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探求者、世界を救う!?  作者: 真宵 にちよ
第二章~ルゼル王国動乱~
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EPISODE21、人魔解放戦線

 ルゼルは、ティルシアから使っていない剣を借りて構える。


「殺してやるぜぇっ!!」


 男2人が距離を詰めて来る。


「火玉《ファイア・ボール》!」


 ティルシアは冷静に魔法を発動させようとするが、火の粉が散るだけで発動出来なかった。


魔法封じ(マジック・シール)だ!馬鹿めッ!!」


 転移魔法が出来なかったのも、恐らくこの2人が展開したであろう魔法封じが原因だ。

 範囲は村を包んでいる。


 男が懐に入り込み斬り上げた。


 ティルシアの魔力感知は、男の魔力の流れを捉えている。


 禍々しい魔力を帯びた剣。


 黒き騎士と同様、正常な魔力の流れが阻害されている。


 ティルシアは、咄嗟に左腕に魔力を纏わせて防ぐが、少し焦っていた。

 黒き騎士の放つ攻撃は擦り傷さえ致命傷になりかねない。

 それは身を持って実証済みだ。


 痛みが走ると受けた攻撃を分析すると、魔力を通じて分析結果が頭の中に流れ込んで来る。

 魔力操作の高等技術だ。

 魔力に関する情報は、ティルシアの頭の中で即座に処理される。


 しかし、実際に受けた魔力に触れなければ発動できないため使い勝手は戦闘において不向きだ。


『肉体への損傷軽微、魔力防御損傷、周囲に魔法を阻害する魔術を感知、魔力操作による攻撃防御は可、黒い瘴気を検出』


 黒い瘴気。


 黒き騎士が生成した細胞と魔力の流れが酷似している。

 男が纏っている魔力は、同様に魔力の流れが正常ではない。

 その為、魔力防御が傷付き、肉体まで刃が届いたのだ。


「刻んでやるぜッ!!」


 続け様に短剣を振り回して来るが、ティルシアは短剣を避け、錆びた剣に魔力を纏わせ腹を全力で殴る。


 骨の砕ける感触が手に伝わって来た。


 明らかに致命傷である。


 吹っ飛ばされた男は、すぐに立ち上がり、下卑た笑みを浮かべた。


「残念だったなぁ?そんなじゃ俺は殺せないぜぇ」


 黒い瘴気を取り込んでいるせいか、再生力が異常な速さだ。

 交戦していた騎士が倒されたとしても納得は出来る実力を持っている。


「嬲り殺しだぁッ!衝撃波《インパクト・ウェーブ》ッ!」


 魔法封じを発動し、自身だけは魔法が使える。

 それが男の絶対的な自信である。


 空気を裂く衝撃波。


 男はまず、ティルシアの身体の骨を砕き、自由を奪ってから尊厳を踏みにじるつもりだ。

 今までは、それが通用していたかもしれない。


 男は、知るべきだった。


 自身が誰を相手にしているのかを。


 ティルシアは、軽く左手で衝撃波《インパクト・ウェーブ》を振り払うと爆散する。


 男は目を見開きながら恐怖を抱き後ずさった。


「な、何をしやがった…?」


 男はティルシアの異常さに気付いてしまった。


「魔力防御さえ、簡単に砕く魔法だぞ!?」


 通常であれば、魔力防御ごと骨を粉砕しているところだ。

 しかし、ティルシアが一瞬だけ展開した魔力防御は、魔法だけではどうにもならないほど強固なものであった。


「まぁ…。魔法封じ(マジック・シール)っていっても魔術は使えるだろうし、魔力操作が可能なら大した弱体化にならないよね〜」


 魔法封じ(マジック・シール)と呼ばれる魔術は魔法を得意とする者に対して絶大な効果を発揮する。

 だが、魔力操作を研鑽している者にとっては影響が殆どない。


 痛いところを突かれたのか、男は激高し、喚き散らした。


「それがどうした!あ"!?不死といってもいい俺の肉体には傷一つ付けられねぇぞ!?」


 ティルシアは激高する男へ、ゆっくりと右手を向けていた。


「やりたかった事ってこういう事?」


 ティルシアが魔力を右手に纏わせ放出する。

 放ったのは、練り上げた魔力の塊。

 男は差し迫る魔力に気圧され、魔力防御を前面に集中させた。


 魔力の塊は、男の魔力防御をあっさりと打ち破ってみせる。

 男がやりたかった骨を砕く行為を身を持って知る事となった。

 四肢の骨が砕け、地面に顔を擦り付ける。


「この…俺に…ッ!!」


 黒い瘴気のお陰か、砕けた骨を瞬時に再生させ、体勢を整えるべく立ち上がった。

 再生したとしても、男のプライドは傷付けられ、殺意を剥き出しにする。


「あっ、少し気になったんだけどさ〜。本当に魔力攻撃って効果ないのかな?弱点って聖魔法だけ?」

「効くわけねぇだろうが!」


 ティルシアがニコッと笑う。


「じゃあ、ちょっと本気でやっちゃうぞ〜」

「本気でやるのは、俺も同じだッ!?」


 目で捉えられない速さに男は、思考を停止させてしまっていた。

 ティルシアの異常さに気付きながらも魔力感知を使うまでもない。

 それは間違いだと気付くには遅過ぎた。

 目で追える頃には振り下ろされた錆びた剣が眼前に差し迫る。


 男の頭がぐしゃっと潰れ、衝撃音と共に上半身が地面の染みとなる。

 息が絶えてもおかしくないのだが、直ぐに再生し立ち上がった。


「だから無駄だって言っ!?」


 容赦なく、錆びた剣を振り下ろすと再び地面の染みになった。

 そして、また再生する。


「てめぇ…殺してやッ!?」


 ティルシアが再生する度、地面の染みへと変えていく。

 再生を繰り返しても逃げる暇さえ、反撃の隙さえも与えない。

 数回ほど叩き潰し続けていると、再生が次第に遅くなっていた。


「も、もう、止めて下さいッ!?」


 その一言でティルシアがと動きを止めた。


「俺が…いや…僕が悪かったです!助けて下さい!!」


 命乞いだった。

 両膝を地面に着け、頭を擦り付けている。

 すると、ティルシアがニコッと不自然なくらいの笑顔を向ける。


「い〜や〜だ〜」


 そして、全力で錆びた剣を振り下ろす。

 今度は全身が地面の染みになるほどだ。


「あ、悪魔か!?」


 瞬時にとはいかないが、肉塊と化しても命を絶つまでには至らない。


「少しは助けを乞う人の気持ちが分かった?」


 常に笑顔で明るいティルシアの目が珍しく据わっていた。

 男は恐怖のあまり小刻みに震え出している。

 肉体の損傷を受けず、一方的に相手を屠って来た経験しかないのだ。


「もう許さないけどね」


 ティルシアは、笑顔を崩さずに冷淡な声で錆びた剣をゆっくりと振り被る。

 男の表情は、恐怖を加速させ過呼吸を引き起こしていた。


「待て!待って下さい!殺さないで下さい!」


 男の懇願する声は虚しく響き渡った。

 ティルシアが魔力を纏わせ、男の頭目掛けて振り下ろし寸前で止めた。


 男は白目を剥き、差し迫る恐怖に耐え切れずそのまま失神してしまった。


「ルゼルの方は…」


 ティルシアは、ルゼルに視線を移すと、苦戦しているようだった。


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