたたた!」


僕はもう握る力は抜いているのに、ハルカは離さなかった…というかすごい力で握りしめてきた。

訓練で鍛えられたせいか?力が強い……。


「…カナタ、こういう時は男がエスコートしてくれるものなんじゃないのー?」

「……そんなルール、知らない」


そもそも僕には手を繋ぐガールフレンドなんていたことはない。恥ずかしいから言わないけど。


「この先も人は多いからさ、まだエスコートしてね?」


そう言ってハルカは余裕そうにケラケラと笑っていた。

だけど、その耳の先は真っ赤になっていることに僕は気付いていた。

……彼女なりに、気丈に振る舞っているのかもしれない。

この手汗も、僕だけのものじゃないのかもしれない。

だから、「わかったよ」とだけ返事をした。


僕たちはお互いの手を優しく握ったまま、また通路を歩いた。

半歩だけ、僕が先を歩いて。

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