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御殿場の戦い

僕の叫びと共に止まった武士は静かに口を開きこう言った。

「やーやー我こそは武蔵国、北条時頼が父、北条時宗なり!」

(北条時宗?北条...侍で北条?時頼が父てことは鎌倉時代!?!?)

(こういう時ってどうするんだっけ...所属言って名前言うんだっけ...あーもーわからん!ノリで言っちゃえ!)

「あっ...やーやー我こそは!日ノ本の武士、加瀬誠なり!」

(あ...あれこれって戦の時に言うやつだから敵意あるって伝わったのかな...)

「お主、武士とはどういうことじゃ。なぜそのような身なりなのだ。さては蒙古か!」


「止まりなされ!我らは遥か先の世から来た者だ。某の他に10万ほどいる!」

「嘘を吐くではない。この世で10万などという大軍を日ノ本で集められるわけなかろう。」


「誠だ!攻撃を加えないでくれ!」

「...蒙古の輩だ!皆の衆かかれ!」


「おおおおおおお!!!」


後ろに待機していた自走砲のハッチを島が開けた。

「加瀬一尉!逃げるぞ!」

「島!待ってくれ!」

ヒュンヒュンと弓が飛ぶ中命からがら自走砲に戻り...痛たっ!!!!!!!

「おい!侍がいたぞ!撤退開始しろ!」

「は?なに言ってるんですか...ってマジや!」

「え!?あっ本当だ!」

「島!CPに連絡...痛すぎる...」

「了解。」

(矢が僕の右腕に刺さってる...)


「CP、こちらFS2、敵襲を受けている。敵軍はおよそ300。甲冑を身に纏っている。こちら側の負傷者1名。撤退を開始する。送れ。」

『FS2、CP、ヘリ支援は必要か?送れ。』

「CP、FS2、ヘリ支援求む。送れ。」

『FS2、CP、了解。』


「加瀬一尉!ヘリ部隊が来るそうです!」

「ちょっと気持ち悪い。座らせてくれ。」

「よっこらしょ...ちょっと誰か消毒と止血してk...」

「加瀬一尉!加瀬一尉!」

バタンという音と共に僕は意識を失った。

(そうだった。僕は...なんて馬鹿なんだ。アイヌと交流のある鎌倉時代で矢に毒が塗られてない訳ないよな。)*1

▲駿河国御殿場上空

「CP、こちらアタッカー1、ホールディングスエリアに現着、観測を開始する。」

『アタッカー1、CP、了解。』


「おい...報告より多いぞ。後方に2000人ほどか?」

「CP、アタッカー1、敵軍後方に2000ほどを確認。送れ。」


▲同国御殿場地上(北条時宗軍)

