六話 気を遣われました
六話 気を遣われました
家に帰っても落ち着かなかった。
風呂は我がもの顔で使われるし、焼肉とは別に晩御飯を要求される始末。
「要さんは見てただけ」
「僕等は仕事したもんね」
スミス姉妹は要にマウントを取ってきた。
「昼の弁当、誰が作ったっけ?」
「それはそれ」
「これはこれさ」
「お兄ちゃん、作って」
能がスミス姉妹に加勢した。そして……。
「要、作って」
エスパーダも参戦。要は重くなっていた腰を上げる。
が、気合いは入らない。
要はそうめんを茹でる事にした。別にそうめんが手抜きとか、楽だとかは言ってない。決まった時間茹でるのも、水にさらして麺を締めるのも、どちらかといえば面倒くさい。だがめんつゆは好みで調節出来るので、人間用を別に作る手間が省けるのだ。
決して手抜きなどではない。
水を入れた鍋を火にかけると、のんきな会話が聞こえてくる。
「やっぱり要さんのご飯は最高だね」
「ここに住みたいくらいだよ」
「やめてマジで。ホントやめて。ただでさえ二人きりの時間減ってるんだから」
エスパーダのトーンからして、かなりの本気度が伺える。
「ちぇー」
「ケチ」
「残念だわ。私も気に入ってたのに」
マダムもスミス姉妹に同調した。
「母さん、邪魔は良くない。エスパーダの人生がかかってるんだ」
「そうね。晩御飯をいただいて帰りましょうか」
シールドの諫言もあり、マダムはそうめんだけで、我慢してくれた。しかしスミス姉妹は不満そうだ。
「僕等はあきらめない」
「焼肉まで居座るぞ」
怖い事を言われた。
「分かった。俺が飯の保障はしてやる」
「黒星かあ」
「なんか違うんだよね」
「だったら俺に食わせてくれ」
アックスが会話に割り込んでくる。
「私も」
サイズも加わる。
「じゃあ私も行かないと。サイズを守らねば」
エクスカリパーも加わる。
「じゃあ、私とシールドも」
ほぼみんなが参加する。
「じゃあ」
「僕等も」
「どうぞどうぞ」
この一連の流れで、二人の処遇が決まった。
「くそ」
「騙したな」
「引っかかるやつが悪い。それに俺の料理は罰ゲームじゃねえ」
スミス姉妹は沈黙した。
なんとか二人きりになる事は確定したようだ。
小人も気が使えるのである。