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探求者、世界を救う!?  作者: 真宵 にちよ
第二章~ルゼル王国動乱~
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EPISODE19、新しい道

「…で、何だこの格好は?」


 村で静かに暮らさないか。


 という提案を承諾したルゼルだったが、ムスッとした表情を浮かべる。


 明らかに不服そうだ。


「おおーっ!似合ってる似合ってる!」


 ティルシアは、拍手しながらルゼルの周りをぐるぐると回る。


 長袖のワイシャツに茶色のカーディガン。

 首元には、蝶蝶結びの茶色のリボン。

 茶色と黒色のチェック柄のロングスカート。

 そして、革で出来たブーツに

 左眼を覆うようにした眼帯。


 眼帯を除けばどこからどう見ても村娘だ。


 しかし、200年前に名を馳せた猛者。

 ましてや建国の礎ともなった存在だ。

 風格は勿論のこと、向ける瞳は死線を潜り抜けて来た強者そのもの。


 近付いただけで命を落としかねないと錯覚させるほどだ。


「落ち着かない服装だな。鎧はないのか?」


 ルゼルは、あまりこういう服装を好まない。


 お洒落とは程遠い生活をして来たせいもあり、長い間、鎧を纏っていた為、落ち着かないのだ。


「せっかく、静かに暮らすんだもん。そ・れ・に、鎧着てたら村人もびっくりするでしょ?」

「ぐぬ…」


 眉毛をヒクつかせる。


「はい!後は笑顔の練習だよ〜!はい、にこーっ」


 ティルシアが満面の笑みを浮かべて見せるが、ルゼルの表情は、硬く引き攣っている。


「何か企んでそうな笑顔だな」


 と、ルゼルは辛辣なコメントを残す。


「ほら、皆も笑って笑って!」


 ティルシアが負けじと他のメンバーも笑わせる。


「に、にこーっ!」


 ライも満面の笑みを浮かべるが、口元がだらしなく歪む。


「デレているのか…?」


 ライは臆病な性格だったせいか、笑顔が簡単に崩れてしまう。


「可愛いでしょ〜?はい、次エスティ!」

「私もやるのか?」

「当然でしょ!?」


 エスティは、フッと口角を上げる。


「笑っているのか…?それは」


 ルゼルから見ても、エスティの笑顔は嘲笑にしか見えない。


「はい!最後、デイル!」

「俺もか!?」


 ティルシアが激しく頷く。


「に、にこー?」


 デイルの表情が強ばる。

 優しく笑ったつもりが、殺意に満ち溢れた笑顔を作り出した。

 笑顔とは程遠い。


「下手くそな笑顔だな」


 ルゼルが鼻で笑う。


「お前もだろうがッ!」


 どっちもどっちである。


「笑顔はひとまずいい。私の武器はあるか?」

「はい?」

「村で暮らすんだ。最低限の武器が欲しい」


 そう言ってルゼルは腕を捲り、ロングスカート裾を上げた。


「何しに行くの!?」

「まず、村周辺の魔物共を駆逐する。それから村の守りも固めなければ…」


 血の気が多すぎる。

 血塗れで魔物を片付けて村へ行っても、村人が逃げ出す未来が目に見える。


「普通に…!普通にしようよ!戦いなんて忘れて静かに暮らすんでしょ?」


 本当に静かに暮らす気があるのかと思ってしまうが、ルゼルなりに役に立とうと思考錯誤しているのだ。


「戦いから離れるのは難しいな…」


 ティルシア達はルゼルを連れ、ルゼル王国よりも南方に位置するバリナという村を訪れた。

 バリナ村は国に属しておらず、魔物も生息していない為、自給自足で平穏な日々を送っている。

 隠居するには、適した場所だ。


「村長、世話を掛ける」


 エスティが腰の曲がった老人、村長に挨拶を済ませていた。


「構わんよ、お前さんの頼みじゃ。断る訳にはいかんしな」


 バリナ村で謎の疫病が蔓延した時、偶然にもエスティが訪れ村人を治療し救った事がある。

 村長はエスティの頼みを快く引き受けてくれた。


「紹介しよう。彼女はルゼ、記憶も曖昧で何処か平穏な場所を提供したい」


 という設定をエスティが説明する。

 記憶が曖昧なのは事実ではあるのだが、ルゼルは気が引ける。


「ほほう。お前さん、記憶が…」


 村長が心配そうに、ルゼルを見つめる。


「ここに置かせてもらう以上、最低限の事はする。必要な時は頼ってくれ」


 ルゼルが据わった目を向ける。

 村娘がするような目付きではない。

 村長は少し考えた後、ある提案をした。


「早速、子供達の相手をしてもらおうかの?」

「鍛錬なら力になれるぞ」


 あちゃーとティルシアが顔を抑える。

 ルゼルにとって、子供達の相手は騎士になるべく鍛錬するという意味だと思っているのだ。

 すると、数人の少年少女達がルゼルの元へ集まって来る。


「すっげー!赤髪だぁ!」

「お姉ちゃん、遊んで!!」

「絵本読んでー!」


 ルゼルの両手を引っ張る。


「ま、待て。鍛錬じゃないのか!?」


 ルゼルは、あっという間に少年少女に連れられ、何処かへ行ってしまった。


「若者は出稼ぎに行っとるし、老人ばかりで子供達の相手をする者がいないからのう」


 村長にとってもエスティの申し出は、有難いものだった。


 ティルシア達は、バリナ村に暫く滞在する事になり、子供達の相手を任された。

 ライやデイルが子供達と遊んでいる中、ティルシアは空き家を借りて歴史書を読み漁っていた。


「ふむふむ…。天使のように舞い降り、魔の手から国を救った英雄…ね」


 仲間になった時に備え、ルゼルに関する歴史書を読みながらエスティが入れてくれた紅茶を啜る。

 富豪が愛用しているという高級紅茶を淹れてくれたのだが、ティルシアは飲めればいい性格なので全く気にしていない。


「魔王軍とやり合ってたなら、ルゼルもかなり強かったんだね?」


 歩く歴史書こと、エスティに尋ねる。


「そうだな、そこら辺の契約騎士よりは強い」


 エスティがはっきりと強いというのだから、相当強い。

 あまり人を認める事がなく、むしろ辛辣に相手を評価するため、ルゼルの実力は誇張されたものではないと言える。


「なるほどねー。おっ、案外、村に馴染めてる感じじゃん?」


 ティルシアが窓から、ルゼルの様子を伺うと、子供達と打ち解けているようだった。

 ルゼルは、子供達と一緒に摘んで来た花で冠を作っていた。

 子供達は、慣れた手つきで簡単に作るが、上手くいかないようだ。


「こうか?」


 ブチっ。


 力加減が難しいせいか、花の茎ごとちぎってしまった。

 子供達のように冠が作れずに悪戦苦闘だ。


「お姉ちゃん、こうやるんだよ?」

「こ、こうか?」


 ルゼルは少女に言われた通りに、丁寧にゆっくりと花を編んでいく。


「出来た…」


 不格好ではあるが、白色の花で編まれた冠は、輝いて見える。

 子供達も喜んでいた。


「っ…」


 ズキン。


 ルゼルを頭痛が襲う。


「お姉ちゃん!?大丈夫?」

「あ、ああ。大丈夫だ」


 まだまだ記憶が曖昧だった。

 似たような風景と重ねてしまっていた。

 ルゼル達の様子を眺めていたティルシアは、村へ急接近して来る魔力を捉えた。


「エスティ!」

「…分かっている」

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