EPISODE24、感動の再会?
休息を取ろうとしたティルシア達であったが、休息は直ぐにお預けとなった。
「素直に魔生物共を片付けた事に感謝はしている。だが、てめーらは何かとぶっ壊さねーと気がすまねぇのか?」
ティルシア達の元に現れたのは、ベルドが率いる騎士達であった。
魔生物殲滅。
謎の冒険者3人の救援。
辺り一帯が更地。
この言葉を聞いたベルドは、血管をブチ切れさせながらも医務室から体を起こして出張って来たのだった。
「今度は何の用だ?」
エスティが呆れた様子で尋ねると、ベルドが眉間に皺を寄せた表情のまま書状を取り出し読み上げようとしたが割愛する。
「国王様が直々に褒美だとよ。てめーらとお会いになるそうだ」
冒険者にとって国王から手渡される褒美は名誉な事なのだがエスティは快諾しない。
ルゼル国王が褒美というのは気掛かりだ。
冒険者に謁見どころか敵視している。
各地の冒険者から評判も悪い。
「断ったら?」
「俺ら全騎士団が敵になると思え。ここから生かして返さねぇぞ」
国王の申し出を無下にする行為は、顔に泥を塗るのと同じ。
反逆罪で、何処までも追って来るだろう。
魔生物を退けた実力に、更地にするほどの強大な力。
察する理由としては、戦力として懐に納めるためだろうか。
当然、相手が実力を行使するなら、ティルシアは暴れる。
城が壊れない事を祈るばかりだ。
こんな状況でもティルシアは、いびきをかいて無防備に寝ている。
魔力を使い果たしているのもあるだろうが、仲間を信頼しているからこそ、安心して眠る事が出来ているのだろう。
「仕方ないか」
今回ばかりは従うしかない。
「おい、連れてけ」
ベルドの合図で騎士がティルシアの元へ向かって来ると、無理矢理に体を起こし、魔法封じの手枷を両手に嵌める。
すると、デイルが剣に手を掛けた。
「ただ国王に会うだけだってのに、穏やかじゃねぇな?」
「どうなるか、言ったはずだぜ?」
デイルとベルドが睨み合いになる。
2人はやる気満々で、一触即発状態だ。
確実にここで揉め事を起こせば、ベルドの言った通り、ルゼル王国が敵対する。
「馬鹿者」
エスティがデイルの頭を叩く。
「何すんだ!」
「事を荒立てるな。騎士団とて建前上、警戒するものだ」
「ちっ」
「それに守ったとて、力を示し過ぎれば脅威になるからな」
エスティの言葉にルゼルが俯く。
思い当たる節がある。
ベルドは、全員に魔法封じの枷を嵌めてルゼル王国へと連行した。
馬車に揺られながら、デイルは愚痴を零す。
「これじゃ罪人だぜ。黒き騎士の件も魔生物だってティー達が解決したってのによ」
「褒美と称して処刑されたりしてな」
エスティの不穏な発言にデイルが思い出したかのように反応する。
「そういや、像を破壊したり兵士達を瀕死にしたりしたんだよな!?」
「それもあるが、先日の件もある」
「そうだった…」
デイルの不安が募る。
どこから見てもルゼル王国に敵対行動しかしていない。
到着すると城壁に囲われた街並みは、威厳ある騎士の巨像がそびえ立っていた。
その姿は鎧を纏い、剣を高く掲げた勇ましい騎士を象徴している。
巨像は、戦死した騎士の名を刻んでおり、街の人々にとって守護者のような存在だ。
周囲では市民たちが行き交い、商人達が活気あふれる声を張り上げている様子も見える。
街の雰囲気は活気に満ち、戦争の影響が薄らいできたことを感じさせる。
すぐに玉座の間へと通され、重々しい甲冑を身に纏い威圧感を放つ騎士達に、ルゼル王国を支える大臣達が色眼鏡でティルシア達を見下ろす。
良い噂よりも悪名を轟かせている探究者ギルド。