「おい!なんだあれは!空を飛んでいるぞ!」

ヘリという鎌倉時代には無いもの...いや、空を飛ぶものというのは鳥以外いない。

「殿!ここは一旦引かれては?」

「いや、前進だ!早馬を飛ばして援軍を呼ぼう。」

「はっ」

「弓隊!前に出ろ!」

「よーい!放て!」

御殿場の上空へ矢が大量に放たれた。しかし、ヘリは上空500mを飛行している為一向に届かない。


▲中央司令部

ところ変わって陸上自衛隊中央司令部。

バン!という大きな音と共に扉を開けて入ってくる宮本大将。今は自衛隊の暫定総司令官だ。

「敵軍の規模はどうなっている。」

「宮本大将、敵およそ2000とのことです。」

「即座に司令部付近に陣地を展開しろ。交渉の余地がなければ攻撃を想定しろ。」

「宮本大将、恐れながら報告によると甲冑を着けているとのことです。つまりタイムスリップだとすると歴史の改変につながるのでは?」

「馬場!だとしても我々に1名負傷者が出ているのだ!市ヶ谷に連絡...そうだ。市ヶ谷と繋がらないんだったな。」

宮本の顔がものすごく難しい顔へ変化していく。

「...宮本大将、しかし!」

「緊急連絡です!敵軍がアタッカー1に対し、弓で攻撃を開始しました!矢は届いてないようですが危険です!」

宮本は数秒の沈黙の後口をゆっくり開いた。

「アタッカー1に伝達。直ちに帰投し兵装を整え再出撃だ。」

「宮本大将...了解しました。おい、帰投命令を出せ。」


▲同国御殿場上空

『アタッカー1、こちらCP、直ちに帰投せよ。OH-01以外帰投後武装を整え再出撃だ。OH-01は高度を700へ上昇し、待機維持せよ。送れ。』

「アタッカー1、帰投する。OH-01は指示通り上昇後待機維持送れ。」


▲中央司令部陣地

サイレンと共に放送が鳴り響く

『敵が方位030から接近中!』

「片岡!10式の準備は出来たか?」

「はい。出来ました。中島曹長。」

「では敵の情報についてだ。敵の数は低く見積もって2000で装備は弓と刀だ!砲撃しても最初は狼狽えるが途中から鬼のように突撃してくるだろう。」

「質問ある奴いるか?」

「はい。敵に火炎瓶のようなものはありますか?」

「今の所ないとの事だ。」

「了解しました。」


▲同国御殿場上空

「CP、アタッカー1、ホールディングスエリアに現着。武器の使用を求む。送れ。」


▲中央司令部

「対戦ヘリ部隊が機関銃の使用を求めています。」

「ダメだ。交渉してからだ。」

「宮本大将。敵は依然こちらに侵攻中です。交渉しようとした部隊も矢によって攻撃されたとの事です。」

「...」

「ただいまより武器の制限使用を許可する。」

「はい。」

「まずは威嚇射撃だ!」


▲同国御殿場上空

『アタッカー1、CP、威嚇射撃を開始。繰り返す威嚇射撃を開始。送れ。』

「CP、アタッカー1、威嚇射撃を開始する。目標、敵軍の手前50m。発射用意。発射!」

御殿場に30mm機関砲のパパパパパという銃声が鳴り響いた。


▲同国御殿場地上

「なんじゃ!あの空飛ぶ何かが撃ってきているのか!」

「殿!やはり一度引くべきでしょう。」

「っ...!!!!」

「あっ!」


▲同国御殿場上空

「CP、アタッカー1、敵軍以前侵攻中です。攻撃許可を求む。」

『アタッカー1、CP、敵の大将周辺以外のみ攻撃許可する。』

「CP、アタッカー1、射撃する。目標、敵軍中央から後方。発射用意。発射!」


▲同国御殿場地上

「あの空飛ぶものが攻撃しているのか...引けー!引けー!」

後方の兵が続々となぎ倒されていく。時宗はその時本当に敵わないと悟った。

(これは……“人”の力ではない)

時宗は、黒き飛翔体が地を撃ち、音もなく兵を吹き飛ばす様を見ながら、直感していた。

(奴らは我らとは異なる理で動いておる)

そして何よりも――奴らはこちらを「一掃」していない。狙いすました攻撃はあれど、大将首は無傷だ。

(……殺す気がない?)

「殿、我ら……どうなさるのですか……」

「引け」

「はっ?」

「よいか、これは“命令”だ。奴らは我らに“話す意志”があることを見せておる。ならば、こちらもそれに応じるが道理だ」

——退くのではない。“場”を変える。時宗はそう決めていた。

「使いを出せ。あの飛ぶ武に“話す者”がいれば、我はそれを待つ」

静かながらも、冷ややかな知略がその言葉には込められていた。


▲同国御殿場上空

『アタッカー1、CP、攻撃終了後帰投せよ。観測ヘリは敵大将追跡しろ。送れ。』

「CP、アタッカー1、了解、敵部隊は撤退してますが、騎馬武者が3人こちらに来ています。送れ。」

『アタッカー1、CP、攻撃するな。送れ。』


▲野戦病院

「島さん、落ち着いて聞いてください。加瀬一尉は毒で不整脈が続いており出血は止まりましたが、このままでは昏睡状態になるかもしれません。」

「加瀬先輩起きてください!」

「私も最善を尽くします。」

島は涙を拭いながら言った。

「先生...加瀬先輩を助けてください...」


▲ 骼悟?画凾莉

——闇だ。

見渡す限り、黒い霧が立ち込める世界。音もなく、匂いも風もない。ただ、遠くに無数の影が立っているのが見えた。

それは鎧を纏った武士たち。ボロボロの防具に、空洞のような目をした兵たち。矢に射たれ、槍に貫かれ、倒れていく姿がスローモーションのように流れる。

「貴殿は、何者だ」

声が響く。

いつの間にか目の前にいたのは、白髪まじりの僧兵のような男。

右手には古びた数珠、左手には錆びた刀。

「歴史を守るためか。それとも、歴史を壊すためか、はたまた日ノ本を蒙古の軍勢から守るのか。」

加瀬は答えられない。声が出ない。

(僕は…何のためにここに来た?)

次の瞬間、黒い波が彼を呑み込んだ。

注釈

*1 アイヌは狩猟に附子というトリカブトの毒を矢に塗っていた

なお、大和民族ではあまり使用されなかったが、この世界では抵抗は若干あるものの武器としては使用されていたこととする。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AF%92%E7%9F%A2#%E6%97%A5%E6%9C%AC

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