三話 若返って驚いてました
三話 若返って驚いてました
「シールド、シールドなの?」
マダムの問いかけに、シールドは目覚め、起き上がる。
「母さん、ここは? ん?」
シールドは喉を押さえた。そして手を見て、顔を触って、驚きの表情を浮かべた。
「これはいったい……」
「おじいちゃん!」
サイズはシールドに抱きついた。映像が服のアップだけになる。
「どういう事だ?」
サイズに尋ねるが、答えられないようだ。
「サイズの超能力が人間に移って、パワーアップしたのよ」
代わりにエスパーダが答えた。
「そうか」
シールドは納得したようだ。
「人間に譲渡なんてありえるの? だったら、さっさとやっていればシールドは幸せになれたかもしれないのに」
マダムは納得してないみたいだ。
「母さん、俺は幸せだよ。心配して来てくれたんだろう? みんな」
「おう」
「あたり前田の」
「クラッカーてね」
「そうだ。野暮な事言うな」
「私達友達でしょ」
「私は友達ではないが、銛だったら協力したはずだ」
「おじいちゃん、帰ろう。おばさんも」
サイズは離れて、マダムにも声を掛けた。
異を唱えたのは応該だった。
「許すと思うか?」
「博士の許可はいらないもん」
サイズは拳銃を抜いて、安全装置を外した。そして応該に向けた。
応該は手を庇って、表情を歪めた。
「お前はもう用済みだ。数少ない余生を自由に生きるが良い」
「どういう事?」
サイズの代わりにマダムが聞いた。
「どうもこうも、クローンはオリジナルより劣化が早い。もって後一年。だから子供を産ませようとしたら、部下が変なイデオロギーを主張して逃してしまった。しかも仲間を見つけて抵抗してくる始末。私はモーニングスターと共に生きたいだけだ。邪魔をするな!」
「おばさんはおじいちゃんがいたから博士と一緒にいただけだよ。ね、おばさん」
サイズはマダムに同意を求める。
「応該、私はあの時も今もコビットなのです」
やんわりとした拒絶。でも応該は引き下がらなかった。
「シールドは私達の子だ。コビットなんて介在出来ない絆なんだ」
「俺はシールド・コビット。メイス・コビットとモーニングスター・コビットの子だ。お前ではない」
「能さんと要さんもあなたの子でしょう?」
「モーニングスターとの子ではない」
場が静まり返る。応該の発言に引いているのだ。
「何言ってるかな。この色ボケが」
能はいつもより低い声で言った。
「お前だってそこの男と恋愛しているだろ。だったら分かるはずだ。全てを捨ててでも成就させたい恋があると」
「分かんない。私は就も、お母さんも、お兄ちゃんも、お義姉様も、サイズも、みんなも大好き。捨てようなんて考えた事もない。お父さんの考え理解出来ない」
「俺も能と同じ意見だ。父さんは間違ってる」
「どうして理解出来ない。俺の子だろう!」
イラ立ちをぶつけるようにサイズに手を伸ばした。要の声がサイズのスマホから出ていたせいかもしれない。
サイズは近付いて来た手から距離を取り、銃を撃った。応該の手から血が流れ出す。
「おのれ、実験動物の分際で!」
言ってはならない事を言った。軽蔑の視線が集まる中、シールドが動いた。
「応該!」
右手でベッドをつかんで、勢い良く離して跳躍した。
飛び上がり、応該の頬の高さに達すると殴りかかった。
高さは同等だったが距離があったため、応該の頬に軽く触れた程度で失速してしまう。
「ふっ、惜しかったな」
シールドは嘲笑う応該に悔しそうな顔を見せて、落ちていく。途中でハトに乗ったアックスに空中でキャッチされていた。
「すまない」
「気にするな。お」
アックスが見上げた先では宿守応該が光り始めるのだった。