当然と言える。
ましてや、ティルシアとエスティはルゼル王国で問題を起こしたばかりで、デイルやライもベルド達を瀕死にした。
問題しかない。
ベルドが跪くと、ルゼル王国国王が姿を見せる。
丸々とした顔立ちに脂汗が光り、国王としての威厳を感じさせない程の雰囲気が漂い、服は贅肉ではち切れそうだ。
頭に乗せられている王冠さえ玩具に見える。
デイルとルゼルは騎士だった事もあり、騎士としての礼儀を欠かさず跪き、国王が言葉を発するまで顔を上げない。
ライは2人の様子を見て訳が分からないまま、土下座している。
ティルシアは、依然として床に突っ伏して寝ており、エスティは頭すら下げない。
「おい、馬鹿!国王様の御前だぞ」
ベルドが小声で訴えるが、エスティは聞く耳を持たず冷ややかな視線を向けていた。
「生憎、肥え太った愚かな王に下げる頭は持ち合わせていないのでな」
エスティが嘲笑すると、怒りを露わにした騎士達が剣に手を掛ける。
国王の権威を冒涜する行為は、この場で処刑されてもおかしくはない。
「貴様!無礼だぞっ!」
「国王様に向かって…」
大臣達も声を荒らげる。
「はい、皆さんお静かに」
手を叩きながら現れた男がこの場を収める。
冷静な声色で周囲の緊張を和らげた。
人よりも耳先が長い、茶髪の男。
【エルフ】と言われる種族だ。
幼少期から秘めている魔力は強大で、魔法の扱いだけなら精鋭騎士と同等の実力がある。
寿命は2000年ほど生きるとされていて、数ある歴史の目撃者でもある。
漂わせる雰囲気は、国王よりも遥かに威厳があった。
「冒険者風情が、随分な口を叩く」
エルフは、ティルシア達を見下しながら鼻を摘む仕草を見せた。
「ここは臭うな。おっと、冒険者の中でも無礼な輩がいるせいか」
分かりやすいくらいの煽り方だ。
軽蔑しながら玉座から一歩進み、ティルシア達を腫れ物でも見るかのように眺める。
「我らの崇拝するお方の像を破壊した女…。本当に憎たらしい」
エルフが近付き、寝ているティルシアの頭を踏みつけようとするが、一瞬にして空気が凍りつき、視線が床に転がるエルフへと注目する。
「いくら王族でも…やっていい事と悪い事があるだろう!」
ルゼルの手によって、エルフは殴り飛ばされていたのだ。
ルゼルだからこの程度で済んだが、もし踏み付けていたのならデイル、エスティ、ライが黙ってはいない。
下手をすれば死んでいる。
その証拠にデイルの額に青筋が浮き出ていた。
キレる寸前だ。
「貴様ぁ…!誰に手を上げたと思っている、私を誰だと思っている…私は…」
完全に頭に血が上っているエルフは、自身に何が起きたか分からず戸惑いを見せていた。
国王を前にして冒険者は従わざるを得ない。
殴り飛ばされるなど想定していなかった。
怒りのあまり声を荒らげるはずが掠れていく。
「サラン…だぞ」
サランと名乗ったエルフは、眼前に広がる光景に立ち尽くしていた。
目の前にいるのは赤髪の女、ルゼルだ。
「サラン?」
ルゼルが眉間に皺を寄せる。
「その赤髪…ま、まさか…ルゼル様…?」
サランは、あまりの衝撃に立つことを忘れるほどにふらついていた。
「あの…サランか!?」
ルゼルもまた記憶の欠片が繋がり、また一つ思い出したようだ。
サランが幼少期にルゼルから剣や魔法を習っていた事があり、心の底から尊敬していた。
ルゼルが戦死したという事を目の当たりにし、部屋に閉じ籠り泣いていた時期もあった。
「大きくなったな…!」
ルゼルがサランに駆け寄り、昔のように頭を撫でる。
サランは200年振りの再会に涙を浮かべていた。
「はい…!」




