冬の賑わいで①
クリスマスが近づいてきた休養日。
この日、僕たちは初めて4人で出かけた。目的はクリスマス料理の材料の買い出しだ。
ほとんど外に出ようとしない僕を、ハルカが「カナタも行こうよ!!たまには遠出しないとカビ生えるよ!?」と人のことをキノコみたいに言って強引に連れ出そうとしたから、ついていくことにした。
しかし失礼だな。ちゃんと毎日シャワー浴びてるのに。
スコットさんはレンタカーショップから、日本ではまず乗り回せない大きなピックアップトラックを借りてきてくれた。
自動操縦じゃなくて、自力で運転していた。
スコットさんは自分のことを「ちょっとした映画スターみたいじゃないか?」と冗談めかしていたけど、本当にサマになっていた。
後部座席は幅が広くて、大人が4人座れるぐらいあった。
ハルカはゆったりと座りながら、「カナタは運転免許あるの?運転できる?」と聞いてきたけど、運転免許があっても横並びで4人座れるような車を運転したくない。
僕が「あるけど早々にどこかにぶつけて警察に追われるからいやだ」と言うと、ハルカとスコットさん夫妻は笑っていた。
ーーー
訓練センターから1時間ぐらい走ると、巨大なショッピングセンターが見えてきた。
遠目からでも車がたくさんいるのがわかる。
入口からかなり離れたところに車を止めると、スコットさん夫妻は慣れた様子で腕を組んで歩いて行った。
それを見たハルカは
「私たちもああやって歩いたほうがいいのかな」
と言ってたけど、僕は聞こえないふりをした。
ハルカはくすくす笑っていた。
……次言ってきたら、本当に腕を組んでやろうかな。
ショッピングセンターはクリスマスシーズンということもあり、飾りつけがされていた。
外壁にはいたるところにイルミネーションが吊り下げられている。
入り口前の広場にはなぜかサンタの格好をしたシロクマが立ち上がっていて、その前をトナカイが走っているポーズを取っていた。もちろん作り物だ。
これ、クマに追われてないか?
入口に足を踏み入れた瞬間、一気に視界が開けた。
巨大なクリスマスツリーが広場に鎮座し、思わず見上げてしまった。
天井はさらに高く、広大な通路が遠くまで続いている。いったい何メートル先まであるんだろう。
そのとき、大きな風船を持った子供が僕の横を通り過ぎていった。
父親らしき人が後ろから駆け寄って高く抱き上げ、そのまま肩車をしていた。
子供も父親もずっと笑顔で、笑い声を弾ませていた。
幸せそうだな、と思った。
「カナタ、迷子になるよ」
ハルカの声ではっと我に返った。
いつの間にか、ハルカとスコットさん夫妻は結構前のほうを歩いていた。
僕は小走りで3人に追いついた。
まったく、本当に僕が一番年下みたいだな。
店内では、あちこちからは陽気なクリスマスソングと、子供たちのはしゃぎ声が響いていた。
それにしても、本当に広い。
食料品を買いに来ただけのはずなのに、その食料品フロアまでなかなかたどり着かなかった。
まあ、人がたくさんのいかにもな外国のショッピングセンターの風景はなかなか新鮮で悪くないけど。
さらに、スコットさん夫妻が道中でお店の紹介をしてくれるのも、退屈しない要因のひとつだった。
「服が欲しかったら、あのお店がおすすめだよ」
「恋人へのプレゼント選びなら、このお店を見るといい」
「休みたくなったらカフェもあるよ。ほら、これは日本にもあるんじゃないかな?」
そういって、緑の看板が目立つカフェを指さした。
確かに、日本でも有名な、あちこちにあるお店だった。
ハルカは看板に書かれた季節限定メニューに釘付けになっていたが、レジ前にずらりと並んだ人を見て、諦めたようだ。




